たまらなく孤独で、熱い街 -349ページ目

『彼女が死んだ夜』 西澤保彦

彼女が死んだ夜 西澤保彦

彼女が死んだ夜

(角川文庫)

初版:2000年5月25日


 

 

西澤保彦も“チョーモンイン”シリーズでガッカリするまでは、けっこう読んだな。

 

通称タックこと匠千暁(たくみ・ちあき)。

ボアン先輩こと辺見祐輔(へんみ・ゆうすけ)。

クール・ビューティ、タカチこと高瀬千帆(たかせ・ちほ)。

ウサコこと羽迫由紀子(はさこ・ゆきこ)。

この4人がメイン。


シリーズものなのに出版社があちこちなのは笑えるが、今回の事件は『麦酒の家の冒険』の少し前で、匠千暁(タック)シリーズの第1作とみなしていいかもしれません(デビュー作の『解体諸因』は解説の法月綸太郎も書いているように、習作というかパイロット版でしょうから)。

これも“安楽椅子探偵”的なところが散見されるので、このシリーズはそれを試みているのかもしれない。
 


アメリカへ留学する予定の女性が、出発の前の晩に友人たちに送別会をひらいてもらい、それを終えて帰宅したら、なんと見知らぬ女性が家の中で倒れていた。

(途中経過省略)

そして全く思いもよらない犯人と○○。

この作者の読んだ本ではかなり上出来の部類です。

が、最後の一章は必要だったのだろうか。

解明されてスッキリした部分もありますが、逆に消化不良みたいになった部分もあります。

 

いや、オチにこだわっている訳ではないですがね。

もうすこし違う余韻が欲しかったですな。

『十字屋敷のピエロ』 東野圭吾

十字屋敷のピエロ (講談社文庫) 十字屋敷のピエロ
東野 圭吾
(講談社文庫)
初版:1992年2月15日 
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第1章を読み進めるのに苦労した。

いかにも作り物めいた作品世界に入れなかったから。

しかしながら、そこを過ぎれば非常に面白く読めました。

 

いつも思うのですが、私は推理しながら読んでいるようで、実は全然考えていないのではないかと。

千穂と同じようにはとても推理できなかった。

ただし最後のオチは蛇足ではないだろうか。後味が悪い。

【吉田アマ、奨励会入会試験初日】

本日、吉田アマの奨励会入会試験(初段)初日が行なわれ、2連勝でマジック1としました(5局指し3勝で合格)。

奨励会とはプロ棋士の養成期間です。

アマチュアの四~五段はないと、奨励会の6級にすらなれないと言われています。

奨励会の初段ともなると、どれほどの実力なんだ。


吉田さんの対局相手の奨励会員は公式戦扱いのため、自分の成績に直結。

手を抜く事はありえないどころか、入会試験で叩き潰そうと思うのは明白。

入会試験で失格にしてしまえば、自分のライバルが減るからだ。


しかし、それを上回ってしまう吉田さん。

瀬川さんのプロ入りはある意味ゴールかもしれませんが、吉田さんのプロ入りはあくまでも通過点に過ぎませんから、これからがますます楽しみです(外野から見ている分には)。

『魔球』 東野圭吾

魔球 (講談社文庫) 魔球
東野 圭吾
(講談社文庫)
初版:1991年6月15日 
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野球ミステリって余りないよね(この本がミステリといえるかどうか、わからないが)。
ストーリーも面白く、引き込まれて読み終えましたが、読後、余り印象に残らなかったのは何故だろうか。
ひょっとして、この作者の文体は透明すぎるのかな。つまり上手すぎて、頭の中に何も引っかからずに読めてしまうのかも。
 
高校野球。
爆弾騒ぎ。 
捕手の死。
誘拐騒ぎ。
投手の死。
そしてタイトルの『魔球』。

 
さて、これらを繋ぐ糸はどこにあるのか。 

推理してみましょう。
 

最後に残るのはある人物の「無念」さだろうか。

『どんどん橋、落ちた』 綾辻行人

どんどん橋、落ちた 綾辻 行人
どんどん橋、落ちた
(講談社ノベルス)
初版:2001年11月5日
 
 
 
「どんどん橋、落ちた」
「ぼうぼう森、燃えた」
「フェラーリは見ていた」
「伊園家の崩壊」
「意外な犯人」
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これ、何年か前に新書で買ったんだが、1編目を読んで引いてしまいました。
気を取り直して2編目を読んで、さらにどん引き。
今回、残りを読んでみましたが、なんだかなー。
綾辻行人というと、『十角館の殺人』は別格として、あと印象に残ってるのは『霧越邸殺人事件』くらいかな。
『暗黒館の殺人』はいまのところ、読む気はないし。

「この作品集は並べられた順番どおりにお読みください」とあったから、順番に読んだが、なにか仕掛けがあったのか?

それとも見過ごしたのか?

動物を虐待するガキが3編もでてきてうんざりだし、なによりも○○が○○だっちゅーのはゲッソリ。


『十角館の殺人』を嚆矢とした新本格ムーブメントも、トリックで唸らせてくれたのは数えるほどしかないような気がする。

そんなに読んでないけどね。

綾辻行人の作品も、当分読みたいという気にならないな。

あ、そうそう月館の殺人 上 (1) は読んでみたいですな。

『暗黒太陽の浮気娘』 シャーリン・マクラム

シャーリン・マクラム, 浅羽 莢子
暗黒太陽の浮気娘
(ミステリアス・プレス文庫)
初版:1989年7月15日
「現実とはSFに対処できない人間の支えである」
SF大会というのがある。 今もあるのかな?
私は参加したことはないが、コスチュームに凝ったり、イベントで盛り上がったり、マニアにとっては最高のお祭りらしい。
『暗黒太陽の浮気娘』という小説を書いた大学教授が、はからずもこのSF大会に来賓として招かれ、SFマニアどもの騒動に巻き込まれ、さらに殺人事件も起こる。
殺人事件が起きるまでの前半のSF大会の混乱ぶりや、大作家の傲慢ぶりが実に笑えるし、頭に書いた「現実とは」云々も皮肉たっぷり。
さらに、「スタートレック」などからの色々な引用があったりして、思わず「にやり」とすることも。
この『暗黒太陽の浮気娘』というタイトルはなんちゅーか、どっちつかずでもったいないよね。
SFファンにこそ読んでもらいたい気がする。
D&Dゲーム(ダンジョンズ&ドラゴンズゲーム、ロール・プレイングゲームみたいなもの)でオチをつけるところなんざ、この作者もなかなかやるねえ。

『銀河郵便は“愛”を運ぶ』 大原まり子

大原まり子

銀河郵便は“愛”を運ぶ

(徳間デュアル文庫)

初版:2000年10月31日


「郵便屋は“愛”を運ぶ」

「帰るの歌が聞こえてくるよ」

「ペテルギウスへ」

「ビッグ・マザーたち」

「ある恋愛事件」

「クラムジーがいっぱい」

「息子よ帰れ」

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大原まり子はほとんど読んでいませんが、これは面白かったですね。

作者が楽しんで書いていて、それが読者にも伝わってくるような感じ。


キャラクターがいいですね。

主人公のイル・コンシーヴド、人間。

男女どちらにも変化できるセクサロイドのクラムジー。

女性の人格を与えられている船のコンピュータ、マヤ。

しかも、3人(?)とも性格が屈折している。


まあ、性格はストーリーの味付けでしょうが、各話のトラブルぶりもなかなかのもの。

こういったものはスペース・オペラとは言わないのかな。

この《イル&クラムジー》シリーズはかなり人気がでたようで、シリーズとしてこの本を含めて4冊でているようです。

お盆も過ぎましたが、暑気払いにどうぞ。

サクサクと読めることは間違いありません。


《イル&クラムジー》シリーズ(他にもあるかも)

イル&クラムジー物語

郵便配達は三度ベルを鳴らす

やさしく殺して

『未来の恋の物語』

『赤い花束』 高橋留美子 

高橋留美子傑作集 赤い花束 高橋 留美子
高橋留美子傑作集 赤い花束
(小学館)
初版:2005年8月1日
 
 
 
 
「日帰りの夢」
「おやじグラフィティ」
「義理のバカンス」
「ヘルプ」
「赤い花束」
「パーマネント・ラブ」
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高橋留美子というと『うる星やつら』『めぞん一刻』『らんま1/2』『犬夜叉』『1ポンドの福音』・・・・。
短編は印象に残るのがないなー。
今回の6編も強烈なものはないし。
不老不死ものがあったっけ。

長編も短編も安心して読んでいられるけど、驚くような展開がないんだよなー。

それが物足りないといえば物足りないし、当たり外れがないということでもあるし。

『犬夜叉』は終わらせて、ガチガチのSFかミステリでも書いてくれないかな。

(前にも希望したような)

『夜のフロスト』 R・D・ウィングフィールド

夜のフロスト R・D・ウィングフィールド, 芹澤 恵
夜のフロスト
(創元推理文庫)
初版:2001年6月15日
 
 
 
かつて、「十津川警部の優しさにホロッときました」という、ある雑誌の読者の感想に「ケッ、ミステリは人情よりトリックだろ」と、ほざいた私ですが、考えてみたら『慟哭』(貫井徳郎)『名探偵に薔薇を』(城平京) では、トリックより人情にホロッときたんだよな。
 
このシリーズでも、チャランポランに見えるフロスト警部が時折垣間見せる人情味あふれたセリフにグッと来てしまう。
特に最初に読んだ『フロスト日和』 でのラスト近くのセリフには。
だけどこの分厚さに耐えるのも試練か。
巻を追うごとに厚みも増すし。
非常に面白く、ダレ場も少ないのだけど、長丁場を駆け抜けるのには知力体力の充実が必要だな。 
 
デントンの街には流感が流行り、デントン署も欠勤者が相次ぎ、かなり業務に支障を来たしているありさま。
そんななか、街には中傷の手紙がばらまかれ、連続老女切り裂き犯がばっこする。それでも数々の捜査を抱えたフロスト警部は新任のギルモア部長刑事を従えて、不眠不休で下品なジョークを連発して立ち向かう(大笑いしたのは1ヶ所だけだったが)。
今回は『フロスト日和』みたいなグッとくるシーンは無かったし、後味はいささか悪い。
 
話は脱線しますが、昔NHKで『警部マクロード』というTVムーヴィを放映していた頃がありました。
熱心に見ていた訳ではありませんが、その中の1作がとびきり面白かった。
タイトルも忘れ、内容もほとんど憶えてませんが。
うだるような暑い夏、署長が所用で出かけた後、マクロードがいる警察署に次々とトラブルが舞い込み、まるで『フロスト』の世界のよう。
トラブルも次第にエスカレートしていき収拾がつかなくなったが、なんとか治めて署員一同グッタリしている所へ署長が帰り、署内のグシャグシャな状態に絶句、だったかな。
とにかく、目が離せない面白さでした。
もう一度見たいものだ。

『毒入りチョコレート事件』 アントニイ・バークリー

毒入りチョコレート事件アントニイ・バークリー, 高橋 泰邦
毒入りチョコレート事件
(創元推理文庫)
初版:1971年10月22日
 
 
 
いやこりゃまいった。
こんなに面白いのなら、もっと前に読んでおくのだった。
なにしろ70年以上前の作品なので、ひどく読みにくく骨が折れるだろうという先入観があって、手を出すのをためらっていた。
読み出して気づいた事には、昔の本は活字がいささか小さいような。
版を重ねる時は、活字も変えて欲しいものだ。
 
これが書かれた当時は本格ミステリの黄金時代と呼ばれた頃だろうが、バークリーは一つの物的証拠に対して、名探偵が一つの見解を示すと、それが正解になってしまうというのはおかしいと皮肉を言っている。
こんなにも違う見解もあるのですよと、六人六様の推理を書いてみせた。
どうせ最後に指名される人が真犯人だろうけど、他の5人は誰を犯人に指名するのかと、途中の過程が楽しみであった。
物的証拠やアリバイの面で、真犯人に納得した訳ではないが、6通りもの推理を味あわせてくれれば言う事ありません。