漢字で書かない名前の場合2008/4/15(火) 午前 5:20

 中国の場合、逆に漢字で書かれないと漢語名がわからないことになる。
 だから、中国が冷戦終了後に韓国と国交を回復し、「南朝鮮」Nán Cháoxiānを「韓国」Hán-guóにしながら、「ソウル」を呼ぶ際に漢語名の「漢城」Hànchéngに執着し続け、「首尓」Shŏu’ĕrを採用するのに10年もの歳月を要したように、漢字の共通性に縛られた限界を示している。BaghdadやMadridが漢字で書かれないからといって、中国や日本で呼べないということはありえない。
「韓国」は中国の戦国時代にあった国名で、「南朝鮮」は意味の上でSouth Korea(=南高麗)に相当するので、むしろ、早期に手をつけるべきだったのは「漢城」を「首尓」にすることだった。

 

 日本では「鈴木あみ」が「鈴木亜美」になっただけで「改名」扱いされたが、日本で「あみ」だったころから中国では「鈴木亞美」Língmù Yàmĕiであった。日本では、ある母親が自分のむすめに「苺」という漢字名をつけようとして役所に拒否されたニュースを観たことがある。たとえ、戸籍の上で「いちご」というひらがなの名前であっても中国では自動的に漢字になおし、「苺」の異体字「莓」にしてMéiというまったく違う發音で呼ぶことになる。当人がどういう漢字で名乗ろうが、同じことである。日本で「隆」の「生」の上の一画の有無など、戸籍上の文字の一点一画にこだわるのは、海外で名前がどう「翻譯」されるかを考えない、非常に視野の狭い態度である。
 たとえば埼玉県の「さいたま市」のような、ひらがなの地名が増えていることに対し批判も多いが、どうせ、中国では「埼玉市」と書いてQíyùshìと読むことになるし、中国製の地図では日本の東北の「いわき市」にも漢字をあてている。發音はまったく違うものになる。

 

 日本では朝鮮半島の固有名詞に関して、音韻、語彙構造、語法については余り話題にならず、漢字で書くかどうかという、見た目だけの浅い論議に終始しているところがある。韓国では俳優、歌手の名前などで、Kim Ha-neul、Park Solmi、Jang Naraのように個人名で固有語を使う藝名や漢字を想定しない名前が増えている(その後、調べるたところ、Park Solmiは漢字では「朴率繭」らしいが、シナ語では「朴帅眉」)。中国でこられの人名を漢字で表記するとき、いかに苦労しているか考えたほうがいい。
 中国の新聞で日本の政治や藝能を報道する際、政治家の土井たか子は「土井多賀子」Tŭjĭng Duōhèzĭ、俳優の松たか子は「松隆子」Sòng Lóngzĭ(ただし、「隆」は「生」の上に小さい横棒)になる。こういった本名の漢字表記は普通の日本人でも知る人は少なく、新聞で紹介されるときにカッコの中に附記されるくらいだ。日本に駐在する中国人の記者は、普通の日本人なら読み飛ばしそうなこういった漢字表記に最深の注意をはらい、漢字名をメモしないといけない。この場合、Takakoを*「達加高」*Dájiāgāoにするような音譯は日本人名に関してはできないようになっている。

 

 「たかこ」の場合、上原多香子(うえはらたかこ)や常盤貴子(ときわたかこ)であれば漢字が明白なので、それぞれ、Shàngyuán Duōxiāngzĭ、Chángpán Guìzĭと読めばよく、たとえば、「常盤」が「じょうばん」か「ときわ」かを悩む必要はなくなる。ただ、北京語を使って生活していると「貴子」と「桂子」が同音になるので、頭の中で一緒になってしまうことがある。映画『城南旧事』で、ある女性キャラクターが自分のむすめをWŏde xiăo Guìzĭと呼んでいたが、このGuìzĭをあらわした漢字が「桂子」だったり、「貴子」だったりしている。

 

 

 日本の場合、「みのもんた」「ともさかりえ」「桜塚やっくん」「辻希美(つじのぞみ)」「小島よしお」「さかなクン」をどう「中国語読み」するか、考えてみたほうがいい。野球のイチローは中国で「鈴木一朗」Língmù Yīlăngである。もし、中国人がカナで名前が書かれた日本の有名人のプロフィールから漢字を強引に引っ張り出しているなら、その表記は日本の慣用と違ったものになり、日中両国で音を犠牲にして求めた「文字の共通性」にそむくことになる。
 「ちびまる子ちゃん」は「櫻桃小丸子」Yīngtáo Xiăo Wánzĭになるが、中国語圏のホームぺージでまる子のプロフィールが紹介され、「にしきのあきら」が「西木之明」になっていた。日本のホームページを観ると、本人が名乗っている漢字表記は「錦野旦」である。「山本リンダ」や「フィンガー5」もあるが、中国語でどうなっているか、興味あるかたは検索してみるといい。
└→樱桃小丸子的资料?_百度知道

 

 『クレヨンしんちゃん』が「蠟筆小新」Làbĭ Xiăo Xīnになるのは日本でも報道された。『ドラえもん』の野比のび太が中国で「野比康夫」Yĕbĭ Kāngfūになるのは、漢字のない名前を表現できない中国人が勝手に中国名をこしらえたからである。ネットで調べたところ、『北斗の拳』のケンシロウは初めの試作段階で「拳四郎」で、『蒼天の拳』の主人公は「拳志郎」だが、『北斗の拳』の中国版『北斗神拳』Bĕidŏu Shénquánでは「健次郎」Jiàncìlángになっていた。
 中国人が日本語を翻譯する場合、漢字に頼る余り、「かな表記」のことばの翻譯はお粗末なもので、『ドラえもん』では「ヤマタノオロチ(=八岐大蛇)」が「山田的落日」、「いなり大明神(=稲荷~)」が「五谷大明神」、『北斗の拳』では「ほ、ほくと…(=ほ、北斗…)」が「我、我和…」になっていた。

 

 何かで読んだ記憶があるが、『おしん』は中国で『阿信』として有名で、これに対して「おしんのしんは辛抱の辛」といわれることから「阿辛」が妥当かとおもう人もいたらしい。それで、『阿信』で有名になったので無理だったとのこと。ただ、「信」と「辛」は中国でも同音なので、語呂合わせにはなる。

 

平成25年tw

/@kyojitsurekishi/

濱田ここねちゃんの名前は台湾では「茲音」らしい。台湾の人はちゃんと名前の漢字を確認したのだろうか。松山ケンイチの本名は「研一」だが台湾で「松山健一」と紹介され、本人が漢字を「研一」にするよう要請したらしい。

/午後7:57 · 2013年5月31日/

 

自由電子報 - /阿信電影版 台日10月同步上檔/

「おしん」は中国で「阿信」である。「おしんのしんは辛抱の辛」と言われ、それなら「阿辛」になりそうだが、もし作品のテーマが「辛抱」でなく「明日を信じること」であれば「阿信」がふさわしい。

/午前1:57 · 2013年12月8日/

 

平成26年tw

漢字で書かない名前の場合 -/ #漢字論 #固有名詞問題 #おしん/

/台湾で松山ケンイチ(研一)が「健一」と表記された | 漢字論原点回帰4 (ameblo.jp)/

/午後3:42 · 2014年11月6日/

 

令和2年tw

/3.「東アジア共通の漢字」は本当か | 漢字論原点回帰 (teacup.com)/

/午前10:04 · 2020年9月30日/

 

令和3年tw

/ソケセテ💉💉(Sokesete,소케세테)さん (@madeinwariofan) / Twitter/

> たとえ、戸籍の上で「いちご」というひらがなの名前であっても中国では自動的に漢字になおし、「苺」の異体字「莓」にしてMéiというまったく違う發音 

「草莓」という 方法も あります。 「莓」単独だと 「梅」と 発音が 重複するからです。 いちご → 草莓 うめ → 梅子

/午前9:33 · 2021年12月13日/

 

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