他のDDTブランドとは違った独自性を求めて…新体制DNA発進! | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

BGM:Hilcrhyme『パラレル・ワールド』

 

23日の日中はパンフレット用取材が続く。WRESTLE-1もDDTも3月20日の大会より新作パンフレットを発売するため、当然ながら同時進行なのだ。

 

まず、大久保のW-1事務所で前日に新チャンピオンとなった土肥孝司と藤村康平を取材。現在23歳の藤村はUWAがかつてメキシコにあった団体名であることを知らない世代で、ウィキペディアで調べたところ歴代王者にそうそうたる顔触れが名を連ねているのを見て、ビビッてたじろいだという。一方の土肥は、できたばかりのWRESTLE-1リザルトチャンピオンシップのベルトを眺めてひとこと。「一本に5つも同じロゴマークが入っているチャンピオンベルトは史上初でしょうね」

 

その後、新宿FACEに移動。こちらはさいたまスーパーアリーナ大会でメインを務める竹下幸之介に話を聞く。物事をいい方向へ変えるたとえ話として出した、某大学体育会系部活のドキュメンタリーが面白かった。

 

そのまま新体制1発目となるDNA新宿FACE大会を取材。ステージ席後方の電飾セットだけでなく、壁にも写真をコラージュしたパネルが貼られていたのを見て、WWEや他のスポーツイベントにもあるスタンドの壁を囲むヴィジョンを思い起こす。演出とは、空間プロデュースなのだと実感。

 

 

第2試合で上野勇希を破ったMAOのキャノンボール450°は、まだDDT本体ではあまり出されていないためそれほど浸透していないが、ファイアーバード・スプラッシュでこの飛行距離はすごい。

 

 

第3試合後にサプライズとして東京03の豊本明長さんが登場。DNAにおける役どころは“水差しアドバイザー”となるらしく、蛇口から水が出る音に続きブロック・レスナーのエントランス曲に乗って入ってきた。なぜレスナーの曲なのかは本人も「わかりません」とのこと。確かに「NO CHANCE」だったら鶴見亜門GMと被るので、これはこれでいいのかも。ポール・ヘイメンともイメージは違うし。

 

豊本さんはリングに上がることなく(おそらくプロレスラーに対する尊敬心によるものなのだろう)鈴木大に試練の七番勝負を言い渡す。将軍岡本にボロ負けしながらも、こうして気にかけてチャンスを与えてくれる人がいるのだから、鈴木大はしあわせ者である。

 

 

第4試合では勝俣瞬馬が上半身のコスチュームをかなぐり捨て、肉体を披露。均整のとれた体つきがそれまでのイメージを一瞬にして変えさせた。戦前から口にしていたように、ジュニアとしての闘いを意識しているのが伝わってきた。

 

DNAにはタイトルがなく、本体のDDTでもジュニアヘビー級というカテゴライズはされていない。だが、ジュニアにはジュニアにしかできぬ魅せ方がある。鈴木鼓太郎はそのスペシャリストだけに、キッチリと“ジュニアの勝俣”を引き出した。

 

 

終盤に勝俣が何度か見せたあわやという場面も、ジュニアならではの動きや切り返しから。最後は鼓太郎がブルーデスティニーで勝ったものの、新体制ならではの新しい風景をまず提示したのは勝俣だった。

 

 

この後、7人の練習生が紹介される。全員がデビューすればDNAは21名となり、外部から呼ばなくても所属選手のみで大会をおこなえる。CMLLでの練習経験がある者、アニマル浜口ジム出身者、中国出身のボディビルダー、国士舘大学ラグビー部出身、柔術黒帯など逸材揃いだけに、先輩たちもうかうかしてはいられまい。

 

 

セミファイナルでは桜庭和志とLEONAが隣同士に並ぶシーンが。ただし、この時点でLEONAの視線は相手コーナーの渡瀬瑞基へと向けられていた。

 

 

新体制のエースを宣言した岩崎孝樹だったが、桜庭に捕獲されて万事休す。ところが、勝負が決したあともリング上そっちのけで渡瀬とLEONAがやり合う。これまでは先人たちとの“家賃が高い”試合ばかりが組まれていただけに、LEONAはこういう闘いに飢えていたようだ。

 

 

メインでは怪童・吉村直巳がそのふてぶてしさで否応なく観客の視線を集めたが、曙に対しては豪語していたようにはいかず“かわいがり”を受ける。会見で挑発されたとはいえ、横綱の入れ込みようはかなりのものだった。

 

 

公約していた一人でぶんなげるのは未遂に終わったが、パートナーの岡林裕二との合体ブレーンバスターは成功させる。ただ、やる気が先走り岡林との呼吸もなかなか合わなかったため、終盤は曙&樋口和貞に追い込まれ、最後は轟天で沈められる。吉村はデビュー5戦目でプロ入り初黒星。

 

 

メイン後にも豊本さんが登場し、5月10日にDNAとしては初進出となる後楽園ホール大会の開催をしれっと告知。これで現有のDDTブランドはすべて後楽園へ進出することになる。

 

 

大会プロデューサーを務めた佐々木敦規氏はバックステージで「演出としては進行も含めハラハラドキドキしましたけれど試合が何よりよかったんで、選手の皆さんが演出を盛り上げてくれて感謝しています」とコメント。リング内に関しては選手に任せるという姿勢なのだろう、演出を絡ませることはなかった。だからこそ違和感なく観客に受け入れられたのだと思う。

 

大会が終わって家路につくファンが、そこで演出に関することばかり語り合うようでは本末転倒となってしまう。試合の印象が刻まれた上で、そのあとに「そういえば今日、演出もよかったね」という感じで振り返られるのがベストな塩梅なのだと思う。その意味でのバランスに関しては申し分なかった。

 

新体制1発目は話題性もあり前売り券が完売するほどの盛況となったが、問題は次回以降。DDTはもちろん、他のブランドとも違った独自性を求められるだけに、各選手がそれにどう応えていくかがテーマとなる。

 

なお、大会終了後に速報用として書いた「まとめ」もあるので、こちらをご一読いただければ当日の詳細がわかります。

無限大の可能性を秘めた若者たちのプロレス団体、新体制DNA発進