ロマンチックじゃないアートのはなし -6ページ目

戦後史といえば



誰もが諦めていた映画がとうとう発売されました。





憂国






生き急ぎすぎたかなと(人生を)振り返る時間があった

「生き急ぎすぎたかなと(人生を)振り返る時間があった 」とは保釈となったホリエモンの言葉です。


好材料を手がかりにエッジ(ライブドアの前身)時代から時価総額主義を貫いてきたホリエモンを現在から逆照射してみると戦後まもなくおきた「光クラブ事件 」の首謀者である山崎晃嗣のことを思いうかべるのは僕だけではないはず。 それはIT産業がリードする時代であれ、いまだに戦後であり、かつ昭和の風景を彷彿とさせるに違いない。 畢竟、こんどの顛末も昭和史の延長ではないだろうか。



光クラブ


山崎晃嗣については保坂正康著「真説 光クラブ事件 」に詳しい。

31日競売の結果

サザビーズNYで行われたアジアの現代美術のオークションは予想通りの結果となりました。 中国勢は猛烈な勢いで高値続出。 韓国勢は予想価格を上回る適当な価格で落札され、日本作家は杉本、草間、田中敦子など少数の作家意外はリザーブプライス(出品者が設定する最低価格)でようやく落札されるか、あるいは飯田善國、山口長男、篠田守男、桑山忠明のように不落札が目立ちました。 中国作家のなかにはロットナンバー119番のZhang Xiaogangの98年の作品がエスティメート25-35万ドルに対して979,200ドルで落札手数料を加えればワン・ミリオンを超える。 たった8年前に描かれた筆が遅いとはいえないアーティストの作品が彼の地で1億円を超えることは驚く結果です。

Xiaogang


かつて上野の東京都美術館の60年代展や70年代展とそのカタログで日本の戦後美術を学んだ私にとって、そこで見たような作品が今回の競売で「私は買わない。いらない」と宣言されたことは悲しいことです。 作品を扱う私のような立場のものにも責任がありますが、戦後の現代美術史受容に明らかに断絶があることは美術館教育にも問題があったのでは。 村上+奈良作品の高値はすでに過去の出来事です。 相場が終わったといえます。 美術品の市場での価値はなんどもなんども揉まれ洗われて次第にそのフェアバリューが決定されると信じていますがその時間を短縮することは程度の差こそあれ人為的に可能だと思います。 先日も述べましたがテクノクラートとして「ここ」で生み出される美術作品のバリューを外に押し出すべき役割の人たちが美術館から競って大学に避難している現状を見るにつけとても残念な気がします。


4月1日

お役所的にはいよいよ新年度です。 美術界でお役所といえば公立美術館。 その美術館の世界で大きな変化がおきている。 指定管理者制度という、簡単にいうと公共セクターのマーケットの民間委託です。


ケロロのギャラリーも無関係ではなく代理作家の小さな展覧会を含めると今年度は3本の業務委託を受ける予定です。 美術界に限った変化ではなく官の世界全体の大きな流れのひとつなのでその背後で働いてきた個人としての学芸員は人生の決断を迫られる場面もあるようです。 ある学芸員は本庁にもどり、またあるものは大学教官を目指します。 館の看板学芸員であれ容赦はありません。 残るキュレーターも決して生き残ったわけではなく設定した目標値まで美術館を引っ張っていかなければならない現実。 業績が数字で評価されるわけですから。


この制度が適用されていない美術館でも強制的な異動やメンバーの刷新がドラスティックに行われるようで上に述べた波と同時にこちら側に向かってきているようです。 アドレス帳の更新があわただしい今年の春です。


ともあれ上のポストの者にラインから外されたり、本庁から意図的に移動を命じられたりとこれまで体験したことのない荒波に彼らは晒されています。 そんなこんなで昨夜はあるキュレーターとおそくまで話し込んでしまいました。


変化の時はピンチでありチャンスでもあるはずです。


いまはふるい落としの季節。 これまで身分が保証されていた彼らが一歩アーティストに近づいたことは喜ばしいことではないでしょうか。 これからも現場に残る勇気あるキュレーターにエールを送りたい。

台湾の試み

台北から美術マーケットのフォーラムの案内が届いた。 台湾以外の各国からスピーカーを招き「we will bring you a complete picture of the Asian art market as well investment strategies and trends」とある。 中国メインランドの活況を見据えてのことなのか、欧米資本の巨大オークションハウスに支配される前に先手を打とうというつもりなのか、あるいはアジア域内のウィンブルドンになろうとしているのか分かりませんが面白そうな試みです。 しかし外貨準備高が大きく交易にコンシャスな台湾って将来的にかつてのオランダのような役割を負うんじゃないかな?


日本の文化庁って、いまだ眠ったままのようですね。



2006 Asia Art Economy Forum in Taipei


Participating in the Premier Event of the Asian Art Market

In 2004, the average return on investment of Asian art market hit two digits, leaving the rest of the world far behind. As the economy boom still vigorous, the Asian art market is expected to grow even faster, and so called “Asia Fever” or “China Fever”still is the major issue among global art traders. Asia Art Economy Forum in Taipei is going to probe in depth the opportunities as well as the risks of Asian art market investment.


The Asian Art Market can be looked at from several stages or from different regions. Japan, as the first industrialized country in Asia, enjoyed the early rise of its art market. Hong Kong, Taiwan, Singapore and South Korea, the so called “Four Tigers”, possess the greatest potential in the art market. China and India, along with their rapid economic growth, are the most noteworthy emerging markets. Among all these markets, the Chinese circle formed by Singapore, Hong Kong, Taipei, Shanghai and Beijing is the most influential market. Meanwhile, the maturing market of the Association of South-East Asian Nations(ASEAN) is attracting more and more attention of global collectors.


Hosted by the AGA, the 1st Asia Art Economy Forum in Taipei provides an occasion for a wide range of people from art galleries, art auction houses, art agencies and art press from all over the world to exchange their experience and views. Through such an event, we will bring you a complete picture of the Asian art market as well investment strategies and trends.


Host Institute: Council for Cultural Affairs, Art Galleries Association R.O.C.


Executive Institute: 2006 Art Taipei Executive Committee


Co-executive Institute: Graduate School of Aesthetics & Arts Management, Nan-Hwa University


Journals Covering the Event: ARTCO、Business Today


Special Thanks: Asia Art Archive (Hong Kong)

31日のオークション

オークションハウスのSotheby'sが今月31日に「Contemporary Art Asia 」と銘打った競売をニューヨークで開催する。 中国、韓国そして日本の現代作家の作品247アイテムが競売にかけられます。 方立釣、岳敏君、白髪一雄、杉本博司、リー・ウーハンなど日本でもおなじみの作品のオークションです。 なかには落札予想価格が30万ドルの徐冰、王広義の25万ドルなんかもあってフェアバリューが限りなくグレーといわれる現代中国美術が3ヵ国のなかでもダントツで予想をリードしている。 数年前に驚くほどの高値で落札されたザオ・ウーキーや天安門前の世代に属するヤン・ペイミンのヨーロッパでの人気が後押ししているのでしょうか。 オークションでの価格がパブリックな認知とされるかは分かりませんが当分のあいだは中国現代美術の高値がレコードされていくのでしょうね。


株式相場で恣意的に株価を吊り上げる仕手筋が存在するようにオークションを舞台とするアートマーケットにも同様のスペキュレーター(投資家に対して投機家と呼ぶ)がいます。 高額の中国美術を語るときギャラストはいったい誰が買っているのかと問うことでしょうし、また批評家は数年後の美術史を待たなければ語れないと言うでしょう。 ただいつでもそうなんですが新しいものは将来への期待値だけで買われる傾向にあり欲望の数値は上にオーバーシュートする。 美術史といえどもその編纂の現場では政治的な思惑や力学が働いていることは自明のこと。 また一方で株式の世界で「あなたが数千億円をもって相場を作り株価を吊り上げても畢竟株価はフェアバリューに落ち着くことになる」といわれるように人為的な作為は長期的には無力ともいえます。 ちょうど90年代初頭にロシア美術のブームがありましたが、あの後始末はできたのでしょうか。 とまれここ数年の趨勢を見逃すわけにはいきません。 まずは月末のオークション結果を待ちましょう。


もうひとつこのオークションで気になる点はアジアの現代美術と銘打って先に述べた3ヶ国で構成された点です。 埒外にはない私のような日本人(実はケロロは宇宙人なのだが)からすると日本と韓国あるいは中国の現代美術の間にはいったいどのような関連性があるのかまったく分かりません。 たんに利便性で地域としてグループ化したのか、あるいは通底する美術的な共通性を指したのでしょうか。 おそらく単に「地域性」だと思います。 この地域というコトバに最近興味が尽きませんで、実際のギャラリーで日々の仕事をするにおいてもいつもいつも意識にあがるようになってきました。 先に書いたように実際のところケロロのギャラリーの昨年売り上げのかなりのパーセンテージを東アジア地区で賄っているという事実。 5年前には考えられなかったことです。 テクノロジーの進化で地球が狭くなればなるほど身体的・物理的な距離が新しい尺度になるのでしょうか。 ちょうど元群馬県立美術館の学芸員であった藤川哲さんが少し前にレポートした文章 に興味深い記述があったのでそれを無断引用します。



『ところで、文頭から私は慣例に従って「国際美術展」という言葉を使用してきたが、マニフェスタについては「地域美術展」という呼称を使用することの有効性を最近考えている。このグローバル化時代、つまり日本では「国際化」時代とは呼称しなくなった現在、マニフェスタに国家間という意味でのインター=ナショナルな性質はあっても、世界的という意味での国際性はない、ということにむしろ意識的であるべきだと考えるからである。「福岡アジア美術トリエンナーレ」や「アジア・パシフィック現代美術トリエンナーレ」も、同じくこの地域展として考えられる。2002年のドクメンタと2003年のヴェネツィア・ビエンナーレによって、規模の拡大による世界性の表象は限界を露呈した。グローバリゼーションの時代に、地域展は今後ますますその重要性を増すだろう』

ウルトラ・ダラー

9.11時に毎夜ワシントンからレポートしてくれた手嶋龍一 さんの新著「ウルトラ・ダラー 」を読み終えた直後にニューヨークに渡りアートフェア(美術品の見本市)に参加した。 小説は北朝鮮によるとされる偽造米ドルを主題にしたフィクションらしいが辣腕のNHK元ワシントン支局長が書いたこのフィクションらしからぬ小説は現実以上にリアルでした。 そんな小説を読んだせいで今年のフェアは例年以上にお金や価値を考えることができてリトル幸せ(きっこ風に)。


このフェア は世界から162ギャラリーが参加する国際的な現代美術の見本市でバーゼルのアートフェアと並ぶものです。 私のギャラリーでは写真作家を扱っていませんが、今年のフェアでは昨年、一昨年に多く見られた大きなフォーマットの写真作品がすっかり姿を消してしまったのが印象的でした。 昨年すでにドイツ人某作家の工場機械シリーズがいくつものブースに展示されだぶつき気味な兆候がありましたが。 市場のリード役のギャラリーブースやチェルシーのギャラリーを見て歩くとペインティング作品の声高のプロモーションが見受けられこれはわたしのような世代には80年代初頭のニューペインティングのブームを思い起こさせます。 日本では現代美術などたんなる現象ですが彼の地ニューヨークでは産業ですから事業者は次から次に新しさを市場に投入しマーチャンダイズを仕掛けなければなりません。


もちろんペインティングでなくとも私のブースで展示したフェミニストの作品や日本の掛け軸のスタイルを引用した作品も売れ、昨日まで名前も知らなかったアーティストの作品を購入するアメリカ人の消費意欲の貪欲さに驚きながらも、もう一方で本場(笑)のギャラリーが仕掛ける絵画ブームが気になって仕方ありませんでした。 80年代初頭のそれは日本でも多くの擁護論者が「絵画の復権」などという大仰なスローガンを振りかざし実際に多くの作品が公立美術館に収蔵されました。 ただ「転換期」におけるギャラリーによるマーチャンダイジング主導のブームには次がなく私たち多くの日本の美術関係者はまんまと写真の黎明期や新しいコンセプチュアルアートの誕生を見逃してしまっていたわけです。 前者は70年代後半のシンディー・シャーマン、後者はグループ・マテリアルの活動を経たゴンザレス・トーレスというと分かりやすいでしょうか。 加えてDIA というすぐれた研究機関が当時連続して行ったディスカッション・シリーズも含まれます。


日本語には大局を見るというありがたいコトバがあります。 フェア会場を抜け出して見にいったホイットニー・ビエンナーレ はもうひとつの鏡となるでしょうか。 無名作家のオンパレードとニューズウィークで揶揄されていましたが企画者のフィリップ・ベルニュが引用した映画「アメリカの夜」の意図はどこにあるのでしょうか。 ロンドンのテイト・ギャラリーとプレミアを争ったというピエール・ウィーグ の25万ドルの新作を見ながら時差でぼけた私は眠ってしまいました。

チャン・ヨンヘ重工業

『チャン・ヨンヘ重工業』


株価の話ではありません。 れっきとしたアーティスト・ユニット名です。 秋吉台でもステイしていたらしいけど、今回は国際芸術センター青森 に上陸だとか。 上のアーティスト名からリンクをたどって作品を見てみてください。 英語や韓国語で鑑賞するとデザインとしか見えないからぜひとも日本語で堪能することをオススメします。 さきほどまで暗がりで13タイトルを見ていたので網膜が疲れてしまった。


最近、質量のない作品に惹かれてしまうのはなぜだろうか。


ニコライ先生の山口といい重工業さまの青森といい東京からはるか離れた施設で面白い企画が続きますねえ。 青森は国際芸術センターに続き夏には青森県立美術館 がオープンします。 オープン展はずいぶん昔にお役人さんが○億円で購入したのであろうシャガールの高価な緞帳の絡みもあって政治的にシャガール展らしい。 ずいぶんと費用をかけて世界中から名品を借りてくるようですが役人の思惑とは別にキュレーターさんがよい仕事をしてくれることを望みましょう。 われわれ現代アートファンにとっては秋から始まる第2弾「縄文と現代」に大きな期待をかけましょう。 って自分のギャラリー・アーティストが出品予定だからというわけなんですが(笑)。


ともあれ


青森に急げ!

あれれっ?

周知のライブドアショックのおかげで今年のパフォーマンスはマイナスを記録しています。 というよりも株式相場それも新興市場は需給がすべてといえますから一度ライブドアのような抜群の悪材料がでると徹底的にやられます 。 値動きのよさと引き換えの、当然のリスクとは分かっていても久しぶりの崩壊はイタイ。


総悲観のなかにこそ花は咲くものですがまだ時間がかかるようです。



Le Secret de Brokeback Mountain

パリです。


時間が空いたのでホテル近くのシネマ・サンジェルマン・デュプレで「Secret of Brokeback Mountain 」という映画を観た。 テキサス米語とフランス語字幕で細部まで理解できていませんが、ニックとエニスというカーボーイが羊飼いの仕事で偶然知り合いあるときに同性愛の関係を結んでしまう。 仕事の契約が終わりエニスは田舎娘と結婚しニックは金持ちの牧場主の娘と結婚。 それぞれ子どもを授かり幸せな生活を送るように見えるが、ある日ニックから送られたはがきで再会する。 軋んでいくそれぞれの家庭とあの日に戻りたい二人の男たちだが。 そこから先は実際に映画を観てほしい。 物語のプロットは直線的だが余りあるほど映像と音楽がいい。  アメリカで製作されたが監督はAng Leeという台湾の人らしい。 


ここまで書いて日本でも3月には公開されることがわかりました(涙)。 


年に一度しか映画など観ないのですが、パリで映画を観たのは25年ぶりかもしれない。 今日はポスターと中国人名の監督で飛び入りしたけれど、25年前の映画は「Je t'aime, moi non plus」だったのは偶然ではなさそうだ。 




ところで監督のアン・リーさんって誰?                      気になる・・・・・





25年前のバックパック旅行以来の列車の旅をしてしまいました。 


rotterdam