4月から毎月1回、Zoomでポルトガルワインセミナーを行っています。これはポルトガルのワインのプロモーションを行う組織「ヴィニポルトガル」が主宰する全6回のポルトガルワイン教育コースに対応する内容です。ヴィニポルトガルのオンラインコースでは各回終了後にクイズが設けられ、全6回それぞれのクイズに80%以上の正解を取ればヴィニポルトガルから教育コース修了のディプロマが送られます。

私たちのセミナーは4月のポルトガルワイン概説、5月のポルトガルワインのブドウ品種の2回が終了し、6月はポルトガルのワイン産地を解説します。

 

セミナー資料作成時に再度、資料を作り直すのですが、改めて現在のポルトガルワインの革新的な進化を語る上で毎回、外せない人物がいます。中でもポルトガル中北部の生産地バイラーダ地方を代表する生産者ルイス・パトさんは正にレジェンドと呼ぶに相応しい人物です。

 

ルイス・パトさん パト (因みにPATOとはポルトガル語で鴨の意味)

 

この地の土着品種として知られ、数多くのブドウ品種をブレンドすることが伝統のポルトガルにおいて単一品種を造るのがバイラーダ地方のバガ種でした。ただし、僅か30年前まではバイラーダのバガワインはガサツでタンニンが強いワインとして知られ、地元の働き手達のガソリン代わりに飲まれるワインのイメージでした。

ルイス・パトはバガ種が栽培や醸造を工夫することによって世界レベルのプレミアムワインを生み出す可能性に着目し、バガの新たなワイン造り手に挑戦しました。

多産なバガ種をグリーンハーベストなどで収量を抑制し、ブドウの完熟を目指し、醸造においても抽出を加減し独自の600リットルの木樽での熟成など、これまでこの地方の生産者が行わなかったことを実践しました。その成果は2000年に出版された、ワイン&スピリッツ誌年鑑でルイス・ローレンソさんとポルトガルのトップを分け合いました。

そのルイス・パトさんのご自慢はアメリカ産台木の接ぎ木なしでバガ種を栽培して造られた「ペ・フランコ」でした。ペ・フランコとは自由な足、つまりアメリカ台木からの解放を意味します。フィロキセラの住みにくい砂地の畑で栽培を開始したペ・フランコはアメリカ台木を使用した葡萄よりも収量が少なく、グリーンハーベストを行うことなく凝縮した味わいをブドウにもたらすことが出来ました。

その後、ルイス・パトは石灰土壌でもアメリカ産台木なしでバガ種の栽培を開始し「8(オイト)」を造り出しました。まさにフィロキセラとの戦いを行っています。

ペ・フランコ 砂地の畑とバガ(2020年)

 

 

8(オイト)石灰粘土質土壌の畑

 

写真、左端が8(オイト)、その隣がペ・フランコ2015年(先般、パーカー97ポイント獲得が伝えられた。)

 

早くからルイス・パトのワインを輸入したかったのですが手紙を出しても全く返事はなかったのですが、ダン地方のキンタ・ドス・ロケスのルイス・ローレンソさんにご紹介いただき取引を開始することが出来ました。良き生産者は良き生産者を知る、まさにそんな状態でその後次々とポルトガル各地の素晴らしい造り手達と繋がることが出来ました。ポルトガルワインセミナーでも当社が取り扱っているという意味ではなく各産地を代表する生産者として自信をもって紹介することが出来ました。

 

随分とお若い2人(13年前??)

左:ルイス・ローレンソさん 右:ルイス・パトさん ダブル・ルイス。