戦後77年、世界の中の日本。

この間に世界の情勢は変わった。東京の街

の姿は変わったが、岸田内閣は、内憂外患

で、ロシア侵攻のときに、国葬・統一教会

の問題で迷走している。

 

 

東京の国会議事堂

 

<文藝春秋「創刊100周年」(2022.1月号)>

2022年新年特別号。この特別号の第一弾で、

「100年の100人」を掲載されるなか、安倍

晋三が祖父の岸信介を語る。岸信介(1896-

1987)は、戦前は満州国で辣腕を振るい、戦

後は首相として安保条約改定に尽力、孫である

安倍晋三は元首相。

以下これをもとに記す

 

 

佐藤栄作の実兄・岸信介(1896-1987)

 

<安倍晋三と岸信介>

祖父が首相の時、晋三は2~5歳。男三人兄弟

で、父・晋太郎の次男で、弟の次男・岸信夫

(現防衛相)が生まれ養子に入る。というこ

とで、母の実家の岸家によくいくことになる。

泊りにいくと、布団のなかで話をよくしてく

れた。

<岸信介「日米安保条約の改定」>

政治家として成し遂げた一番の功績は、何と

いっても日米安保条約の改定。旧安保条約は

米国の日本に対する防衛義務もなく、両方が

合意しなければ廃棄できない。日米地位協定

もなく、きわめて不公平だと考えたのは、政

治家として当然です。

父が岸内閣の首相秘書官のとき、岸に「元経

済官僚だから、首相として経済政策に挑戦し

たら」といわれる。つぎの池田勇人内閣で本

格化する所得倍増政策も事実上、岸政権下で

始まっていたが、岸は「経済政策は役人でも

できるが、外交と安保政策は政治家でなけれ

ばできない」と判断する。

安保改定にあれだけ大きな反対運動が起きた

のは、日米が保護国的な同盟関係でなく、明

確に同盟国になったということが、多くの

国民が旧安保条約と新安保条約の比較ができ

ていなかったからです。

<岸信介(自民党内「後継総理の密約」)>

安保改定での一番の苦労は、やっぱり自民党

内のとりまとめだった。池田派や大野派、河

野派などの動きがあり、そのなかで、祖父は

党内で協力を取りつけるために、後継問題で

順番に密約を結びます。

(「密約」について)

のち社会人となり、祖父とその長男の伯父・

岸信和と雑談で、伯父が「密約って本当?」

と尋ねると、祖父はうなずき、「実現するつ

もりはあったの?」と聞くと祖父は「難しい

と思っていた」と言っていた。

<密約について>

<岸内閣(次期総裁選)と児玉誉士夫「誓約書」>

昭和32(1957)年2月岸信介が首相になる。

岸政権、当分安泰かとみえたが、社会党は警職

法が上程にされるに及び猛反撃に出、廃案にな

る。同年12月27日池田勇人(国務相)、三木

武夫(経企庁長官)、灘尾弘吉(文相)は党内

人事刷新を叫び、辞表を提出。岸総理は、つぎ

の総裁の再選重任の目途がつず。結局、岸信介、

大野伴睦、河野一郎、佐藤栄作の四者の話し合

いに児玉誉士夫も立ち合い、誓約書をかわす。

『昭和34年1月16日、萩原・永田雅一・児玉

三君立会の下に於いて、申し合せたる件につ

いては協力一致、実現を期すること、右誓約

する』(「児玉誉士夫自伝」)と認め、それ

に岸・大野・河野・佐藤の各氏の順で署名し

、この一札は萩原さんが預かることになった。

 

 

岸・大野・河野・佐藤四者の誓約書(1959.1.16)

 

<岸信介(政治家「責任倫理・密約」>

私は、マックス・ウェーバーが説く心情倫理

と責任倫理で、起きたことに責任をとる起き

たことに責任をとる責任論理が政治家に求め

られるものと考える。できもしない約束をす

るのは、倫理上、正しくはない。しかし約束

をしなければ安保条約改定が実現しないかも

しれない。であれば、新安保条約を成立させ

ることが国のためだ。それが、国のためだ。

ふたつの倫理の緊張関係のなかでギリギリの

判断する。これが政治の厳しい現実だと思う。

退任と引き換えにした。政治家として岸を評

価する点は、そこが一番です。

<安倍晋三と岸信介(「総選挙」)>

一方祖父の失敗としては、安保国会の前に衆

議院を解散しようとしたが、当時の幹事長・

川島正次郎の反対でできなかったこと。総選

挙で勝利を得て批准に臨めば、状況は違った

と思います。私の内閣では2014年と2017年

に2回解散したが、とくに2017年10月の総選

挙のとき「やるべきときはやるんだ」という

強い思いだった。

<安倍晋三と岸信介(「憲法」)>

憲法については、祖父は「現憲法は独立を回

復するまでの憲法」という認識だった。あの

時代に憲法制定に関わった政治家は、そうい

う考えだったと思う。祖父は、憲法問題が弟

の佐藤栄作首相のときに足踏みしたとの感を

持っていた。

<安倍晋三と岸信介(「今の日本」)>

(安倍晋三「安保法制」

祖父が今の日本を見たら、よくぞここまで来た、

と思うだろう。私の内閣で、平和安全法制を作

り、日本の自衛隊が米艦を防衛する共同訓練ま

で行うようになり、インド・太平洋で大きな役

割を担い、米国からも頼りにされる状況になっ

た。

(安倍晋三「自民党」)

祖父は、今の自民党の状況を見て、党が続いて

いることに多少、驚きを抱くかもしれない。自

民党の本来の役割を目指す方向をもう一度見つ

め直せと思うのではないか。私もそのために先

の総裁選では、高市早苗氏を擁したのですが。

 

 

昭和18(1943)年11月東条英機首相と岸信介

 

(安倍晋三)

首相辞任後2020.1月には首相在任中の桜

を見る会の前夜祭を巡り、政治資金規正法

違反の疑いが浮上する。2022年夏参議院

議員選挙の最中岡山での応援演説中に統一

教会に恨みをもつ山上容疑者に銃撃にあい

亡くなる。2022年7月8日、安倍晋三没6

7歳。7月12日、増上寺にて葬儀があった。

<岸田文雄内閣>

菅義偉首相がコロナ対策で辞任し、かわって

内閣総理大臣に岸田文雄になり組閣する。

岸田内閣は第一次(2021.10.4-11.10)、

参議院選挙後に第二次(2021.11-2022.8)、

衆議院解散、選挙運動中安倍晋三(元首相)

が銃撃され死亡する。7月14日に安倍晋三の国

葬実施を表明、8月10日に岸田改造内閣を発足

し、現在に至る。

<令和の妖怪(国葬)>

岸信介は、政界の黒幕・児玉誉士夫とは、戦

前・戦中から親交あり、冷戦下のもと、岸信

介は首して1960年の安保改定を乗り越え

田内閣にかわる。岸信介と統一教会は、反

共産主義を掲げ、たがいの利益・保全ために

協力。岸は東京の教会本部で講演(1970)

し、合同結婚式にメッセージを送る(1982)

など、長年に渡りその関係を構築してきた。

自民党は戦後からこの岸と統一教会の関係が

長期政権の安倍に受け継がれる。安倍晋三は、

2021年に世界平和統一家庭連合の関連団体

のイベントにメッセージを送り、現在岸田総理

はじめ内閣、自民党議員が旧統一教会との関連

が問われているなかの国葬はやはり可笑しい。

 

岸田内閣は、これからどんな道を選択しようと

しているのか。

「きのうのニュースは、今日の歴史であり、

今日のニュースは明日の歴史となる」とい

う言葉があるが、いまは次なる新しい時代

を生もうとしている今日なのか。

 

 

東京の街(増上寺付近)

 

参考(メモ)

昭和7(1932)  年  満州国(「弐キ参スケ」)

           (東条英機・岸信介・鮎川義介他)

昭和16(1941)年  第二次世界大戦「開戦」

昭和20(1945)年  終戦「敗戦」

昭和21(1946)年  東京裁判 吉田茂(政党内閣)

昭和22(1947)年  片山哲内閣 

           田中角栄(民主党)初当選

昭和23(1948)年  昭和電工事件(GHQ関与)

           炭鉱疑獄10月

昭和25(1950)年  朝鮮戦争(~1953)

昭和26(1951)年  日米安保条約

昭和29(1954)年  吉田内閣(1948-1954)

           自由民主党結成

           鳩山一郎内閣(1954.12-1956)

昭和30(1955)年  自由民主党結成

昭和31(1956)年  赤線廃止

昭和35(1960)年  日米安保条約(改定)

           池田勇人内閣(1960-1964)

昭和39(1964)年  佐藤栄作内閣(1964-1972)

昭和47(1972)年  田中角栄内閣(1972-1974)

昭和49(1974)年  三木内閣、児玉誉士夫「自伝」

昭和51(1976)年  ロッキード事件、福田内閣

昭和53(1978)年  大平内閣

昭和55(1980)年  鈴木内閣

昭和56(1981)年  「蜂の一刺」

昭和57(1982)年  中曽根内閣

昭和62(1987)年  竹下内閣

平成 元(1990)年  宇野内閣

平成  2(1990)年  海部内閣 角栄政界引退・越山会解散

平成  5(1993)年      細川連立内閣 角栄死去12.6

平成13(2001)年  小泉内閣

平成14(2002)年  田中真紀子(外務大臣)

平成17(2005)年  「田中角栄」(佐藤昭子)

平成21(2008)年  鳩山由紀夫内閣

平成22(2010)年  菅直人内閣

平成23(2011)年  野田佳彦内閣

平成24(2012)年  安倍内閣

令和  2(2020)年  菅内閣

令和  3(2021)年  岸田内閣

令和  4(2022)年      安倍晋三(銃撃事件)

 

2022.8.11

岸信介「昭和の妖怪(統一教会)」ー新東京物語(53)

2022.8.29

永田雅一(大映社長「政界黒幕」)ー新東京物語(81)

2022.9.3

田中真紀子「裸の女王さま」ー新東京物語(91)

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辻政信(「潜行三千里」)と児玉誉士夫ー新東京物語(92)

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