『春情浅草名所』(恋川笑山)
春情浅草名所は、恋川笑山の艶本で、
浅草の各名所と女性たちに材をとっ
ている。
恋川笑山(1821-1907)は常陸国高山
の生まれ。浅草の日輪寺に入る。その後
安政元年から戯作者柳下亭種員の門に入
り、種清と名乗る。上演された芝居をも
とにした草双紙(合巻)で人気を得る。
また、淫水亭の名で多くの枕絵(春本)
を書く。
艶本『春情浅草名所』
艶本が故に長く、ここには端折って、夢
芝居に懸けて挿入された絵とその書き入
れの文をもって枕絵(春画)を愉しむ。
『春情浅草名所』(序)
当たる西の春。
浅草によくぞ生まれて花の雲
とは享保の頃の吟。
今や昔にたちかえり…
淫水亭序す。
それといわぬ男二人の趣向を汲んで知
る心の水茶屋の女。
狙いの的に当たり芝居、まんまと割り
込む前土間の穴。
気を変えた仮宅遊びは面白狸の淫つづみ。
と物語は展開し幕となる。
『春情浅草名所』の枕絵
猿若町の春景
男
この濡れ事の幕を見ちゃァどうにもこ
たえらえ。
女
あれお止しよ、人がみるよ。
男
お前もこんなにだしているくせに…
もう明かりはつくし、誰が気をつけて
見るものか。
この次が跳ね幕だからそれまで入れづ
めにしておこう。
ああどうも。芝居をみながらするほど
の楽しみがあろうものか。
二十軒茶屋の遠望
女
おや、どうしよう。二十軒からこの二
階が見えるそうで、茶屋にいる人がこ
っちを見てわらっているようだよ。
男
なに、岡焼餅にかまうこたねえ、いく
ら気をもんでも川向かいの喧嘩だ。
さあ〱こっちで始めて思入れ気をもませ
てやろう。
女
そりゃァいいが、お前のものがいつもよ
りたいそう太くなったようだよ。
花菖蒲の百苑
女
この優しげな顔でよくこんなことができ
たもんだ。さあ早くやっておしまいよ。
誰かに見つかるといけないよ。
ああもう、それ。わたしはいくよ。
ああいい。フン〱。
男
なに、入れたからにゃァ、とっくりやら
ねえうちは抜かれるものか。
並木の鐘亥刻
女
お前さんはお忘れだろうが、いつか芝居で
ひとつ土間に入って、しみじみ好いたらし
いと思ったお方に思いがけなく逢えたとい
うことは尽きせぬ縁(えにし)とやらであ
りますよ。
男
わたしも見たようなおかみさんだとは思っ
たが夜のことだし、定めしご近所のひとだ
ろうと思っていたところ、思いかけずさせ
てくれるとは枕草紙にでもありそうなこと
だ。
浅草と江戸吉原(遊郭)
江戸を舞台した「春情浅草名所」。
浅草寺の北1㎞の地には吉原遊郭があ
り、遊郭の南は田んぼが広がり、浅草
寺からゆくときは、遊郭を北西に見て、
山野掘の堤の道をいけば、大門の入口に
通じる。
井原西鶴は「好色一代男」で、吉原の
太夫のよし田は、意気地があり、京、
大坂の太夫と一味ちがって張りがあり、
「匂ひは、かぶるものだ」と江戸の太
夫・よし田を讃える。
「吉原風俗図屏風」
浅草寺の北の吉原遊郭の跡地(東京都台東区千束3-4丁目)
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