徳之島の合計特殊出生率が高い理由 | 臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言

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 平成15年~平成19年の合計特殊出生率(ベイズ推定値)を市区町村別にみると、鹿児島県伊仙町が2.42で最も高く、次いで鹿児島県天城町(2.18)、鹿児島県徳之島町(2.18)となっている。これらは、今話題の徳之島の三つの町である。

 全国の約6割の市町村において、合計特殊出生率が1.3以上1.6未満であることを考えると、徳之島の各町の合計特殊出生率の高さは驚異的である。
 このことから、徳之島を子育ての超先進地域と賞し、「日本の出生率が徳之島並みに上昇すれば、日本の少子化問題は解決する」と伝える新聞もあるが、事実は大きく異なる。

 そもそも合計特殊出生率は、15歳から49歳までの女性の5歳階級別出生率(年率)の5倍を合計して算出するものであり、どの年齢階級の女性の人数も同じと仮定した上で算出される計算上の出生率である。
 従って、15歳から49歳までの女性人口が少ない市町村では、見かけ上、合計特殊出生数が高くなる傾向がある。徳之島に限らず、離島や僻地で合計特殊出生率が高いのは、子どもが多いからと言うよりは、若い女性が少ないからと考えた方が良い。

 ちなみに、合計特殊出生率が日本一高い、鹿児島県伊仙町(人口6,727人)の場合、5歳ごとの年齢階級別の人口(平成20年)は以下のとおりである。

        総数  男  女
0歳(再掲)  64   25   39
0~4歳    303  146  157
5~9歳    314  178  136
10~14歳  320  166  154
15~19歳  349  171  178
20~24歳  81   50   31
25~29歳  198  102  96
30~34歳  232  120  112
35~39歳  230  112  118

40~44歳  297  154  143
45~49歳  529  298  231
50~54歳  563  303  260
55~59歳  528  308  220
60~64歳  367  186  181
65~69歳  396  192  204
70~74歳  552  246  306
75~79歳  626  281  345
80~84歳  436  166  270
85~89歳  222  73  149
90~94歳  131  34  97
95~99歳  42   5  37
100歳以上  11   3  8
 総数    6,727  3,294  3,433
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 過去20年近く、出生数は毎年60~70人で推移しているが、20歳代、30歳代の人口は他の年代に比べて非常に少ない。特に20代前半の女性は、極端に少なく、21~23歳は、それぞれ3人ずつ、合わせて9人しか伊仙町にはいない。
 この時期、特に出生数が少なかった訳ではなく、むしろ今よりも多かったが、ほとんどの人が島を去ってしまったのである。

 大学や大企業のない徳之島では、高校を卒業した若者の多くは島を去り、鹿児島や福岡、大阪、京都、東京といった都会へ、進学や就職のために移り住む。島に残るのは、子どもが出来てしまって、島を去ることができない人などに限られる。

 かつて、子どもを産まない女性は壊れた機械と一緒だと言って、物議を醸した首相がいたが、徳之島では子どもを産まない女性が島を去り、子どもを産んだ女性が島に残った結果として、合計特殊出生率が高くなっているのである。
 一方、都会には若くて、働く意欲と能力のある人が全国から集まってくる。男女を問わず、仕事にやりがいを感じるような人達は、結婚や出産・育児よりも、仕事や研究に精を出していることが多い。

 元気な若者、特に若い女性が集まる都会では、必然的に合計特殊出生率が低くなり、若者のいない町、特に若い女性のいない町では、結果として、合計特殊出生率が高くなってしまうのである。
 「離島の出生率が高いのは、人間こそが最も大切な資源だという意識が特に強く、地域全体で子供を大切にする仕組みが整っているから」などという理由からではない。

 もしも、将来、日本の合計特殊出生率が今の徳之島並みに上昇したとしたら、それは、多分、若い日本人、特に若い女性が仕事を求めて、海外(おそらく中国)へ去ってしまった結果ということであろう。
 若い日本人の男女が仕事を求めて、中国へ出稼ぎに行くという小説のような話が現実のものとなった場合である。

 そんな人達も、30歳を過ぎて、事業に失敗したり、リストラされたりして、夢破れると田舎に戻り、さらに、60歳を過ぎて、定年を迎えると故郷に帰ってきたりするのである。
 その結果、田舎は、ますます高齢化が進む、失業者が増えるという悪循環に陥る。

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徳之島と日本の未来
【2010/5/13 日本経済新聞】

 今話題の鹿児島県徳之島は、これからの日本の経済社会を考えるうえでのヒントに満ちた島である。
 まず、徳之島の姿は人口減少、高齢化社会日本の未来を映し出している。徳之島を構成する徳之島、天城、伊仙各町を合計した人口は約2万6千人(2009年10月現在)であり、ここ15年間で約25%も減少している。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計(06年、出生・死亡とも中位)では、日本の総人口は05年から40年の35年間で約25%減少すると見込まれている。徳之島は、日本がこれからの35年間で目にすることになる人口減少を、これまでの15年間で経験したことになる。
 徳之島では高齢化も進んでおり、3町合わせた老年人口比率は30.6%である。前述の人口推計によると、日本の老年人口比率は25年に30.5%になる。徳之島は15年後の日本の高齢社会の姿を先取りしているのである。
 一方で、徳之島は子育てという点では、超先進地域である。市町村別の合計特殊出生率のランキングをみると(03~07年)、トップが伊仙町、第2位が天城町、第3位が徳之島町であり、徳之島の3町がトップスリーを独占している。伊仙町の出生率(2.42)は、最下位の東京都目黒区(0.74)の3倍以上である。日本の出生率が徳之島並みに上昇すれば、日本の少子化問題は解決する。
 日本では一般に離島地域の出生率は高い。前述の出生率のランキングでも、上位30市町村のうち実に25自治体が離島に位置している(沖縄本島を含む)。
 離島の出生率が高いのは、人間こそが最も大切な資源だという意識が特に強く、地域全体で子供を大切にする仕組みが整っているからであろう。例えば、徳之島が属する奄美群島では「子供は宝」という考え方が根強く、理想的な子供の数を4人以上とする住民が多いという。
 現代の都市部において離島並みの地域支援を期待するのは難しい。しかし、日本全体が離島のように「人間が最重要の資源」という意識を持ち、社会全体で子育てを支援する体制を整えていくことは可能なのではないか。
 徳之島の姿は、人口減少・高齢化という日本の将来の姿を先行的に示すとともに、日本が今後取り組むべき少子化対策のお手本となっているのである。

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