弁護士出身の実業家・林田です。
消費者庁は4月26日、エステー社の花粉対策
商品MoriLaboの訴求「花粉を香りでガード」
に合理的根拠がないとして、措置命令を下しま
した(>措置命令DB)。
今日はこの事件についてお話しします。
1.本品は置き型だったりマスクに塗るタイプ
だったり色々ありますが、「花粉を香りでガー
ド」の仕組みはどれも同じで、「北海道のトド
マツから抽出された香り成分配合の薬液が、
まわりに浮遊する花粉をガードします」という
もの(>別紙1)。
2.その根拠(エビデンス)については、「本品
に配合されているトドマツ精油は、スギ花粉
をコーティングすることにより、アレル物質の
働きを低減するという研究成果が報告されて
います」とありますが(>別紙1)、どういうエ
ビデンスなのか、よくわかりません。
3.盛んに「特許技術取得済」と書いていると
ころを見ると(>別紙1)、「特許を取得してい
ることが根拠になる」と考えたのかもしれませ
んが、それは全くの見当違いです。
「特許」の主眼は「新規性」。
つまり、そういう技術が新しいものなのかどう
かであって、本当にそういう効果があるかどう
かはポイントではありません。
極端なことを言うと、そういう効果があること
が全くの作り話であったとしても特許は取得で
きます(他社が追試をして「この効果はデタラ
メ」ということを示すと特許は無効になります)。
このことは2018年10月18日に措置命令を
受けた「タバコグッズ事件」で明らかになって
います(この事件についてはYDCのサイト「景
表法ドットコム」で詳しく説明していますので
そちらをご覧下さい>該当ページ)。
4.「花粉対策訴求」で措置命令を受けた事件
として、大正製薬社のパブロンマスク事件があ
ります。
この事件は2019年7月4日に措置命令を受
けた事件ですが、もつれにもつれ、今は取消訴
訟で争っています(この「もつれ」はとても重要
な先例なのでレポートにまとめました>
「特集.大正製薬パブロンマスク事件」)。
この事件では、大正製薬社は自ら行った試験を
根拠としていましたが、「その方法に一般性が
ない」ということで敗れています。
エステー社はどうだったのでしょうか?
5.広告から見る限り、エステー社の守りはイ
マイチな感じがします。
YDCの広告チェックに出してくれていれば
こんなことにはならなかったのに…(この後、
課徴金が来ます)という気がします。
詳しいことは、info@yakujihou.com 問合せ窓
口までお問合せ下さい。
弁護士出身の実業家・林田です。
景表法に関する追及が厳しくなっていることは
No1表示に対する措置命令を見ればわかると
思います(>措置命令DB)。
ダイエットやジムで「-10キロ!」などと表示
するときも根拠を求められますが、何人かの中
からどういう数値を最大値とすればよいのか?
という問題があります。
最も合理的な方法は四分位法で取った数値の最
大値とすることです(四分位法についてはこちら
>説明
図の上内境界点が最大値。
よって、-10が上内境界点であれば「-10キロ!」
と訴求できる)。
他に95%信頼区間を用いるやり方もあります。
たとえば、体重減少の「平均値±標準偏差
(Mean±SD)」が「-10±2.5kg」という場合、
「-7.5 ~ -12.5kg」が95%信頼区間(95%CI)
です。
95%CIは本来、平均値が幅広い分布の中での
平均なのか(これだと平均値の信頼度が低い)、
幅狭い分布の中での平均なのか(これだと
平均値の信頼度が高い)を示す指標です。
しかし、95%CIは同時に「95%のサンプルは
この中に収まる」ということを示すので、この
最大を最大値と考える(上記の例だと-12.5kg
を最大値と考える)ことも間違いではありませ
ん。
私たちはこのようにして、四分位法か95%CI
に基づいて最大値を算出しているのです。
弁護士出身の実業家・林田です。
まず、前回までの復習をしましょう。
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1.(1)「Aを買うとBをプレゼント」と言え
ばBは景品。
(2)「AにBが付いて〇〇円」と言えばセッ
トで値引きという話で、Bが景品になるわけで
はない。
2.なので―
「Aを買うとBが付いてくる」と言えばBは
景品
※1(2)とは「AにBが付いて」が違う
――――――――――――――――――――
理論上の基準は「取引付随性」です。
つまり、何かの提供が、取引=購買や入会に近
いか遠いか?です。
3.今なら定期会員に特典
(イ)化粧水付き(ロ)送料無料
→「今なら定期会員になると付いてくる」と読
め、何かの提供は購買に近いと言えるので、
(イ)(ロ)は景品
4.(イ)化粧水も付いて(ロ)送料も無料の
定期コースがおススメ
→化粧水+送料無料付きの定期コースと読め、
全体でセットの紹介と読め何かの提供は販売に
遠いと言えるので、(イ)(ロ)は非景品
5.3だと(イ)(ロ)の独立性が強いが、4だ
と(イ)(ロ)の独立性が弱く、だから4では
セットの一部と解釈されるとも言えます。
弁護士出身の実業家・林田です。
「3000円で入会すると無料で〇〇が付いて来
る」という訴求。
(1)「入会金 + 〇〇」セットで3000円と考
えれば〇〇は景品規制外
(2)「3000円で入会すると〇〇をプレゼン
ト」と考えれば〇〇は景品扱い
どちらと見るべきか―
これが前回の宿題でした。
行政通知にはこうあります(>ルール集12-J)。
「ある取引において二つ以上の商品又は役務が
提供される場合であっても、次のアからウまで
のいずれかに該当するときは、原則として、
「取引に附随」する提供に当たらない。
ただし、懸賞により提供する場合(例 「○○
が当たる」)及び取引の相手方に景品類である
と認識されるような仕方で提供するような場合
(例 「○○プレゼント」、「××を買えば○○
が付いてくる」、「○○無料」)は、「取引に附
随」する提供に当たる。
ア 商品又は役務を二つ以上組み合わせて販売
していることが明らかな場合(例 「ハンバー
ガーとドリンクをセットで○○円」、「ゴルフの
クラブ、バッグ等の用品一式で○○円」、美容
院の「カット(シャンプー、ブロー付き)○○
円」、しょう油とサラダ油の詰め合わせ)
イ 商品又は役務を二つ以上組み合わせて販売
することが商慣習となっている場合(例乗用車
とスペアタイヤ)
ウ 商品又は役務が二つ以上組み合わされたこ
とにより独自の機能、効用を持つ一つの商品又
は役務になっている場合(例 玩菓、パック旅行)」
要所をピックアップすると-
a.「××を買えば〇〇が付いてくる」という訴
求 →〇〇は景品
b.「カット(シャンプー、ブロー付き)〇〇
円」という訴求 →シャンプー、ブローは非景
品
つまり、「買えば付いてくる」と言えば景品、
「〇〇付きでいくら」と言えば非景品というわ
けです。
この理屈からすると、「3000円で入会すると〇
〇をプレゼント」はaのパターン。
景品規制がカバーすることになります。
弁護士出身の実業家・林田です。
まず、先月13日に書いた「シミウス」の復習
をしましょう。
――――――――――――――――――――
「シミウス」が定期顧客30万人に至ったのは
CRMが巧みであったのが一要因でしたが、定
期戦略に関し私にこんな相談がありました。
「定期4回目での離脱が多い。そこで定期4
回目の購入に4000円のクレンジングをプレゼ
ントとして付けたい。
ただ、シミウスは4000円。4回分をまとめて
も16000円。総付景品と扱われると16000円
×20%=3200円がMAXで、4000円のクレン
ジングはプレゼントできない。
もう1本プレゼントの ”ONE TO ONE ” 戦略
も、美容液+クレンジングでは使えない。何か
うまい手はないか?」
私は答えました。
「クレンジングをプレゼントという建て付けで
はなく、 “定期4回目はシミウスとクレンジン
グで4000円” という建て付けにすればよい。
これなら、シミウス+クレンジングで4000
円、つまり、セット割引をしていることにな
り、クレンジングは景品ではなくなる」
「なるほど―。モノは言いようですね―」
――――――――――――――――――――
では、「3000円で入会すると無料で〇〇が付い
て来る」はどうでしょうか?
(1)「入会金 + 〇〇」セットで3000円と考
えれば〇〇は景品規制外。
(2)「3000円で入会すると〇〇をプレゼン
ト」と考えれば〇〇は景品扱い。
みなさんはどちらと見ますか?
次回までの宿題です。