怪奇派の“派”とは何か? 子ども心に不思議でならなかった | KEN筆.txt

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BGM:ジ・アンダーテイカーテーマ曲『Rest In Peace』

 

24日はニコニコプロレスチャンネルのZERO1 2・19新木場1stRING大会中継→オールナイトニコプロのラダー。メイン後に田中将斗がまさかのブードゥ・マーダーズ入りを果たすというよもやの展開となったZERO1だが、表立って誘われていたのは将軍岡本の方だった。

 よって、メインで小幡優作に勝った岡本をニコプロのカメラが追い続けており、TARUのマイクの最中もずっとその姿をとらえていたら、まったく想定外の田中の名前が出たためすっかり慌てるさまがカメラワークから伝わってきた。反体制側にまわる弾丸戦士といえば、新生FMW時代にECWから凱旋するやエースのハヤブサに牙を剥いた時のことを思い出す。あの時にダイアモンドダストを土産に持ってきたのだった。

 

その後、24時よりオールナイトニコプロへ。先月の「悪役レスラーについて語ろう」に続き、今回は「怪奇派について語ろう」がテーマ。冒頭は、少年時代に“怪奇派”という言葉を知った時の思いから話し始める。

 

そもそも“派”というのは、本人が意図して派閥に属したり、あるいはこだわりを持ったりしたさいに使われる語句であるはず。しかしながらプロレス界では見る側が便宜的にこの“派”という言い回しを用いる。

 

レザー・フェイスもフレディ・クルーガーも、もちろんジ・アンダーテイカーも「俺って怪奇派だからさあ、そこんとこよろしく」などとアラジンのごとく口にしたわけではない。ましてや派閥や同じアイデンティティーを持つ集団でもないのに“怪奇派”で一括りとされてしまう。

 

実力派、清純派、異能派…と派にもいろいろあるが、いずれも言葉の意味的には突っ込みどころがあり(たとえばアンダーテイカーは実力派ではなく怪奇派とされているが、実力がないわけではなく、そもそもプロには実力がなければなれない、とか)その話だけで15分近くも語ってしまったではないか。また、怪奇派の解釈も人によって千差万別のため、前回同様コメントを通じて候補を挙げてもらうさい、怪奇派とするには気が引ける選手も出るに違いないと予想。かくしてアンケートへと突入する。

 

まずは当初、女子は怪奇派とされる対象が少ないので除外するつもりだったが、けっこういろいろ名前が挙がったので結局、アンケートを実施することに。ここで当たり前のように出たのが松本都というアレな展開。また、ジャパン女子プロレスへやってきたデメンティアはあまり知られていなかった。今でいう鳥居みゆきのようなキャラクターで、ボロボロのウェディンドレスを着て鳥のぬいぐるみを抱きながら登場するという方だった。画像がないかと検索したところ、ロッシー小川社長のブログに貼られていた。

 

 

とはいうものの、ほとんど誰も知らなかったので候補には入らず。結果、6人に絞られアンケートをとったところアイガーさんが1位となった。それにしても6人とも濃い…濃すぎる。

 

 

続いて新日本プロレスの歴代怪奇派へ。ここに飯塚高史が出るのはわかるとして、中邑真輔も入ってくるあたり怪奇派の解釈の幅広さが表れている。確かにあの表情とクネり具合がノーマルかと言われたら違うと言わざるを得ない。そして、これまた何食わぬ顔をして当たり前のように顔を出している田口監督。

 

そんな個性派揃いの怪奇派(あれ、日本語がおかしいか?)となったが、結果はやっぱりっちゃあやっぱりなグレート・ムタが1位に。これも怪奇派でありながら実力派というやつだろう。続く2位が飯塚さんというのは「普段どういう生活をしているのか、まったくわからないあたりが怪奇派の鑑」という意見が多かった。怪奇派に日常などというものはないのだ。

 

 

新日本とくれば全日本プロレス。絞られた9人の顔触れがアツかった。ラジャ・ライオン、リップ・ロジャース、ブラックハーツ、そして菊地毅! 

 

ラジャ・ライオンはジャイアント馬場さんと異種格闘技戦をおこなったバンドー空手の使い手なのに、226cmという人類離れしている身長のせいで怪奇派と見られてしまった。ちなみにラジャさんは1966年生まれ。日本でいうところの丙午で、小川良成、高山善廣、佐々木健介、ウルティモ・ドラゴン、金本浩二、松永光弘、新崎人生、AKIRA、エル・サムライ、そして飯塚さんと同い年である。

 

リップ・ロジャースもけっして怪奇派ではなく男色ディーノよりも先に登場したソッチ系の選手。ただし、人によっては男色先生も怪奇派となることを思えば、ここに入るのも致し方ないか。ブラックハーツはわかるとして、火の玉小僧まで出されるとは…まあ、この数年で定着したあの秘孔を突かれたかのように曲げられる顔力が、それほどパンチが効いているということなのだろう。

 

 

アンケート結果は“東洋の神秘”ザ・グレート・カブキが1位に。これにより新日本と全日本で父子揃って代表になるという、故ゲーリー・ハートが聞いたら泣いて喜ぶような結果となった。

 

続いてインディー系へ。ここではFMW、W★INGプロモーション、みちのく、大日本、DDTといった団体…つまりはドインディー以外が対象となった。鶴見青果市場の皆さんは、しばし待たれい。

 

ここに飯伏幸太が入ってくるという…確かに、夜道でいきなり出くわしたりしたら身構えてしまう対象ではある。「あの目が怪奇派」という生々しいコメントも。男色ディーノ、ポイズン澤田JULIE、DJニラとDDT系が多かったのは意図したものではなく、コメントで出された数が多かったため。W★INGが3人入ったのは納得。

 

それまで日本のプロレスシーンにおいては怪奇派=イロモノであり、メインストリームには絡められなかったが、W★INGが日本で初めて怪奇派を“主力”に据えた団体となった。つまり、イバラギさんは怪奇派の歴史を変えてしまったのだ(本人にそのような狙いはなかったと思われるが)。さて、結果は…。

 

 

バラモンご兄弟(カラテバラモン込み)が堂々と並み居る怪奇派の皆さんを撃破。これでレザー・フェイスもフレディ・クルーガーも、死んで地獄に落ちて今度生まれ変わったらウジ虫になるだろう。怪奇派の次の人生がウジ虫(正確には虫生)って、どんだけ前世で悪いことをしたのか。

 

これまで各カテゴリーで1位になったのはいずれも日本人。意外と日本人は怪奇派向きなのだろうか。ここで、決戦投票対象外で怪奇派団体の先駆けとなったW★INGに敬意を表し、こういうアンケートもやってみた。

 

 

まさにW★INGフリークスを狂気させた怪奇派揃い。そんな中、1シリーズさえも出なかったブギーマン(タッグリーグ戦の途中で自らマスクを脱いで正体を晒す)が2位になったのは、どうやら近年に入ってWWEへ登場した同名の選手と混同してしまったらしい。ミミズを食うあの男はW★INGには来ていない。そのあたりに気づかなかった私が悪かったです。

 

そのWWE版ブギーマンの話が出たところで海外の怪奇派へ。プレイヤーの中に一人マネジャーであるポール・ベアラーが入った。あの風貌と喋り方はある意味、アンダーテイカーやケイン以上のインパクトがあった。

 

そこから派生し、週刊プロレス在籍時代に締切日の朝になると原稿を取りに来る共同印刷の営業さんが、ベアラーに似ていたというオハナシに。その名は川名浩司。まず体型が相似形であるだけでなく、私や当時の同僚である小島和宏記者が「川名氏、もう無理! 書けねえよ」と言うと「ひ~ん、そんなこと言わないでくださいよー」と泣き声になるのだが、そのトーンが本家ベアラーと同じ周波数だったことから“和製ポール・ベアラー”の異名をほしいままにしたのだった。

 

当時の週プロ編集部は徹夜明けになると磁場が狂い、ただでさえ締切が迫っているのにバカバカしいやりとりをしてはゲハゲハやっていた。川名氏、元気かなーなどと回想する中、アンケートへ。これはもう、異論なしだね。圧倒です。

 

 

そしていよいよドインディー系に。ここからはその筋の間で神サイトとして重宝されている「原色怪奇派図鑑」さんを参考に。ただ、ここを見てしまうととてもではないが9項目に絞れない。鶴見青果市場の住人さんは意外と少なく、埼玉プロレスと666関連が2人ずつ。パロマ様も怪奇派だったのか…。

 

原始猿人ヴァーゴンについては、あのザ・グレート・サスケと絡んだ時のエピソードを話す。じつはわたくし、鶴見青果市場には国際プロレス・プロモーションではいったことがなく、初めて足を運んだのはサスケが冷凍保存されたヴァーゴンの保管場所を突きとめた時だった。ヴァーゴンは、怪奇派の聖地・鶴見青果市場の冷凍庫の中へ隠されていたのだ。

 

あのくだりを最初から最後まで憶えている方がいたら教えていただきたい。さすがに所々の記憶が抜けているので、どうして最終的にサスケvsヴァーゴンではなくみちのく大田区大会の第0試合でサバイバル飛田vsヴァーゴンになったのか、その流れを失念しているのだ。

 

そんな候補者の中に、西日本プロレス(のちにウェストジャパンプロレスへ改称)というローカル団体へ出没したバイオフランケンがなぜ入っているのかというと、少年時代の飯伏幸太に多大なる影響を与えたため。なんでも西日本を観戦したさい追いかけられたトラウマがあるそうで、その経験がのちのPK(プレイヤーキラー)飯伏のモチーフとなったらしい。

 

▲「一時期ニフティのプロレスフォーラムに書きなぐっていたプロレス観戦記を掘り起こすブログ」さんより、ゴールデン☆スターに多大なる影響を及ぼしたバイオフランケンの雄姿

 

選手もファンも見境なく全速力で追いかけてきてロケット花火をぶっ放すあの行為は、客席で暴れ回るバイオフランケンの拡大解釈版。しかも飯伏がDDTに入ってからその話をしていると、某先輩が「ああ、あれ俺だよ」とポツリと言って頭をガーン!とハンマーで殴られたような衝撃を受けたという微笑ましいエピソードもあるとなれば、候補に入れねばなるまい。

 

 

なんと! 結果はダークホース的存在の怨霊が1位に。そこからレッスル夢ファクトリー時代にさかのぼり、悪夢軍団の盟友だった死神が「しにちゃん」という軽めな愛称で呼ばれていたことや、葛飾橋体育館物語を蔵出しする。

 

かくして、各カテゴリーの1位が決まり、女子とW★INGは別枠として決戦投票へ。これもまあ、やっぱりとしか言いようのない結果に。

 

 

「怪奇派の最高傑作」と評されるだけあって、誰の追随を許さぬことがここでも証明された。歴代最高の怪奇派はジ・アンダーテイカーに決定! そして続く2位は…ここでもマスターの奇跡が。

 

もちろん、この結果はあくまでもニコプロ民によるものであり、媒体ややり方が違えば顔触れも変わってくる。たとえば、テレビ朝日がゴールデンタイムで「史上初!現役・OBレスラー200人&ファン1万人が選ぶプロレスラー怪奇派総選挙」とかやってくれたら…と思うのだが。

 

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