哪吒(ナタ) 風火二輪で空を飛ぶ少年神 中国アニメのパワー
渓斎英泉 続膝栗毛九編上 穴沢峠旅人奇難図十返舎一九の「東海道中膝栗毛」は江戸時代のベストセラーですが、その続編の「続膝栗毛」で英泉が口絵を描いていたので載せてみました。弥次喜多道中の通称で親しまれているこの作品は、主人公の弥次郎兵衛と喜多八の旅先での失敗談や騒動を、大衆好みの笑いをユーモラスに書いています。「穴沢峠旅人奇難図」と題されていて、信州の善光寺を目指す道中に天狗に出くわしたエピソードを描いているようです。(本は持っているのですが読んでいないので不明ですが)「膝栗毛」とは、自分の膝を馬(栗毛)の代わりに使う事で、徒歩旅行の意味だそうです。江戸時代は、どこに行くにも自分の足が頼りですから、現代のように気軽な旅などとは違い大変だった事でしょう。江戸時代だと伊勢参りが有名ですが、友達に「三重県の伊勢神宮まで歩いて行かない」と言われたら、現代では「ふざけるな!」となってしまいますよね。「山の温泉でのんびりしたい」なんて思っても、健康な人でなければたどり着けません。富士山登山なんて、富士山の麓に着くまでに足はガクガクになってます。私が高校の時には真冬に徹夜で30キロ歩き通す行事がありましたが、最初の1年の時は足のマメが潰れ、膝が痛く激痛が走り翌日は寝込んでしまいました。山間部の冬の星空は奇麗で夜明けまで、流れ星が夜空を飛び交っていましたが、普段歩きなれていないと体は悲鳴を上げてしまいます。江戸時代に対する興味はありますが、現代に生まれて良かったと思う次第です。一歩一歩、自分の足で歩いて出かけていた昔の人は凄いなと思います。月岡芳年 通俗西遊記 (ボストン美術館蔵)鬼滅の刃の劇場版のニュースが良く取り上げられていて、興行収入300億円を超えるかなどと騒いでいますが、なんと中国で去年公開された「Ne Zha」というアニメ映画は50億元(約782億円)以上を記録したという事です。邦題は「ナタ~魔童降臨~」といいますが、YouTubeにあったので見てみました。CGアニメなのですが驚きました。アメリカのピクサーと同レベルと感じました。日本のCGのクオリティを、遥かに超えています。キャラクターデザインやストーリーの所々に、笑いの要素を盛り込んだ作りは、ディズニー映画に似ているのですが、この作品を中国人だけで作ったのならば中国恐るべし。字幕や吹替はないので、話の内容は100%は分かりませんでしたが、それでも十分楽しめました。主人公の哪吒(ナタ)は、中国仏教や道教、ヒンドゥー教に出てくる少年神をモデルにしています。毘沙門天の三男である哪吒は蓮の花や葉の形の衣服を身に着け、乾坤圏(円環状の投擲武器)や混天綾(魔力を秘めた布)、火尖鎗(火を放つ槍)などの武器を持ち、風火二輪(二個の車輪の形をした乗り物。火と風を放ちながら空を飛ぶ)に乗って戦う姿は「西遊記」などにも登場しています。浮世絵や古い仏画に描かれているだろうと探しましたが、上の「月岡芳年 通俗西遊記」ぐらいしか見つかりませんでした。しかも哪吒太子として描かれているのは、普通の武人の姿で本来の少年神の姿ではありませんでした。絵本西遊記全伝. 初編 巻3,4 (国立国会図書館蔵)絵本西遊記全伝. 初編 巻3,4 (国立国会図書館蔵)明治16年刊の「絵本西遊記全伝」の中の挿絵の哪吒も武人の姿で、髭まで生やしています。たぶん名前は伝わっていても、本来の姿は伝わっていなかったのかも知れません。しょうがなく昔集めていた中国切手に哪吒が描かれているのを思い出しました。左下に描かれている風火二輪に乗って戦うスタイルで、火尖鎗は穂先から火炎を吹き放ちます。中国のテレビ局制作の西遊記を見ていたので知っていたのですが、日本ではあまり知られていなかったのですね。映画の哪吒は、目つきの悪い悪童神で描かれていて、本来の哪吒の姿ではありませんが、戦闘モードになると超サイヤ人のようになっていました。凄い作品なのに日本では話題になっていないのが不思議です。ただ哪吒の中国の声優が、最初おばさんの声にしか聞こえなくて、少し違和感を感じましたけど。