中国の行政区画は分かりにくい。まず、省に代表される1級行政区と言われるものがある。今、22省、4直轄市、5自治区ある。合計31だ。これはよく分かる。人口も面積もみんなヨーロッパの1国か、それ以上の大きさだ。このほかに香港とアモイの二つの特別行政区がある。さらに中国はひとつという観点に立てば、台湾省というものがある。
それはともかく、31と言うと、日本の県が47だからまあ県ということか、と思いたくなる。しかし国全体の人口が日本の10倍、面積が23倍あるので、少し違和感がある。
省の次は何か。これが原則として市になるのだが、実は市の下にも市があるので、最初の市は地区級市と言われる。ちなみにけんじいの住んでいる浙江省は11の地区級市からなり、それぞれが平均して大体3~5百万人の人口と1万平方キロの面積をもっている。省都杭州は6百万人だ。ということはこの地区級市こそが、日本の都道府県にあたると考えると一番ぴったりする。日本にいる時、中国には百万都市、何百万都市がぞろぞろあるなあと思ったことがあるが、それはある意味間違いだ。日本で言う都市ではなく、県くらいの地方自治体がみな大体何百万人の規模ということだ。
さて、地区級市の下に、日本で言う普通の市(まあまあの都会)と県(田舎)があり、地区級市の中心部はいくつかの区に分かれる。つまり省が1番目とすると、2番目が地区級市。3番目は、区、市、県が同列で並ぶ。だからこのレベルの市を「県級市」と呼ぶ。ここでは県級市と県は文字通り同列だが、地区級市と県では、県の方が下になる。中国人の学生が、日本の地方制度を見て「日本は間違っている。県と市が逆だ。」と言っていたが、大きなお世話だ。それなら「中国は間違っている。市の下に市がある。どっちかを変えたらどうだ。」と言いたくなる。区は東京都の特別区のような存在で、市、県と同格である。たぶん地区級市政府のある街にしかない。これで日本との対応で言えば、県級市=日本の市、県=日本の町村、区=東京の特別区という理解が可能だ。
これで終わりかと思うと、まだ下があることが多い。県級市、県、区の下に郷または鎮と呼ばれるものがある。先日郊外の大仏寺に行く途中でバスの終点だった曹宅鎮には、「曹宅鎮人民政府」というびっくりするほど立派な役所の建物が現れて驚いた。しかし中心部にはこのレベルの人民政府はないから、合併前の村の組織を残したのではないかと推定する。郷、鎮レベルに対応して町中には「街道」がある。こちらは人民政府を名乗らない「居民委員会」が仕切っている。根拠法はあるようだが、日本の町内会と同様、もう少し緩やかな組織のようだ。
学生に、地方政府が4段階もあるのは多すぎるのではないかと聞いたら、「中国は大きいんですから」と返事が返ってきた。確かに浙江省だけで人口5千万人。ハイ、失礼しました。