ヴァージニア・ウルフは怖い!

前回フランソワ・モーリアック原作の『テレーズの罪』(原題は"Thérèse Desqueyroux"の解説で稀代の編集家松岡正剛の言葉=「怖い女」を紹介しましたが、歴史開闢以来、古今東西(男性にとって)女は怖い。松岡正剛氏に限らず、ゾラ、モーリアック、ヘンリー・ミラー、遠藤周作も同意見のようであります。探偵得意の吉本隆明の言葉を借りれば、男性というのは相手(女性)の「性」を特定できない、のだそうであります(汗。
Wikipedia:松岡正剛
せいごうちゃんねる
昨今のフェミニズムの潮流に乗って見直されて来た英国の作家がヴァージニア・ウルフ。彼女の著作『ダロウェイ夫人』にウルフ自身の歴史を重ねた映画が製作されました。

Wikipedia: ヴァージニア・ウルフ
二コール・キッドマンWikipedia: 映画「めぐりあう時間たち」(原題:The Hours)
1923年のロンドン郊外、『ダロウェイ夫人』をしたためる作家ヴァージニア・ウルフ。1951年のロサンゼルス、『ダロウェイ夫人』を愛読する主婦ローラ。そして、現在のニューヨーク、ダロウェイ夫人のような生き方をしているクラリッサ。別々の時代、別々の場所に生きる3人の女性の一日が交錯する、珠玉のドラマ。
特殊メイクで鼻の形を変え、本作で第75回アカデミー主演女優賞を受賞したニコール・キッドマンの名演は文句ないが、むしろ難しい役どころをこなしているのがジュリアン・ムーアとメリル・ストリープ。表には直接出てこないふたりの苦悩が、繊細な演技によって浮かび上がってくる。出会うことのない3人の女性のドラマは、詩のように美しい言葉が触媒となり、時代を自在にスライド。『ダロウェイ夫人』の物語はもちろん、口づけ、花などが三者三様に意味づけられて登場し、後半には、生と死というテーマがドラマチックに立ち現れてくる。すんなりと物語に感動できる作品と言うよりは、巧みな脚本と演出、上質な演技、衣装や美術を含めた映像の総合点でうならせる秀作だ。(斉藤博昭)
監督: スティーヴン・ダルトリー 原作: マイケル・カニンガム 脚色: デヴィッド・ヘア 音楽: フィリップ・グラス 出演: ニコール・キッドマン/ジュリアン・ムーア/メリル・ストリープ/エド・ハリス/トニ・コレット/クレア・デインズ
男女取り混ぜてのレビューは下記↓
☆ YUKIMURAHANAさん
5つ星のうち4.0 3人の女性の人生を3人の女優が演じる見事な作品
3人の女性の人生が時間を超えて、織りなされる作品です。バージニア・ウルフが素晴らしかった。
演じているのは、誰か・・・ご自分の目でお確かめ下さい。
☆ アマゾン99世さん
5つ星のうち4.0 月並みですが、良作です。
これはとてもよい作品です。各時代を取り巻く男女間の関係(社会的な地位も含めて)、そして愛情、自己表現の難しさ・・・
過去は女性こそ自己を押し殺し、耐えていたのかもしれない。でも今は男性こそ、自己を押し殺し、耐えているのかもしれない。だからといって、どちらがいい、というわけでもない。
綿密に構成された脚本と演出によって、飽きることもなく、一気に物語に引き込まれました。途中、ジュリアン・ムーアのエピソードのあたりから何となく現代とのリンクが想像できましたけど、私も離婚協議中とはいえ、娘を授かり、1歳半まで面倒をみたことがある男として、とても胸がざわめくような辛さを感じました。
どの女優も甲乙つけがたいですが、個人的にはそういう意味でもジュリアン・ムーアが一番惹かれました。その人の生きてきた人生によって、見方が異なる映画だと思います。
☆ 田中充子さん
5つ星のうち5.0 ニコールの演技がさえわたる。
ニコールの演技を見たくて購入しました。素晴らしいですね。ニコールではなく、もうバージニアです。いやはや、これが映画だ。
すばらしい映画をみると、得した気になります。
友人に勧めております。あのニコールのお人形顔より、ずっとこちらが生きている。演技最高。
人間のつらさみたいなもの、あれが格好良すぎて。女でも惚れますね。
本作品のフル・バージョンは現在Amazon Prime(https://www.amazon.com/Hours-Nicole-Kidman/dp/B000I0GGGY)でのみ視聴が可能(有料登録後)です。当探偵室から提供できるのは幾つかのClipだけです。
Opening Sequence
ただし、ロシア語での吹き替えに「耐えられる」自信のある方は下記ok.ruへアクセス。
The Hours 2002 ("Часы")
また、よりも怖いと評判のサイト123.moviesも怖くない(幾多のADをクリックで乗り越えて)方はどうぞこちら↓を。
The Hours 2002
参考
エリザベス・テイラーWikipedia: 映画「ヴァージニア・ウルフなんか怖くない」
映画のトレーラーでは「心理サスペンス」とか「サイコ・ホラー」などのキャッチが使われていますが、そんな「緩い」映画ではありませんよ(館長。
20世紀のテレーズ・ラカン、それはテレーズ・デスケルウ

フランス20世紀を代表するカトリック作家、フランソワ・モーリヤックの没後50年を機に、
代表作 Thérèse Desqueyroux を新邦訳!
フランス・ボルドー近郊のどこまでも広がる松林を血の中に受け継いできたテレーズ。
彼女が探し続ける「もうひとりの自分」とは?
作品紹介
夫に対する毒殺未遂容疑で予審にかけられていたテレーズだが、家名を重んじる実家と婚家デスケルー家の奔走により免訴となる。
しかし、夫はテレーズとの対話を拒み、彼女の自由を奪い、世間を欺くための演技だけを求める。虚しい時間の中でテレーズは、親友アンヌとの思い出、アンヌの想い人ジャン・アゼヴェドが自分にもたらした変化、そして夫に砒素を盛るに至った記憶をたどる。
―フランス・ボルドー近郊の松林が生い茂るランド地方を舞台に、「もうひとりの自分」を探して因習の中でもがき続ける一女性の心の内を描く不朽の名作。
... を取り上げて優れた真摯な問いかけをしたがちゃんさんに、再度敬意を表したいと思います。ここで探偵のような「文学至上主義」的レビューに陥ることなくこのように難解な現代文学を語らせたら右に出る者はいないと噂される松岡正剛さんにご登場願いましょう。キーワードは「怖い女」だそうです!
松岡正剛の千夜千冊:
テレーズ・デスケルウ 遠藤周作訳(注)
オドレイ・トトゥ (出演), ジル・ルルーシュ (出演), クロード・ミレール (監督) 形式: DVD
映画『テレーズの罪』は、ノーベル賞作家フランソワ・モーリアックの代表作にして、フランスのカトリック文学史上不朽の名作と言われる小説「テレーズ・デスケルウ」を原作としている。舞台は1920年代のフランス。家同士が決めた政略結婚により、広大な土地を所有するデスケルウ家の当主ベルナールの妻となったテレーズの苦悩を、ひとつの事件を通して描く。テレーズを演じるのは、2001年に主演した『アメリ』が世界中で大ヒットし、一躍脚光を浴びたオドレイ・トトゥだ。本作は、彼女自身が『アメリ』から10年を経て自分を成長させるきっかけとなったと振り返るほどの意欲作で、テレーズという女性の内面の葛藤や変化を表現する渾身の演技を見せている。テレーズの夫ベルナールに扮するのは、ギヨーム・カネ監督作『君のいないサマーデイズ』でセザール賞助演男優賞にノミネートされたジル・ルルーシュ。その他、若手の注目株アナイス・ドゥムースティエや、スタンリー・ウェバーも出演している。
監督のクロード・ミレールは、少女時代のシャルロット・ゲンズブールを主演に迎えた『なまいきシャルロット』『小さな泥棒』などで名を馳せた。仏高等映画学院を卒業後、マルセル・カルネ監督のアシスタントを経て、ジャン=リュック・ゴダールらの助監督を務め、フランソワ・トリフォー作品の製作主任を約10年にわたって任されるなど、ヌーベルバーグの屋台骨として実力を発揮。思春期の微妙な心理を繊細なタッチで描き、誰にも理解されない孤独を抱えながらも息の詰まる世界から自由を求めるヒロイン像の作品が多く、1998年には『ニコラ』でカンヌ映画祭 審査員特別賞を受賞した。2012年に享年70歳で病のため他界したため本作が遺作となった。
1920年代の南フランスを徹底的に再現した衣装や美術、牢獄のように冷ややかな室内空間と開放的な屋外のコントラストを効果的に表現した撮影も見事な、珠玉の文芸ロマン。
●物語
1928年、フランス。良家の娘であるテレーズは、幼馴染みのアンヌの兄で、広大な松林を資産として所有するデスケルウ家の長男ベルナールと結婚する。しかし、それは愛情によるものではなく、家柄や経済状況を優先した、いわゆる“政略結婚"と言えた。退屈な結婚生活を続けるうちに、彼女の心には粗野な夫への嫌悪感が育っていく。ベルナールとの間に娘をもうけてからも、母親としての生きがいを見出だすことができないテレーズ。“自由"への渇望からか、次第に彼女は孤独な闇に心を蝕まれていくのだった。そんななか、ベルナールが原因不明の体調不良を訴える。その症状は、日に日に悪化してゆき…。
予告編
ok.ru: Thérèse (2012) [EngSubs] (720p)
https://ok.ru/video/2724017998363
注:図書館での検索により、中央公論社刊の「世界の文学」セレクション36- ジイド、モーリアックでのテレーズ・デスケルウの翻訳は高橋たか子によるものであった。遠藤周作がカソリック信者ではあっても「男性」であったが、高橋たか子の「女性眼」はどこに向けられているか、注目したい。
なお、前回紹介の「テレ-ズ・ラカン」から多くの作品が生まれたように、本「テレーズ・デスケルウ」からも多くの映画作品が生まれている。その1本が1962年制作の「テレーズ・デスケルウ」である。
参考上映:Thérèse Desqueyroux 1962, Georges Fanju
嘆きの探偵、もとい嘆きのテレーズ
探偵が文豪ゾラに追いつけるわけもなく、ただ「あの時の映画日記~黄昏映画館」のがちゃんさんに追いつこうと....
Wikipedia: 嘆きのテレーズ
岩波新書版への解説が多くを物語る...
ー 内容(「BOOK」データベースより)
湿っぽく薄汚れたパリの裏街。活気のない単調な日々の暮しに満足しきっている夫と義母。テレーズにとって息のつまるような毎日だが、逃れる術とてなかった。だが彼女の血にひそむ情熱の炎はそのはけ口を見出せぬまま、ますます暗い輝きを増してゆくのだった。そうしたある日、はじめて出会った夫の友人ローランにテレーズのまなざしは燃える。

☆ マルセル・カルネ監督の『嘆きのテレーズ』
予告編(字幕なし)
本編(ok.ru):
Thérèse Raquin par Marcel Carné [1953](英語字幕入り)
そして現代、本作品が『テレーズ 情欲に溺れて』(注1)というタイトルで再解釈のうえリメークされ、この2021年にDVD化された。
Wikipedia: In Secret『テレーズ 情欲に溺れて』
『テレーズ 情欲に溺れて』(テレーズ じょうよくにおぼれて、In Secret)は2013年のアメリカ合衆国・セルビア・ハンガリーのドラマ映画。チャーリー・ストラットン監督の長編デビュー作で、出演はエリザベス・オルセン、トム・フェルトン、オスカー・アイザック、ジェシカ・ラングなど。原作はエミール・ゾラが1867年に発表した小説『テレーズ・ラカン(英語版)』と2009年に初演された舞台劇『Thérèse Raquin』。
日本国内で劇場公開されなかったが、2021年3月3日にDVDが発売された。
ー 1860年代、パリの下層社会。テレーズ・ラカンはその卓越した美貌にも拘らず、何の刺激もない、息苦しいだけの生活を送ることを余儀なくされていた。その最大の原因は叔母(マダム・ラカン)にあった。マダム・ラカンはテレーズに対して高圧的に振る舞い、彼女を無理矢理従兄(カミーユ)と結婚させたのである。
そんなある日、テレーズはカミーユの友人、ローランと知り合いになった。何の取り柄もない凡庸なカミーユとは違い、ローランは男性的な魅力に溢れていたため、テレーズはあっという間に彼の虜になってしまった。ローランと肉体を重ねる度、テレーズは女としての喜びを全身で感じるのだった。やがて、2人は邪魔者でしかなくなったカミーユの暗殺を決意する。
【キャスト】
エリザベス・オルセン 『アべンジャーズ』シリーズ
オスカー・アイザック 『スター・ウォーズ』シリーズ
トム・フェルトン 『ハリー・ポッター』シリーズ
ジェシカ・ラング 『ビッグ・フィッシュ』
【スタッフ】
監督&脚本:チャーリー・ストラットン
*エリザベス・オルセンの<愛欲>に焦点を合せた予告編
本編は日本未公開のため日本語字幕版はDVDのみ。従ってネット上にはフリー動画は無い。
ok.ru (英語音声、字幕無し)
In secret (2013)
= https://ok.ru/video/3007977753119
注1:「情欲に溺れて」というサブ・タイトルはどこから来たか?実は現在、このサブタイトルはネット上で見ることできない。カンヌ映画祭へのエントリー経過(英語版がオリジナル)に伴って削除されたらしい。探偵の記憶では、In secret, blood and lust with Therese (秘密 ー テレーズの血と欲望:blood and lustとは殺戮願望を意味する)だったような。
そして探偵が昔からふと思いついた疑問。生きるということが何事かとの闘いであるなら、その闘いの敵は何だろうか?19世紀の自然主義・社会派の大文豪ゾラにとって、それが資本主義・工業化社会であったのは間違いなかろう。もう1つの疑問とは、ノーベル賞作家フランソワ・モーリアックの「テレーズ・デスケルウ」の「テレーズ」はこのゾラの「テレーズ・ラカン」の20世紀への生き代わりなのでは、ということ。
この疑問に対しては松岡正剛の千夜千冊:テレーズ・デスケルウで予習をしておこう。
Francois Mauriac
Therese Desqueyroux 1927
[訳]遠藤周作
Wikipedia: 嘆きのテレーズ

岩波新書版への解説が多くを物語る...ー 内容(「BOOK」データベースより)
湿っぽく薄汚れたパリの裏街。活気のない単調な日々の暮しに満足しきっている夫と義母。テレーズにとって息のつまるような毎日だが、逃れる術とてなかった。だが彼女の血にひそむ情熱の炎はそのはけ口を見出せぬまま、ますます暗い輝きを増してゆくのだった。そうしたある日、はじめて出会った夫の友人ローランにテレーズのまなざしは燃える。

☆ マルセル・カルネ監督の『嘆きのテレーズ』
予告編(字幕なし)
本編(ok.ru):
Thérèse Raquin par Marcel Carné [1953](英語字幕入り)
そして現代、本作品が『テレーズ 情欲に溺れて』(注1)というタイトルで再解釈のうえリメークされ、この2021年にDVD化された。
Wikipedia: In Secret『テレーズ 情欲に溺れて』
『テレーズ 情欲に溺れて』(テレーズ じょうよくにおぼれて、In Secret)は2013年のアメリカ合衆国・セルビア・ハンガリーのドラマ映画。チャーリー・ストラットン監督の長編デビュー作で、出演はエリザベス・オルセン、トム・フェルトン、オスカー・アイザック、ジェシカ・ラングなど。原作はエミール・ゾラが1867年に発表した小説『テレーズ・ラカン(英語版)』と2009年に初演された舞台劇『Thérèse Raquin』。
日本国内で劇場公開されなかったが、2021年3月3日にDVDが発売された。
ー 1860年代、パリの下層社会。テレーズ・ラカンはその卓越した美貌にも拘らず、何の刺激もない、息苦しいだけの生活を送ることを余儀なくされていた。その最大の原因は叔母(マダム・ラカン)にあった。マダム・ラカンはテレーズに対して高圧的に振る舞い、彼女を無理矢理従兄(カミーユ)と結婚させたのである。
そんなある日、テレーズはカミーユの友人、ローランと知り合いになった。何の取り柄もない凡庸なカミーユとは違い、ローランは男性的な魅力に溢れていたため、テレーズはあっという間に彼の虜になってしまった。ローランと肉体を重ねる度、テレーズは女としての喜びを全身で感じるのだった。やがて、2人は邪魔者でしかなくなったカミーユの暗殺を決意する。
【キャスト】
エリザベス・オルセン 『アべンジャーズ』シリーズ
オスカー・アイザック 『スター・ウォーズ』シリーズ
トム・フェルトン 『ハリー・ポッター』シリーズ
ジェシカ・ラング 『ビッグ・フィッシュ』
【スタッフ】
監督&脚本:チャーリー・ストラットン
*エリザベス・オルセンの<愛欲>に焦点を合せた予告編
本編は日本未公開のため日本語字幕版はDVDのみ。従ってネット上にはフリー動画は無い。
ok.ru (英語音声、字幕無し)
In secret (2013)
= https://ok.ru/video/3007977753119
注1:「情欲に溺れて」というサブ・タイトルはどこから来たか?実は現在、このサブタイトルはネット上で見ることできない。カンヌ映画祭へのエントリー経過(英語版がオリジナル)に伴って削除されたらしい。探偵の記憶では、In secret, blood and lust with Therese (秘密 ー テレーズの血と欲望:blood and lustとは殺戮願望を意味する)だったような。
そして探偵が
この疑問に対しては松岡正剛の千夜千冊:テレーズ・デスケルウで予習をしておこう。
Francois Mauriac
Therese Desqueyroux 1927
[訳]遠藤周作