臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言 -33ページ目

臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言

心に移り行くよしなしごとをそこはかとなく書き連ねています。

 「行政は現場を知らない」というのは、よく聞かれる行政官・公務員・官僚・役人に対する批判である。
 そのため、最近は、『現場』を知っている人達を官公庁に招いて、行政の一翼を担当して貰うということが行われている。

 最近の日経メディカルオンラインに、そうした『現場』を知る元行政官らの座談会形式のインタビュー記事が掲載されている。
 なお、日経メディカルオンラインの会員になれるのは医師のみなので、当該記事を読みたい方で、まだ、医師免許をお持ちでない方は、この機会に是非、医師国試に挑戦して、医師不足の解消に貢献して頂きたいと思う。

 さて、そんな『現場』を知っている筈の人達でも、実は「検疫の現場」を知らないと言うことが記事中に露呈していて、正直、非常に驚いた。

 昨年、厚生労働省において、新型インフルエンザ対策を担当していた人達は、現在、日本で通常行われている検疫について、「平時でも、発熱を伴うような下痢症患者が申し出れば、検疫検査が実施され、必要があれば隔離されます」と認識していたのである。

 最初、記事を読んだとき、一体、いつの時代のどこの国の検疫制度のことを言っているのだろうかと思ったが、現代日本の検疫のことだと分かって、正直、驚きを通り越して、呆れ返ってしまった。

 現在、日本の各検疫所において、「発熱を伴うような下痢症患者」が自ら検疫官に申告して来ても、「検疫検査」は実施されないし、ましてや「隔離」など絶対に行われない。

 昨年の新型インフルエンザ騒動の際に行われた検疫措置についてに、有害無益であったとか、政治的なパフォーマンスであったとかいう人達がいる。現役検疫官(推定年収1,200万円?)の木村もりよ(盛世)さんらがそうした批判の急先鋒である。

 確かに、なぜ、あんなこと(機内検疫、隔離、停留etc.)をしたのか、正直、疑問を感じていた。まさか本気で行っていたのではないだろう、パフォーマンスと承知の上で、世論に押されて、やむを得ず行っていたのだろうと思っていたが、実際は、そうではなく、かなり本機だったのかも知れない。

 「現場」を知るというのは、なかなか難しいことである。

----------
元厚労省担当官3人が語る新型インフル対策の後悔
【日経メディカルオンライン 2010年5月24日】

 新型インフルエンザ「パンデミック2009H1N1」が発生して1年が経ちました。対策として実施した成田空港での機内検疫、発熱外来の設置、ワクチンの優先接種順位や接種回数の決定などに関し、厚生労働省が多方面から批判を浴びたのは記憶に新しいところです。

 現在、厚労省では、「新型インフルエンザ対策総括会議」を通じて、この1年を振り返っての検証作業を進めています。ただ、こうした公的な会議では、対策の立案・実施に携わった厚労省担当官の“本音”は、なかなか表には出にくいものです。

 外部の専門家としてこの3月までの2年間、同省の新型インフルエンザ対策推進室に席を置き、パンデミック2009H1N1への対応にかかわった石川晴巳氏、高山義浩氏、平川幸子氏の3人に、この1年間の国内の対策について振り返ってもらいながら、各種の施策を実施する上での背景や後悔、今後の課題などについてじっくり語り合ってもらいました。

◆元厚労省新型インフル対策推進室メンバー座談会
元厚労担当官3人が振り返る新型インフル対策(前編)
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_68878_195772_4
元厚労担当官3人が振り返る新型インフル対策(後編)
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_68878_195772_5

 現在、日本に限らず、世界中の多くの国々では、口蹄疫に感染した家畜(牛、豚、羊など)が見つかると、感染の有無にかかわらず、それらと同じ施設にいた家畜もろとも、情け容赦なく徹底的に殺戮するのが普通である。
 つまり、ある家畜が口蹄疫に感染したことが判明した時点で、その患畜(感染した家畜)だけでなく、同じ牛舎等にいた健康な家畜も含めて、すべての家畜が速やかに殺されてしまうので、家畜が口蹄疫によって、死ぬことはない。口蹄疫で死ぬ前に、あるいは口蹄疫が発病する前に、人によって殺されるのである。

 また、口蹄疫に感染した家畜が、その後、どうなるのか、きちんと調べられることも滅多にない。実験的に感染させて、臨床経過を見るということは行われるが、自然の状態で感染した家畜の何%が発病して、どの程度の確率で自然に治癒するのか、また、自然治癒後にどのような後遺症がどの程度の割合で生じるのか、そういったことに関するデータは、ほとんどない。
 口蹄疫に感染した幼獣は、ほとんど死ぬと言う人もいるが、本当のところは分からない。一度、口蹄疫に感染すれば、肉質が落ちるとか、たとえ治癒しても、乳の出が悪くなると言う人もいるが、そもそも口蹄疫に感染して治癒した牛など存在しないのである。治癒する前に、感染した牛は人によって殺されるのであるし、感染した牛の肉を食べることもないので、その肉が美味なのかどうか、知る由もない。

 ところで、口蹄疫は人には感染しないと、盛んに報道されているが、これは必ずしも正確ではない。家畜の病気のほとんどは、人にも感染する。人が感染する頻度や症状は様々であるが、感染しないということは、まずあり得ない。
 口蹄疫(foot-and-mouth disease)についても、人への感染例が知られている。それによると、人の口蹄疫とも言える「手足口病(hand, foot and mouth disease:HFMD)」(口蹄疫とは、全く別のウイルスによる人の病気)と同じような症状が見られるとのことで、臨床症状だけでは、区別することができないと言う。

 手足口病は、主に子どもの病気であるが、大人が感染しないということはなく、ただ感染しても、症状がはっきりしないので、手足口病と診断されないだけのことである。
 手足口病は、日本限らず、中国などアジア各国で、毎年春から夏にかけて、広く流行している。今年も、中国での流行が伝えられているし、日本各地でも流行している。


----------
「口蹄疫は人に感染するか」
【人獣共通感染症連続講座 第99回】
http://www.primate.or.jp/PF/yamanouchi/99.html

----------
3月から急増「手足口病」ご用心、重症化の恐れ
【2010年5月17日 読売新聞】

 主に乳幼児の手や足、口内の粘膜に水疱(すいほう)性の発疹(ほっしん)ができる「手足口病」の患者が、3月から急増している。
 全国約3000の小児科医療機関が国立感染症研究所に報告している患者数は、8週連続で、同じ手法で調査を始めた2000年以降で同時期の最多となった。5月2日までの1週間は、1機関当たり0・84人で、昨年同期の約8倍に上った。
 手足口病は、大半は軽症で済むが、今年は重症化の恐れがある「EV71」という型のウイルスが報告の8割を占めている。髄膜炎などの合併症を引き起こすことがあり、感染研は「激しい頭痛や高熱がある時は、すぐに医師の診察を受けてほしい」と呼び掛けている。

----------
「中国における手足口病の流行-CDC情報」
【2010年05月14日 FORTH】
http://www.forth.go.jp/01_topics/2010/0514.html

現状についての情報
 手足口病は乳児、小児によくみられるウイルス疾患ですが、大人にも感染する可能性があります。2010年初頭から、中国では手足口病症例の増加が報告されてきました。3月には77,000例の罹患症例と40例の死亡例が中国保健省に報告されています。
 中国では、HFMDの流行は春、夏に規則的に起こります。これからの月々で報告症例数は増え続けることが考えられます。
 他のアジア地域の国々でもHFMD症例について報告があります。アジア諸国に旅行する人は、どの国であっても、HFMDに感染するリスクを減らすように注意をしなければなりません。

旅行者に対する助言
 HFMDは世界中で普通にみられるような種類のウイルスによって生じます。この疾患はとても感染性が強く、咳やくしゃみで生じる飛沫、唾液、水疱の内容液、便といった、感染した人の体液と接触することで拡大します。
 旅行者は健康を保つための衛生手段をとることによって、HFMDから身を守る事が可能です。もし、あなたがHFMDの報告がある地域に旅行するのなら、健康を保つために、以下の助言に従うことをお願いします。

1. 石ケンと水で自分の手をいつも洗うようにしてください。特に食事前、咳やくしゃみのあと、トイレに行った後には洗うようにしてください。もし石ケンや水が使えないようなら、アルコールを主成分とした手の消毒用のゲル(少なくとも60%のアルコールを含有したもの)を使用してください。必要な場合に手指消毒用アルコールゲルが確実に使用できるように、旅行カバンの中に入れておくことを考えてください。
2. フォーク、スプーン、コップなどの台所用品は複数の人で共用しないようにしてください。
3. HFMDになった人には濃厚接触しないようにしてください。
 旅行している小児が上記の推奨事項を守れるように大人は助けてあげなければなりません。乳児、小児、テイーネージャーはHFMDに大人よりもかかりやすい傾向があります。

HFMDに罹患した人には、以下のような症状がよくみられます。

1. 発熱、食欲不振、全身倦怠感、咽頭痛
2. 通常、舌、歯肉、頬の内側にみられる口内炎
3. 通常水疱をともなう皮膚の発赤。この発赤は典型例では手掌、足底、臀部にみられます。
 ほとんどのHFMDは軽症で、医学的な処置は必要とせず、合併症なく改善します。しかし、非常にまれにHFMDは重篤な合併症を起こす事があり、これには脳の腫脹(脳炎)などがみられます。
 HFMDを予防できるワクチンはありません。HFMDのために病気になった人には、熱に対して対処するといったような、対症治療を行う以外特別な治療はありません。

 平成15年~平成19年の合計特殊出生率(ベイズ推定値)を市区町村別にみると、鹿児島県伊仙町が2.42で最も高く、次いで鹿児島県天城町(2.18)、鹿児島県徳之島町(2.18)となっている。これらは、今話題の徳之島の三つの町である。

 全国の約6割の市町村において、合計特殊出生率が1.3以上1.6未満であることを考えると、徳之島の各町の合計特殊出生率の高さは驚異的である。
 このことから、徳之島を子育ての超先進地域と賞し、「日本の出生率が徳之島並みに上昇すれば、日本の少子化問題は解決する」と伝える新聞もあるが、事実は大きく異なる。

 そもそも合計特殊出生率は、15歳から49歳までの女性の5歳階級別出生率(年率)の5倍を合計して算出するものであり、どの年齢階級の女性の人数も同じと仮定した上で算出される計算上の出生率である。
 従って、15歳から49歳までの女性人口が少ない市町村では、見かけ上、合計特殊出生数が高くなる傾向がある。徳之島に限らず、離島や僻地で合計特殊出生率が高いのは、子どもが多いからと言うよりは、若い女性が少ないからと考えた方が良い。

 ちなみに、合計特殊出生率が日本一高い、鹿児島県伊仙町(人口6,727人)の場合、5歳ごとの年齢階級別の人口(平成20年)は以下のとおりである。

        総数  男  女
0歳(再掲)  64   25   39
0~4歳    303  146  157
5~9歳    314  178  136
10~14歳  320  166  154
15~19歳  349  171  178
20~24歳  81   50   31
25~29歳  198  102  96
30~34歳  232  120  112
35~39歳  230  112  118

40~44歳  297  154  143
45~49歳  529  298  231
50~54歳  563  303  260
55~59歳  528  308  220
60~64歳  367  186  181
65~69歳  396  192  204
70~74歳  552  246  306
75~79歳  626  281  345
80~84歳  436  166  270
85~89歳  222  73  149
90~94歳  131  34  97
95~99歳  42   5  37
100歳以上  11   3  8
 総数    6,727  3,294  3,433
$雪国に暮らす医系技官の独り言

 過去20年近く、出生数は毎年60~70人で推移しているが、20歳代、30歳代の人口は他の年代に比べて非常に少ない。特に20代前半の女性は、極端に少なく、21~23歳は、それぞれ3人ずつ、合わせて9人しか伊仙町にはいない。
 この時期、特に出生数が少なかった訳ではなく、むしろ今よりも多かったが、ほとんどの人が島を去ってしまったのである。

 大学や大企業のない徳之島では、高校を卒業した若者の多くは島を去り、鹿児島や福岡、大阪、京都、東京といった都会へ、進学や就職のために移り住む。島に残るのは、子どもが出来てしまって、島を去ることができない人などに限られる。

 かつて、子どもを産まない女性は壊れた機械と一緒だと言って、物議を醸した首相がいたが、徳之島では子どもを産まない女性が島を去り、子どもを産んだ女性が島に残った結果として、合計特殊出生率が高くなっているのである。
 一方、都会には若くて、働く意欲と能力のある人が全国から集まってくる。男女を問わず、仕事にやりがいを感じるような人達は、結婚や出産・育児よりも、仕事や研究に精を出していることが多い。

 元気な若者、特に若い女性が集まる都会では、必然的に合計特殊出生率が低くなり、若者のいない町、特に若い女性のいない町では、結果として、合計特殊出生率が高くなってしまうのである。
 「離島の出生率が高いのは、人間こそが最も大切な資源だという意識が特に強く、地域全体で子供を大切にする仕組みが整っているから」などという理由からではない。

 もしも、将来、日本の合計特殊出生率が今の徳之島並みに上昇したとしたら、それは、多分、若い日本人、特に若い女性が仕事を求めて、海外(おそらく中国)へ去ってしまった結果ということであろう。
 若い日本人の男女が仕事を求めて、中国へ出稼ぎに行くという小説のような話が現実のものとなった場合である。

 そんな人達も、30歳を過ぎて、事業に失敗したり、リストラされたりして、夢破れると田舎に戻り、さらに、60歳を過ぎて、定年を迎えると故郷に帰ってきたりするのである。
 その結果、田舎は、ますます高齢化が進む、失業者が増えるという悪循環に陥る。

----------
徳之島と日本の未来
【2010/5/13 日本経済新聞】

 今話題の鹿児島県徳之島は、これからの日本の経済社会を考えるうえでのヒントに満ちた島である。
 まず、徳之島の姿は人口減少、高齢化社会日本の未来を映し出している。徳之島を構成する徳之島、天城、伊仙各町を合計した人口は約2万6千人(2009年10月現在)であり、ここ15年間で約25%も減少している。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計(06年、出生・死亡とも中位)では、日本の総人口は05年から40年の35年間で約25%減少すると見込まれている。徳之島は、日本がこれからの35年間で目にすることになる人口減少を、これまでの15年間で経験したことになる。
 徳之島では高齢化も進んでおり、3町合わせた老年人口比率は30.6%である。前述の人口推計によると、日本の老年人口比率は25年に30.5%になる。徳之島は15年後の日本の高齢社会の姿を先取りしているのである。
 一方で、徳之島は子育てという点では、超先進地域である。市町村別の合計特殊出生率のランキングをみると(03~07年)、トップが伊仙町、第2位が天城町、第3位が徳之島町であり、徳之島の3町がトップスリーを独占している。伊仙町の出生率(2.42)は、最下位の東京都目黒区(0.74)の3倍以上である。日本の出生率が徳之島並みに上昇すれば、日本の少子化問題は解決する。
 日本では一般に離島地域の出生率は高い。前述の出生率のランキングでも、上位30市町村のうち実に25自治体が離島に位置している(沖縄本島を含む)。
 離島の出生率が高いのは、人間こそが最も大切な資源だという意識が特に強く、地域全体で子供を大切にする仕組みが整っているからであろう。例えば、徳之島が属する奄美群島では「子供は宝」という考え方が根強く、理想的な子供の数を4人以上とする住民が多いという。
 現代の都市部において離島並みの地域支援を期待するのは難しい。しかし、日本全体が離島のように「人間が最重要の資源」という意識を持ち、社会全体で子育てを支援する体制を整えていくことは可能なのではないか。
 徳之島の姿は、人口減少・高齢化という日本の将来の姿を先行的に示すとともに、日本が今後取り組むべき少子化対策のお手本となっているのである。