たまらなく孤独で、熱い街 -353ページ目

『エンジェル・エコー』 山田正紀

山田 正紀
エンジェル・エコー
(新潮文庫)
初版:1987年12月20日

山田正紀はデビューの頃から「想像できないことを想像する」という熱い思いがあったようで、18年前のこの作品にもそれは遺憾なく発揮される。

それが必ずしも作品として成功したとは言い難いが、熱き思いは伝わってくる。


ビッグ・バン以前から存在していた「超空間」。

それを利権のために利用しようとする巨大コングロマリット。

その会社のスーパー・イメージガール、香青玉。

培養槽で生まれたヴァット・チャイルドの少年。

ドライ・マティニ。超空間動体。有人制御突入体。時空共鳴振動増幅子。エトセトラ、エトセトラ。


香青玉とともに超空間に突入した少年は、自分の記憶と引き換えに香青玉を帰還させようとする。

熱いじゃないか。


山田正紀は、またガチガチのSFを書いてくれないだろうか・・・・・・。

『一人の男が飛行機から飛び降りる』 バリー・ユアグロー

一人の男が飛行機から飛び降りる バリー ユアグロー, Barry Yourgrau, 柴田 元幸
一人の男が飛行機から飛び降りる
(新潮文庫)
初版:1999年9月1日

 

約400ページに149編。

ほとんどが1~2ページの超短編集。


星新一の初期ショートショートのような「オチ」があるわけでもなく、飄々と書かれている。

「シュール」と言っていいのか。

たぶん、なんらかの比喩や暗喩が入っているのもあると思うけど、疎いからなー。


ちょっと時間が空いた時に、適当なページを開いて読むのが楽しむコツかな。

ズ~ッと読んでると疲れそうだ^^

『飛蝗(バッタ)の農場』 ジェレミー・ドロンフィールド

飛蝗の農場 ジェレミー ドロンフィールド, Jeremy Dronfield, 越前 敏弥
飛蝗の農場
(創元推理文庫)
初版:2002年3月22日



2003年版の『このミステリーがすごい』(宝島社)海外部門でトップに選ばれたので、つい買ってしまいましたが積読になっていました。


読んでいる時は面白いと感じました。
スカッとする面白さではなく、どこかイライラするような隔靴掻痒な面白さがあって。
ミステリというよりもサイコスリラーの趣きがあります。


でもミステリ的な謎も存在します。キャロルの過去、スティーヴンの過去、メッセージは誰が?。
おかしな点もあります。偶然過ぎる出会い、突然現れるメッセージ、「どこで見てるねん」と思えるような追跡者の存在。


メインストーリーとそれを分断するサブストーリー。
でも誰のことを書いているのかはすぐわかるので、サブストーリーによって頭が混乱することはない。
混乱するのはある人物が登場してからです。

難点としては、登場人物は読者に謎を提示するために動いているだけであり、そこには当然感情移入の余地はありません。
感情移入を拒否したのか、小説の構造上感情移入できないようになったのか。
次作にも期待したいところだが、おそらく翻訳されても読まないだろうな。

『氷の天使』 キャロル・オコンネル

氷の天使 キャロル オコンネル, Carol O’Connell, 務台 夏子
氷の天使
(創元推理文庫)
初版:2001年5月25日




お待たせしました(誰が?)『氷の天使』でございます。


キャシー・マロリー。
ニューヨーク市警巡査部長。もとストリート・チルドレン。コンピュータ(特にハッキング)に天賦の才あり。しかも一度見たら生涯忘れられないほどの美貌(!)。しかもしかも怒り以外の感情は欠落している。
東京創元社さん、カバーに女性の顔を描くのはやめて下さい。私が持つマロリーのイメージは、こんなんじゃありませんから(^^


メインは猟奇的連続老女殺人事件だけど、シリーズ第1作のせいかマロリーに重心が置かれている。
巻頭そうそう死体として発見されるマロリーの養父、ルイ・マーコヴィッツ刑事。
既に故人となっているマーコヴィッツ夫人ヘレン(マロリーに対する愛情の深さ!)。
マロリーを囲む刑事部屋の仲間たち。
彼らを通して露わになるマロリーの孤高さ。
マーコヴィッツのチェス仲間たち。
遺言を預かる「直感記憶」の天才、チャールズ・バトラー。
このマロリーの仲間たちはみなマロリーを愛している!
マロリーはそれに気がついているのか?


マロリーだけでも謎めいているというのに、事件そのものがまた錯綜している。
ニューヨークにありながら、周囲とはフェンスで隔絶された超高級住宅街。
知的で金持ちで人生をゲームのようにもてあましている人々。
彼らの上に突如降って沸いた連続殺人。
欠落感をたたえた容疑者たち。
等々奇妙な個性が入り乱れる登場人物。
そう、マロリーも含めて誰もがどこかしら壊れている。


本作は決して読み易くない。作者がまとめ切れていないのでなく、登場人物のありようが読むものに混乱と不安を与えるのだろう。それぞれが問題を(人生の重み?)を抱え、かろうじて日々を生きている。誰もが容疑者になる可能性を秘め、ただでさえ読みにくい物語に拍車をかける。


現在、4作目まで翻訳されています。

キャロル オコンネル, Carol O’Connell, 務台 夏子
アマンダの影
キャロル オコンネル, Carol O’Connell, 務台 夏子
死のオブジェ
キャロル オコンネル, Carol O’Connell, 務台 夏子
天使の帰郷

『天正マクベス』 山田正紀

天正マクベス―修道士シャグスペアの華麗なる冒険 山田 正紀
天正マクベス―修道士シャグスペアの華麗なる冒険
(原書房)
初版:2003年9月18日


 

シャグスペアって名前、怪しいよね。怪しいでしょ?

時代からして「あの人」だなとピンと来た人はたいしたものです。

ヒントは、直訳すると「震える槍」(^^

連作だけど、各話のタイトルを書くとわかっちゃうしな~。


織田信長の甥、信耀(のぶてる)とシャグスペアの冒険談。

密室あり、謀略あり、本能寺の変あり。

もっとも、シャグスペアはさほど活躍しませんがね。

織田信長本人もでてきませんし。


わたしゃ、歴史に疎いので(むしろ知識皆無)信耀という人が実在したのかも、シャグスペアが当時日本にいたのかもわかりませんが(100%架空だとは思うが)、それはそれとして山田正紀独特の臭み(失礼!)がさほど感じられないので読みやすく、時代劇が苦手なわたしでもス~ッと物語にはいれました。

(それがどうした、と言わないこと)

『飛車を追う』 篠鷹之

飛車を追う 篠 鷹之
飛車を追う
(健友館)
初版:2001年11月26日
 
 
 
「風-勝負の日々」
「飛車を追う」
「真剣師の橋」
「淋しい香車」
----------------------------------

囲碁の世界にも「真剣師」はいたと思うけど、将棋には「真剣師」がよく似合う。

いわば、賭け将棋で生計をたててる人ですな。

無頼?アウトロー?

さすがに、現在ではたまに賭け将棋をする人は居るかもしれませんが、「真剣師」はいないと思います。

特にネット将棋が隆盛で、街道場の経営が厳しい時のようですし。


コミックですと、少年少女向けが多いせいか、名人を目指すものが目につきますが、前に紹介した『風果つる街』 といい、小説では「真剣師」ものに面白いものが多い(そんなに読んでないけど・・・・・・)。


プロの底辺棋士、その弟子、真剣師、ヤクザ・・・・・・。

将棋とどう関わったかで人生がガラリと変わった人もいるでしょうし、将棋を通して笑う人泣く人、さまざまですが、なにがあっても将棋を嫌いにならないで欲しいものです。

※思い出のコミック(3) 『やけくそ天使』

やけくそ天使 (1) 吾妻 ひでお
やけくそ天使 (1)

 

 

 

 

かつて吾妻ひでおの名前すら知らなかった頃、『SFマガジン』の「新刊レヴュー」でこの本のことを知り、私の頭の中でピンと来るのがあったのか、必死で探した覚えがあります。

そしてようやく手に入れて読んだ途端にブッとびましたね。

しばらくしてから、なぜか吾妻ひでおブームが一時的に起きたけど、所詮マイナーな漫画家だけに新刊本を手に入れるのも大変でした。

今手元に本がないのですが、自由闊達に書かれていて、それが(一部の)読者にも共感を呼んだのでしょう。


しかし突然のブームで擦り切れてしまったのか、『SFマガジン』に『メチル・メタフィジーク』というのを連載した頃は、SFを意識しすぎたのか全然面白くなく、その後しらぬ間に休筆していた。復帰後も何冊か読んでみたが、『やけくそ天使』の頃の面白さには到底及ばない出来だった。SFや漫画に愛されなくなってしまったのか。


こんどこそ復活後の吾妻ひでおに期待してますが、書店に本が見当たりませんな~。


しまった・・・・・・。

長いと思って3回に分けたので、TBできない。

いや、できないことはないけどTBを3つというのも・・・・・・^^;

※思い出のコミック(2) 『凄ノ王』

凄ノ王 1 (1)永井 豪
凄ノ王 1 (1)


 

 

 

『凄ノ王』は79年7月から81年4月まで少年マガジンに連載され、作者は「ストーリーを最大限にスケールアップできたところで、未完のままで終わらせたい」という狙いが当初からあったようで、事実少年マガジンでは「凄ノ王」誕生とともに連載は唐突に終わる。

しかしながら、数年後に角川書店の雑誌に続きが始まり、単行本としても少年マガジン版を含めて『凄ノ王伝説』として7巻にまとまったが、これも未完のまま。

そして96年に「少年マガジン版」に「角川書店版の一部」と「オリジナル」をくっつけたものが、『凄ノ王・超完全完結版』として刊行されたが、とてもじゃないが満足できるエンディングではなかった。

『凄ノ王』の完結は夢と終わったのだった。


朱紗真悟は何の取柄もないような平凡な高校生。

美剣千草が作った「超能力クラブ」で雪代小百合と知り合う。

一方、同じ高校には瓜生麗を中心とする超能力グループがいた。

ある日、朱紗と雪代が裏山でデートをしていると、同じ高校の不良どもに襲われ、二人は暴行されるが、そこに助けに現れたのが瓜生麗グループ。

暴行を受けている間、朱紗は超能力が欲しいと願うのだが、いざ瓜生が超能力を封じたペンダントを与えようとすると、彼らを殺してしまうからいらないと叫ぶ。ここのところは泣けました。と同時に、ここの朱紗のセリフで『凄ノ王』に完全に引き込まれました。

少し長いが引用すると・・・

瓜生「朱紗、腕力ではお前は奴らには勝てん。だがお前には眠っている超能力がある」

朱紗「俺の持つ超念動とはどれほどのものなのだ。瓜生、あんたほどの力があるのか」

瓜生「ある。いや、私以上だ。朱紗真悟、君は超能力の巨人なのだよ」

朱紗「それならだめだ。俺はそのペンダントを持つ訳にはいかない」

瓜生「何故だ、朱紗」

朱紗「俺がもしそのペンダントを持ったなら、俺は奴らをひとり残らず殺してしまうからだ!」

その後、朱紗は「部団連合」やら「ノスフェラトウ(不死団)」などに訳もわからず狙われるが、彼らや瓜生麗、美剣千草の目的は一切わからなかった。

そして朱紗真悟の内部でも変身が起こる。

それはすなわち破滅へのカウントダウン。

※思い出のコミック(1) 『百億の昼と千億の夜』

 
光瀬 龍, 萩尾 望都
百億の昼と千億の夜
 
 
今回はとらさんに触発されて、昔なつかしいコミックスから3作品を。
どの本も私をワクワクさせてくれましたが、オールタイム・ベストとは縁がない作品ばかりで、いずれにせよ一般受けしないところがミソですね。
それにストーリーが破綻もなくきっちりとまとまっているとはお世辞にも言えない。
そこの混沌としているところも私にとって魅力的なのでしょう。
 
和田慎二が「SFマインドはSFというジャンルを愛しただけでは得られない。SFに愛された者だけが得られる特権である・・・」と何かに書いていたが、この3人はSFを愛しているのだろうか、SFに愛されたのだろうか。
 
このタイトルを見ただけで、夜空にまたたく幾千万の星々に思いを馳せない人はいないだろう(そんな訳ないか)。原作を読むのは途中で挫折したが、コミックスは何十回読み返したかわからない。
萩尾望都のSFは『スター・レッド』をはじめ、どれもグッドだが、作品の中でさりげなく書かれる散文詩みたいなものもなかなかいい。 
 
例えば、「・・・この人の心の中は/かなたからくる波にくだける/無限の星ばかりだ/なんて長い旅を/この人はして来たのだろう・・・」 (『スター・レッド』)などはどうだろう。
コミックスを読んでないとイメージがわかないか。
 
惑星開発委員会は「シ」の命により、この宇宙のあちらこちらに文明を発生させた。しかし、あらゆる文明は長続きせず、滅びへと向かう。
何故。
阿修羅(あしゅら)はその事に疑問を持つがゆえに帝釈天(たいしゃくてん)ら天上界と永年戦っていた・・・。
物語のスケールもだが、阿修羅が少女の姿をしているというところにも驚かされました。
途中「あれ?」と思うところや、光瀬龍作品によくみられるラスト近くでの白ける説明がこの本にもありますが、それを補って余りあるパワーがあります。
なかでも第5章で、出家したシッタータ(釈迦)が阿修羅と会い、そのあと弥勒(みろく)の像に出会うところ、第14章で、阿修羅が帝釈天と会うところは、しびれます。
 
56億7千万年後に救いをもたらすという弥勒とは一体何者なのでしょうか。
そして阿修羅は弥勒と会うことが出来るのでしょうか。
願いは叶うのでしょうか。
果てしない旅はいつか終わるのでしょうか。

『金魚屋古書店出納帳』(上、下) 芳崎せいむ

芳崎 せいむ
金魚屋古書店出納帳 上
(小学館・イッキコミックス)
初版:2005年2月1日
 
芳崎 せいむ
金魚屋古書店出納帳 上
(小学館・イッキコミックス)
初版:2005年2月1日

この作者の本は読んだ事がありませんでしたが、タイトルに惹かれて買ってしまいました。

コミックスの専門古書店で、しかもたいていの本が揃っているというのは、マニアでなくても垂涎の的ですね。

しかもしかも、地下にはどれだけの蔵書が眠っているのかわからない!

“セドリ”という、聞きなれない言葉も出てきましたが、なるほどこういう「職業」(?)も成り立つのかな。



物語は短編で、島村ジョーに恋した少女などがここを舞台に笑ったり悩んだり泣いたりします。

まあ、サクサク読めます。

でも、あとでパラパラと読み返したくなる魅力はありそうです。


となりに『金魚屋古書店(1)』というのもありましたが、新装開店したのかな?