歴代ナンバルワン悪役レスラーはタイガー・ジェット・シン | KEN筆.txt

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BGM:タイガー・ジェット・シンテーマ曲『サーベルタイガー』

 
26日は別件の取材でプロレスリングFREEDOMS新木場1stRING大会へお邪魔する。「力道山三世力・試練の七番勝負~最終戦~」として力with百田光雄vsカラテバラモンwithバラモンシュウ&バラモンケイというカードが組まれ、例によってアレな試合となったのだがFREEDOMSへ継続参戦するうちに力さんの神懸かりっぷりに拍車がかかっていた。
 
形はどうあれ、その場にいる人々の心をわしづかみとしているのは動かしようのない事実であり、さすがは新日本1・4東京ドーム大会の公式ソングを担当した身でありながら、サイプレス上野さんが2017年個人的に注目する選手として挙げただけのことはある。何よりすごいのは、力さんの予測不能な動きに対し百戦錬磨のご兄弟がリアクションをとれず、棒立ち状態になるシーンが何度かあったこと。
 
胴絞めスリーパーからのレフェリーストップでTKO勝ちを収めたあと、力さんは相手のカラテさんに対し勝者として驕るどころか地を這うような低姿勢で感謝の意を述べようとマイクをとったのだが、気持ちが先走り過ぎて発声と口の動きが追いつかず、興奮状態で思いのたけをぶちまけたところ号泣会見のようになってしまい、誰にも聞き取れなかった。だがそれがいい。もしかすると、現在のFREEDOMSでもっともフリーダムさを体現しているのが、力さんなのかもしれない。
 
27日は昼から某メディア用に男色ディーノ&マッスル坂井のお二方の対談を収録。DDT20年の中で文化系の部分を担ってきた2人だけに話が面白くなるのは当然なのだが、たった3人からスタートしたプロレス界の零細企業がなぜここまで大きく成長できたのか、その理由をズバリ口にしている。掲載されるのを楽しみにしていただきたい。
 
夜にはニコニコプロレスチャンネルに移動し、WRESTLE-1・稲葉大樹選手の生インタビュー。昨年12月の「どーのこーの」で2016年のW-1 MVPアンケートを実施した結果、1位に選ばれ出演権を獲得したという流れ。コメントによる質問に答える形で「他団体の選手で闘って見たいのは新日本プロレスの小松洋平選手。プロデビューする前、働いていたミサワ整骨院の三澤威先生のプロレス学校で教わっていたんですけど、その時の同期が小松選手なんです」と発言。何年か先に実現したら面白そうな物語である。
 
24時からは「鈴木健.txtのオールナイトニコプロ」へ。今回は「悪役レスラーについて語ろう」をテーマに、日本プロレス時代、昭和の新日本及び全日本、平成の新日本及び全日本、インディー、女子と分けてナンバワーヒールは誰か?のアンケートをおこなった。
 
まずは女子から。「ニコプロ民がMVPとかを決めてみた」同様、コメントで主な選手(あるいはヒールユニット)をあげてもらい、こちらの独断で最大9項目まで絞り、そこからアンケートで順位を決めるという形式。その結果、いきなり女子はダンプ松本とブル中野という、稀代の悪役女子プロレスラーがまったくの同率で1位になるという結果に。決選投票をやるべきかを呼びかけたところ「やらなくていい。これが結果だよ!」と、甲乙つけ難い2人であることの証明を選んだ。
 
 
続いて男子。日プロ時代のオールド及びレジェンドレスラーとなるとリアルタイムで見ている視聴者も少ないため、これは伝説で判断する形だろう。そうなると「得意技の噛みつきで流血させ、テレビで見ていた老人をショック死させた」という物凄いエピソードを持つフレッド・ブラッシーがやはり強い。日本における知名度では上回るザ・デストロイヤーを押さえて1位となった。
 
 
お次は昭和の新日本へ。話として盛り上がったのはタイガー・ジェット・シンのエピソードで、これまでも何度かコラムで書いてきた週刊プロレス・石川一雄カメラマンとの素敵な関係について語る。また口癖である「ハタリハタマタ」の意味を知りたいがためにインド料理屋へいったさい店員のインド人に聞いたことがある業界関係者の方も紹介。ちなみに、その時の回答は「そんな言葉知らない」だったそうだ。
 
アンドレ・ザ・ジャイアントについては伝説の田コロ決戦、スタン・ハンセン戦を大巨人サイド視点で掘り下げる。あの試合は223cmをラリアットで場外まで吹っ飛ばした不沈艦ばかりが語り継がれているが、じつはアンドレの他に比類なき凄さも発揮されていたのだ。そんな話で盛り上がったところでアンケート。
 
 
インドの狂虎が他を圧倒。アンドレの数字は、ヒールという認識で見ていなかったということだろう。続いて昭和の全日本に。ハンセンは在籍年数からこちらに入れた。ここではアブドーラ・ザ・ブッチャーとザ・シークにシンも加えたその違いについての検証に。結論としては負けた時の態度が三者三様だったということになる。
 
シンは負けると他人のせいにする。よく誤爆が原因で頭を抱えているうちにパートナーがやられてしまうと「これは陰謀だ!」と言い張っていた。あからさまな贔屓のレフェリングやビンスのような悪のオーナーでもないかぎりは、プロレスの敗因で陰謀というのもかなり突飛な理由づけである。いったい誰の陰謀だったのだろう。
 
ブッチャーは負けると荒れ狂ってウサを晴らす。たとえ負けたとしても場外を練り歩き、元気のよさをアピールすることで負けた印象を消してしまう。ブルーザー・ブロディもこのタイプ。
 
シークはなかったことにする。3カウントやギブアップを喫したその直後には何事もなかったかように「アラー・マキーム!」などと言いながら場内を徘徊。済んでしまったことはどうでもいいと言わんばかりに五寸釘でセコンドへ襲いかかったり、パンフを噛みちぎったり、サブゥーをしかったりしていた。
 
悪い人たちが負けたあとはこの3パターンのうちいずれかの行動に走るというのがニコプロ民の一致した見解に。そしてアンケートの結果は…ブッチャーがダントツ!
 
 
昭和の時点でかなりお腹いっぱいだったのだが、平成にも悪い人たちはいた。ここで言う悪い人とは悪党及び悪役であり、けっして悪人ではない。にもかかわらず、平成新日本で話が盛り上がったのは北尾光司。本人はヒールになった覚えなどないと思われるが、デビュー戦とその3ヵ月後に東京ベイNKホールでおこなわれたビッグバン・ベイダー&クラッシャー・バンバン・ビガロ&スティーブ・ウイリアムス(致死量級のトリオ!)との6人タッグマッチ(パートナーは橋本真也&マサ斎藤)の話が、まあ盛り上がる盛り上がる。
 
ニコプロのアンケートは話が盛り上がるとそこに票が集まる風潮があるため、北尾が1位になるかとも思われたが、さすがは一時代を築いたnWoムーブメント。スタイリッシュな反体制ヒールとして絶大なる人気を誇った蝶野正洋が超闘王を振り切った。
 
 
同じく平成の全日本編。こちらは90年代中盤から四天王プロレスが全盛を迎え、日本人対決が中心となったため悪役ガイジンが生まれづらい土壌となった。そんな中で名前が挙がったのは日本人ヒール及びそのユニット。なんとTARU率いるブードゥ・マーダーズが1位に選ばれたのである。
 
 
最後は大仁田FMW以後のインディー系。9項目に絞るのが大変だったが、それだけにバラエティーに富んだ選択肢となった。ヘラクレス千賀が入っているのは完全にニコプロ仕様。結果はやはりというべきか“極悪魔王”の異名をほしいままにし、絶対的ベビーフェイスである大仁田厚の宿敵として名を残したばかりか、地元である伊勢崎市を勝手に暗黒街としてしまったミスター・ポーゴ。
 
 
この方のエピソードもあげたらキリがないのだが、番組内で話せなかったことでひとつ思い出した。大日本に上がっていた頃、伊勢崎でカンフー・リーとの一騎打ちがおこなわれた。つまり、グレート小鹿さんがテキサス遠征時代のキャラクターを「アチョーッ!」の掛け声よろしく一夜復活させるというマニア垂涎のカードである。駄菓子菓子、姿を変えたところでポーゴ様に通用するはずもなく例によってなぶり殺しに。勝ったポーゴ様が、バックステージで言ったセリフがグンバツすぎた。
 
「いいか、俺様はな、この暗黒街の伊勢崎だったらなんだってできるんだ! 今度この街でカンフー・リー? 小鹿? そんなのはどっちだっていい。とにかくもう一度やったとしてもな、結果は同じだ! それだけじゃねえ、今度はこれぐらいじゃ済まねえぞ。俺様はなあ、伊勢崎中から救急車を100万台呼んでやる! いいか小鹿、てめえは100万台の救急車によって病院に運ばれるんだ。この恐ろしさがわかるか? わかったら出てけーっ!」
 
たった一人のケガ人を病院へ運ぶために、わざわざポーゴ様は100万台の救急車を呼ぶというのだからエラいこっちゃである。まず、体育館の駐車場に100万台は停められないし、そんなに一個所へ呼んだらほかで救急車が必要になったさい足りなくなるのも確実。何より小鹿さんを乗せた一台以外の99万9999台分の救急車はケガ人を乗せることさえできぬまま、ポーゴ様の命令には逆らえないのだ。
 
それはさておき、これで各部門の1位が決定。女子は別枠とし、男子枠の1位6組でいよいよナンバーワン…タイガー・ジェット・シン風に言うならナンバルワンを決める決選投票をおこなう。果たして結果は――。
 
 
そうだよな、やっぱりシンとブッチャーだよな――そんな感じで誰もが納得の数字に。ニコプロ民が選んだ歴代ナンバルワンヒールはシンに決定した。やはり悪役、悪党、ヒールといった言葉を聞けば、シンの顔がまず浮かんでくる日本の国民は多いのだろう。
 
次回2月のオールナイトニコプロでは「怪奇派について語ろう」がテーマ。こちらもかなり語り甲斐がある物件である。ジ・アンダーテイカーは言うまでもなく、昭和の時代は怪奇派の宝庫だし、あるいは鶴見青果市場方面にもウヨウヨいる。人によっては飯塚高史、男色ディーノも怪奇派だと主張する方もいるだろう。私の知り合いは「中邑真輔って怪奇派だよね」と言っていた。
 
そのあたりは自由な見方で候補を挙げていただき、同じようにアンケートでナンバーワンを決める。2月の最終金曜か土曜の24時より配信予定なので、ぜひ参加してください。