船玉神社 (住吉大社 境内摂社)


摂津国住吉郡
大阪市住吉区住吉2-9-89(住吉大社境内)
(住吉大社 有料P利用200円/1h)

■延喜式神名帳
船玉神社の比定社

■祭神
天鳥船命
猿田彦命


元々は住吉大社の第四本宮(神功皇后を祀る)の前に鎮座していた境内社。現在は瑞垣外のちょっと分かりづらいところに鎮座しています。
◎社名通り「船玉(船霊)」を祀る社と解されますが、事はそう簡単でもなく少々複雑な背景があります。
現在のご祭神は天鳥船命と猿田彦命。「天鳥船」とは天孫が降臨する際の乗り物であり、これを神格化したものと考えられます。イザナギ・イザナミ神の神生みの段で最初に現れた不具を持った蛭子を流す際にも、この乗り物が使われています。一方、猿田彦神は「道開きの神」とされます。船そのものの神霊であるのか、その船の航路案内とその守護神であるのか、いずれも該当するように思えます。神名帳では一柱であり、二柱のうちのいずれかというのが自然なところ。
◎ところが「住吉大社神代記」に「船玉神 今謂ふ 齋祀るは紀国の紀氏の神なり 志麻神 靜火神 伊達神の本社なり」とあります。これは紀伊国名草郡の志磨神社靜火神社伊達神社に対応するもの(志磨神社にそのことを伺うと怒られ追い返された)。また造船技術を持って仕えていた船木氏の祖神、大田田命が三艘の船を造ったとあります。
◎船木氏は伊勢に大神が鎮まるまで倭姫命を支えた氏族ですが、この船木氏も紀氏の系譜。また住吉大社社家の津守氏の祖である田裳見宿禰も母は紀氏。そして神功皇后の右腕であった武内宿禰も母は紀氏。
つまりあまり関連が薄そうな三神が宛てられたのは、紀氏の関与であったと考えて間違いないかと思います。ちなみに伊達神とは五十猛神のことであり、紀氏が紀国に入植した際に反発する在地民を支配するために取り込んだもの。
◎ご祭神については、「住吉大社松葉記」には住吉大神荒魂であるとあります。これは紀に「和魂は王(神功皇后)を守り、荒魂は軍船を導く」とあるのを受けてのもの。案外、本来のご祭神はこの説が正しいのかもしれません。
他に「神名帳考証」は衝立船戸神としています

*写真は2018年11月と2022年11月撮影のものとが混在しています。



菱垣船や帆走船、飛行機までも描かれる扉絵。


*誤字・脱字・誤記等無きよう努めますが、もし発見されました際はご指摘頂けますとさいわいです。