たまらなく孤独で、熱い街 -97ページ目

『酸素男』 スティーヴ・ヤーブロウ

酸素男 (ハヤカワ文庫NV)

酸素男
著者:スティーヴ・ヤーブロウ

訳者・後書:松下 祥子

(ハヤカワ文庫NV)

初版:2000年10月31日

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1999年の作。

なんという悲しい物語なのだろうか。

今もなお人種差別が(意識の上だけでなく)残る、アメリカ深南部。

貧しい白人である主人公と妹は両親が亡くなった後も実家から出ることなく一緒に暮らしているが、妹は兄を毛嫌いするほどに避けている。

兄は大規模なナマズ養殖場で夜中に酸素の調整をし、ナマズが酸欠にならないようにしているが給料は黒人とほとんど変わらないくらい安く、むしろ経営者(むろん白人)の言いなりのままで、黒人労働者との板挟みに苦しむ。

二十数年前、兄妹はやはり貧しかったが学費の援助を受けて裕福な白人の子女が通う私立高校に入り、兄はフットボールで頭角を現し、妹にも恋人ができて輝ける青春時代だったはずなのに、何が起きてしまったのか。

タイトルでかなり損をしているんじゃないかなと、原題を見たら似たようなものか。


『九月の恋と出会うまで』 松尾 由美

九月の恋と出会うまで (新潮文庫)

九月の恋と出会うまで
著者:松尾 由美

(新潮文庫)

初版:2009年9月1日

(2007年2月に新潮社より刊行)

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『バルーン・タウンの殺人』は今ひとつの印象でしたが、なんとなく手に取ってなんとなく購入。

序盤はやっぱり外したかと思いましたが、中盤からはなかなか。

歴史を変えた(かもしれない)としても、それで終わりではなく確定させないとダメ(かもしれない)というのは斬新でした。

ラストは思わず涙腺が緩んでしまった。

やられたぜ。


『アンドロイドの夢の羊』 ジョン・スコルジー

アンドロイドの夢の羊 (ハヤカワ文庫SF)

アンドロイドの夢の羊
著者:ジョン・スコルジー

訳者・後書:内田 昌之

(ハヤカワ文庫SF)

初版:2012年10月15日

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2006年の作。

タイトルは当然ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』から来ているが、オマージュと言うほどでもないか。

『老人と宇宙』でも感じたが、ツボを押さえている感じで好感が持てます。

最初のエピソードから読者をいかに楽しませるかに気を配っているようで、あれよあれよと引きずり込まれてしまいました。

ラストは毀誉褒貶がありそうですが。

もっとユーモアに徹した作品もあるようで、翻訳されるのが楽しみです。


『完全なる証明~100万ドルを拒否した天才数学者~』 マーシャ・ガッセン

完全なる証明―100万ドルを拒否した天才数学者 (文春文庫)

完全なる証明―100万ドルを拒否した天才数学者
著者:マーシャ・ガッセン

訳者・後書:青木 薫

解説:福岡 伸一

(文春文庫)

初版:2012年4月10日

(2009年11月に文藝春秋より刊行)

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2009年の作。

100万ドルの懸賞金がかかった「ポアンカレ予想」。

その証明をインターネット上に公開したロシアの数学者、グリゴーリー・ペレルマン。

だが彼はフィールズ賞を辞退し、クレイ研究所が用意した100万ドルも辞退し数学からも離れて隠遁生活を送っているらしい、なぜ?

大崎善生の『将棋の子』という本のなかで「将棋は与えるのみで何も奪わない」という一文がありましたが、数学も違わないと思いたいけど周りで魑魅魍魎がうようよする世界は耐え難かったのだろうか。

母親の羊水の中でひたすら数学に取り組んでいたかったのかい。

ところで「古典的ではあるものの、長い間証明されていない重要な問題」の残り六つはなんだろ。

ウィキをみたら「P≠NP予想」「ホッジ予想」「リーマン予想」「ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題」「ナビエ-ストークス方程式」「バーチ・ウィンナートン=ダイアー予想」だと。

どーせ問題を見てもチンプンカンプンだけどね。



『「そして誰もいなくなった」殺人事件』 イヴ・ジャックマール&ジャン=ミシェル・セネカル

『そして誰もいなくなった』殺人事件

著者:イヴ・ジャックマール、ジャン=ミシェル・セネカル

訳者・解説:矢野 浩三郎

(集英社文庫)

初版:1983年9月25日

(1981年8月に集英社より『11人目のインデアン』にて刊行)

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1977年の作。

『そして誰もいなくなった』の舞台公演は上々の評判と客の入りだったが、大事件が起きてしまう。

事件の真相を追うパリ警視庁の警視と老舞台俳優だったが。

クリスティの唯一通して読んだ本がネタということで期待したが、もはや誰が誰だか思い出せない状態なので序盤はしんどかったけど、事件が起きてからは割とスッキリ読めた。

色々とクリスティネタを仕込んであるとは思うのだが分からず。

そして犯人は「あの」ネタか、と思いきや・・・。

ラストの解決の仕方はどうなんだろうねえ。



『パヴァーヌ』 キース・ロバーツ

パヴァーヌ (ちくま文庫)

パヴァーヌ
著者:キース・ロバーツ

訳者・後書:越智 道雄

解説:大野 万紀

(ちくま文庫)

初版:2012年10月10日

(1987年6月にサンリオSF文庫より刊行)

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「レディ・マーガレット」

「信号手」

「白い船」

「ジョン修道士」

「雲の上の人々」

「コーフ・ゲートの城」

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1968年の作品。

長編かと思ったら連作短編。

カソリック教会の支配が続き、技術の進歩が止まってしまった世界。

舞台は英国南部。

ここに念入りに描かれる路上蒸気車や信号塔、印刷技術のなんという魅力的なことか。

決して読みやすいとは言えませんが、十分に堪能させていただきました。

ただ、ラストにチラッとでてくる原子炉やホバークラフトは実用化には早すぎるのではないかと思うが。

『独創短編シリーズ 野﨑まど劇場』 野﨑 まど

独創短編シリーズ 野﨑まど劇場 (電撃文庫)

独創短編シリーズ 野﨑まど劇場
著者・後書:野﨑 まど

(電撃文庫)

初版:2012年11月10日

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「Gunfight at the Deadman city「検死官 ゾーイ・フェニックス」「第60期 王座戦五番勝負 第3局」「森のおんがく団」「土の声」「神の国」「バスジャック」「幻想大蒸気村奇譚」「MST48」「魔王」「デザインベイベ」「苛烈、ラーメン戦争」「苛烈、ラーメン戦争~企業覇道編~」「西山田組若頭抗争記録」「爆鷹!TKGR」「王妃 マリー・レクザンスカ」「暗黒への招待」「妖精電撃作戦」「第二十回落雷小説大賞 選評」「ビームサーベル航海記」「魔法少料理屋女将 駒乃美すゞ」「首狩島容疑者十七万人殺人事件」「TP(ティーパーティ)対称性の乱れ」「ライオンガールズ」

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内容についてはノーコメントだけど、誰でも一つは笑えるのがあるかもしれないし、一つは腹が立つのがあるかもしれない。

作者の頭の中は少しはスッキリできたのかな。




『家守綺譚』 梨木 香歩

家守綺譚 (新潮文庫)

家守綺譚
著者:梨木 香歩

解説:吉田 伸子

(新潮文庫)

初版:2006年10月1日

(2004年1月に新潮社より刊行)

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「サルスベリ」「都わすれ」「ヒツジグサ」「ダァリヤ」「ドクダミ」「カラスウリ」「竹の花」「白木蓮(はくもくれん)」「木槿(むくげ)」「ツリガネニンジン」「南蛮ギセル」「紅葉」「葛(くず)」「萩(はぎ)」「ススキ」「ホトトギス」「野菊」「ネズ」「サザンカ」「リュウノヒゲ」「檸檬(レモン)」「南天」「ふきのとう」「セツブンソウ」「貝母(ばいも)」「山椒(さんしょう)」「桜」「葡萄(ぶどう)」

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100年ほど昔の、あり得たかもしれない日本の風景が私小説風によみがえる。

どこか懐かしくほっとするのだけれど、いいとこ取りと言うか醜いところをわざと避けていると言うか。

『となりのトトロ』でも感じたけど、「嘘」なら嘘に徹してくれればいいが中途半端な「嘘くささ」が目について鼻について。

『虚構内存在~筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉~』 藤田 直哉

虚構内存在――筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉

虚構内存在――筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉
著者:藤田 直哉

(作品社)

初版:2013年2月10日

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著者は当然筒井康隆の全作を読んだ上でテーマに合う作品を選んでいるのだろうけど、言及される作品が少なすぎて物足りない部分もある。

それでものめり込んで読んだり、いささか引いて読んだりで全体的には飽きさせない。

書かれた時期が同じ頃であろう『偽文士日碌』で、筒井康隆がこの本に対してのコメントがなかったのが残念。


『虚航船団』 筒井 康隆

虚航船団 (新潮文庫)

虚航船団
著者:筒井 康隆

解説:岡庭 昇

(新潮文庫)

初版:1992年8月25日

(1984年5月に新潮社より刊行)

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足掛け何十年越しかにようやく読めた。

今回も1ヶ月以上かかったし、実に手ごわかった。

その分読み終えた時の満足度が高ければいいのだが、私にとっては疲れただけ。

第一章は宇宙船に乗り込んでいる狂った文房具の数々。

第二章は恐らく作者が一番力が入ったであろう、イタチの惑星の歴史。

地球の歴史のパロディだろうけど、延々と続くような感じで何度も挫折しそうに。

第三章はほぼ壊滅させられたイタチと文房具との戦争。

途中で作者が顔をだしたりしてメタ的な展開も。

そしてふりだしへ戻るかのようなラスト一行。

解説を読んでも空しさを埋めてはくれないヘビーな物語でした。