映画「昼顔」(10) - 仕事はじめ,そして最初の客
マダム・アナイスの言うとおりにやっていれば,ほんとうに安心なのか?
「先週も1人,クビにしたばかり。美人だけど,下品なの。
そっちへ。」
「困るわ。」
「本名じゃなくていいわ。アナイスだって偽名よ。
2人で乾杯しましょう。」
「いえ,結構」(Non merci, madame)
「そう言わずに,サクランボのブランデーよ。」
「名前を付けなくちゃね。魅惑的で覚えやすいのがいいわ、何か考えて。」
隣室から男の笑い声と女の嬌声が聞えてくる。
「アドルフさんよ,お得意客なの。とても面白い人よ」(嘘っそ~,アドルフさんなんて!:探偵)
「そうだわ,昼顔はどう?」
「昼顔?」
「そう,昼に咲く花よ。」
「いいわ。」
「緊張しないで。5時には帰すわ、心配しないで。」
アナイスはセヴリーヌの薬指に気づいた。
「誰か待ってるの?恋人?ご主人?無理には聞かないわ。
キスして。」

隣室との境目のドアがドンドンと叩かれた。
「お酒の注文だわ。」
いよいよ始まる...
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疲れたわ。 よし,休もう。
「じゃあ,終わり?」
「じゃあ,さよなら。またパリで」(注1) 「パリ?また明日やるよ。」
「調子が出ないから...
君以上に...」
「無力だ。」
朝10時に。早いかな?」
マリアンヌは同意の握手をした(2人が肉体的に接触したのはこれが初めてである(探偵の余計な注)。
きっと,「あ,あのケツだ」と思ったに相違ない(探偵の推理)。
「主人は何て?」
「ウイ。」
「お願い,やって。
「彼には大切なことの。」
「私はわかる。
明日来てね。」
「なぜ私が必要なの?彼は時間のムダと認めたくないだけ。」
明日はここから来てね。鍵は開いてる。
「さよなら。」(注3)
注1:このさよならはAu revoirである。
注2:ここでもAu revoirと言っている。
注3:マリアンヌがリズに最期にいう「さよなら」はBon soirである。
これは,普通午後に使われる様々な挨拶の言葉,さよなら,ただいま,おやすみ等々の意味もあるが,
探偵得意の下品な訳しかたでは,「あばよ,テメエなんざクソして寝ろ」ということになる。
画家に告げたAu revoirとの相違に注目。








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