北斎の肉筆作品の販売価格 / もさく日記
古い掛軸になりますが、詳細不明。貞幹で検索すると藤 貞幹(とう ていかん)江戸時代中後期の学者・好古家。織田 貞幹(おだ さだもと)、江戸時代前期から中期にかけての尾張藩家老・茶人。などが出てきましたが作者不明となります。葛飾北斎の新発見の肉筆作品が見つかったそうで、勝川春好や春英などとの共作だと聞いて、早速画像を探してみました。最初は実は「どうせ偽物なんじゃない」ぐらいに思っていました。何故なら北斎は、かつて勝川春章の門人でしたが、その時の高弟であった春好には目を付けられていて、いじめられていたエピソードが伝わっているからです。北斎の性格からして、そんな嫌いな人物とは共作は無いだろうと思えたからですが、画像を見て本物だと直感しました。「青楼美人繁昌図」と題されたその作品は、葛飾北斎、勝川春英、勝川春扇、勝川春周、勝川春好、歌川豊国の6人による共作で、遊郭の中の女性と太鼓持ちを描いた作品でした。北斎は作品の一番下で下級遊女か下働きの女性でしょうか。首を折り曲げた北斎らしい構図ですが、気になったのは下をうつむいて表情が暗いように感じてしまうのです。北斎の上に勝川派の高弟である春英が描く遣手(やりて)か妓楼の女将でしょうか、その上に春好の門人である春扇の描く花魁と春周が描く芸者、そして一番上に春好の描く太鼓持ち。この中で勝川派に関係のない歌川豊国(初代)だけが、右側に妓楼の娘でしょうか立ち姿を描いています。北斎の上に勝川派の絵師が重なっていて、何か「勝川派の中では北斎が一番下だよ」と言っているように感じるのは考えすぎでしょうか。このような大勢の絵師による共作は、一般的には席画のように簡単に描き上げてしまうものですが、この作品は一人一人が時間をかけて描き込んでいるので、たぶん北斎から描いて次に春英というように同席せずに順に回していったのかも知れません。そうすると北斎は春好が描くのを知らなかったかもしれませんね。春好の落款に春好左筆と書いてありますが、これは四十五、六歳の頃に中風を患い右手が使えなくなってからのもので、この作品が描かれたのは文化期の初期頃だと推測されます。仲が悪かった北斎と春好の関係が、この作品を描くにあたって良好に転じたのかは分かりませんが、とても珍しい貴重な作品だと思います。すみだ北斎美術館で展示されているようなので画像を見たい人は、すみだ北斎美術館 展示 画像が小さくて分からないという人はこちらこの北斎の作品は約2年前、西日本の旧家が所蔵していたのを東京の美術商が入手したものだと言います。まだ全く知られていない肉筆浮世絵の名品が、この令和の世の中でも眠っていて目覚めるのを待っているのかと思うとワクワクしますね。そこで下世話ですが、いったいいくらで買い取ったのか気になる所です。私が普段紹介している無落款の肉筆浮世絵や、痛んでいたり汚れている物などは二束三文の価格でしょうが、北斎の作品となれば相当に高額になるでしょう。昭和の時代には有名デパートなどで良く肉筆浮世絵名品展などが催されて、今では中々お目にかかれない名品も普通に販売されていました。その時分に売られていた作品の価格を少し見てみると。葛飾北斎のこの作品は 6500万円。同じく葛飾北斎の美人画の名品は、 3500万円菱川師宣の作品 1100万円この価格は目録に記載されていた価格であり、実際の販売価格とは違うかもしれません。また目録の画像は使用していません。最近のヤフオクで少し目に付いた肉筆浮世絵では〇〇銀行頭取の旧蔵品と題された美人画でしたが、肉筆浮世絵を普段から見ている人なら、すぐに歌麿の「更衣美人図」の模写だと気付く作品で、しかも最近描かれたような下手な作品でした。新聞に載った作品らしく見せるために、切り抜いた新聞に載った粗い作品の画像と記事が付いていました。当然これは本物の歌麿の作品が新聞に載った時の記事なのでしょうが、粗い写真なので出品作品のように感じてしまいます。また記事の切り抜きは不自然に途中から切られていて、全容が分からないようになっていました。落札価格は 約127,000円でした。もう一つは、初期浮世絵 岩佐派の二曲屏風でしたが、落札価格は 約112万円。岩佐派は浮世絵の発祥に影響を与えたと言われている絵師の岩佐 又兵衛(いわさ またべえ)の流派です。活躍したのは江戸時代初期で浮世絵の祖と呼ばれる菱川師宣よりも古い人です。普段見る事もない絵師の作品なのですが、作品を見ると盛り上げ胡粉により立体的に描かれた所などの絵の具の剥落が見られません。剥落しやすい緑の絵の具もしっかり残っていて、この時代にしては奇麗すぎると感じました。また肉筆浮世絵の大規模な偽造事件で、1934年(昭和9年)に起こった春峰庵事件にも同じような岩佐又兵衛の二曲屏風が数点出ていたのを思い出しました。今回の作品とは図案は違っていましたが、やはり怪しいと感じてしまいます。これらの作品には落款などは入って無いので、偽物という訳では無くて江戸時代に描かれた物か、明治時代以降に描かれた物かという違いです。