若松群鶴図 / ヤフオク肉筆浮世絵の注目品
「若松群鶴図」と題された絹本に描かれた作品になります。落款は無いので作者不明となります。描かれているのは樹齢4~5年の若松と、鶴の群れ。正月などに掛けるのに良い掛軸です。鶴は古代より仙界に棲む鳥とされていて、吉祥と長寿の象徴とされてきました。若松は正月の飾り物として古来より欠かせないものでした。松も昔から神様が宿る木と言われ、生命力が強く長寿の木と言われていました。江戸時代の作品だと思うのですが、床の間に飾られて親戚一同が正月に集まって、新年を祝う古き良き日本の風習を、長い間見守ってきたのかも知れませんね。年末年始はヤフオクに出品された肉筆浮世絵も大した物が無かったのですが、その後いくつか注目した作品が出て来たので今日はそれを報告します。鳥文斎栄之 落札価格 約20万円髪を洗った遊女が本を手に持って座っている図。この作品は出品者が他の本から本物の印章見本を持ってきて、比較して載せていました。本物の証として載せたのでしょうが、確かに似ている印章なのですが良く見てみると違いが見えてきます。偽物は本物を似せて作るので、ぱっと見似ているのは当たり前。西川祐信 落札価格 約45,000円美人月見図 木村東介極箱上方の浮世絵師の西川祐信の肉筆作品は、とても高額なのですがこの作品は無落款なのですが何故か祐信の作品としています。美人の顔は祐信風なのですが着物の模様が祐信の細密な上手さを全く感じません。羽黒堂で過去に売られた物なので、当時は数百万円の価格が付いていたと思われます。東川堂 里風 落札価格 約39,000円太夫立姿図 木村東介極箱浮世絵初期の浮世絵師の作品です。初期の肉筆作品はとても高価です。この作品も無落款ですが木村東介は東川堂里風の作品としています。これも羽黒堂で売られていたものですが、当時落款のある東川堂里風の肉筆画は850万円以上で売られていました。小川破笠 落札価格 約45,000円舞踊美人図 木村東介極箱この作者も初期の人で、調べたら当時のカタログに280万円で売られていたのを見つけました。40年ほど前に280万円で売られた物が、この金額で買えるなんて驚きですね。まぁ本物だったらの話ですが。ここで木村東介という人の名が出てきましたが、木村は羽黒堂という画廊を創立して、東京国立博物館や京都国立博物館に肉筆浮世絵を納めていました。また日本橋三越などの有名デパートなどで、浮世絵肉筆名品展を何度も開催して肉筆浮世絵の販売を手掛けていました。浮世絵などの雑誌にも良く登場していましたが、その時の肩書は浮世絵研究家でした。浮世絵肉筆名品展の目録なども浮世絵研究家と書かれていたので、美術商と呼ばれるよりも本人が気に入っていたのかもしれませんね。昭和の時代に毎年の様に開催されていた浮世絵肉筆名品展の目録を見てみると、現在美術館などに収まっている有名な肉筆浮世絵の作品が多数載っています。北斎や歌麿、春章などは、数千万円もします。個人ではちょっと無理な金額ですね。木村東介極箱とは、羽黒堂で売られた作品の箱には木村東介が表題を書き入れ、蓋の裏側に木村東介のサインと鑑定をした意味で鑑の文字が入れられました。ヤフオクなどでは信頼のおける作品という意味で、木村東介極箱と書き込んでいるのでしょが、残念ながら全てが本物の肉筆作品という訳ではありません。国内でも有名な浮世絵研究家が鑑定した作品を売っているのだから、浮世絵に詳しくない人からしたら本物に違いないと思ってしまうでしょうが、そこは肉筆浮世絵界の闇の深い所です。日本における肉筆浮世絵の名品を数多く取り扱った実績は認めますが、目録の中には明らかに違和感を感じる作品も数多く有り、浮世絵研究家というよりも実際は美術商としての商い優先であったのが伺えます。また木村東介の名を借りて本物らしく見せる為に、偽物の木村東介極箱なども時々見かけますが、今回の作品は間違いなく羽黒堂で販売された物で、サインも木村東介のものでした。葛飾北斎 下絵 落札価格 約33,000円『板額図板下絵』 木村東介極箱葛飾北斎 下絵 落札価格 約34,000円『版下絵梅ヶ枝図』 木村東介極箱この二点は北斎の肉筆版下絵が掛軸になっていて、やはり羽黒堂で販売された物で木村東介極箱があります。北斎の落款はありませんが、説明書きには北斎が戴斗と名乗っていた時代の版下絵としていますが、何という本の挿絵なのか確認されていないので確かではありません。また羽黒堂では「絵本通俗三国志」の下絵を同様に北斎の直筆と言って販売していましたが、現在ではこの作品は北斎の門人の戴斗という浮世絵師の作であると判明しているという前例があります。何故か羽黒堂で販売された作品がこれ以外にも多数出ていたのですが、落札金額からみると本物と感じた人は少なかったようです。私がヤフオクに参加していた7年ほど前は、高額入札する人が何人かいたので、今回のレベルの作品だったら数十万は楽にいっていたと感じます。現在は何年か前に比べると、熱のある人が少なくなっているのでしょうか。(私も含めて)これは本物だったという作品では、月岡雪鼎の三幅対 年中行事図 約157,000円月岡雪鼎は偽物が多いという印象ですが、これは落款、印章から本物だと確認できました。印章を調べるのに海外の超有名美術館の作品と比較して見たのですが、何と美術館の方の作品が偽物だと分かってしまいました。海外の超有名美術館などのコレクションは、自国のコレクターが収集した物が寄贈された物なので結構偽物もあるんですね。月岡雪鼎や息子の雪斎の偽物は良く描けているんですよね。知らない人は買わない方が無難です。こんなに上手いのだから本物だろうとは思わない事です。