江戸期を代表する浮世絵師の葛飾

北斎。

奇才と称された北斎が描いた春画

「海女と蛸」。

絵もさることながら、「ぎりも 

さかいも なくのヲ々ヲ々 ヲ々

 いきつづけだアな。いゝヨ、い

ゝヨ」と会話も多弁にして妙なり。

 

「喜能会之故真通」(第1冊第6図)

「海女と蛸」は色摺りの版本「喜能

会之故真通」(きのえのこまつ」第3

巻にあり、この版本には四季の行事に

懸けた絵に詞書がある図がある。

 

そのひとつ第1冊第6図。

彼岸の日、家族が出かけ、留守番の若

夫婦。

男は「彼岸の日もいいもんだ」とおど

け、女房とともに戯れをたのしむ。

 

 

「海女と蛸」

『喜能会之故真通』(第3冊)の第5図

「蛸と海女図」。

 

(大蛸)

「いつぞは 々 狙いすましていた

が甲斐あってきょうという今日はと

うとう とらまえたア とても む

っくりとしたいいぼゝ(陰茎)だ。

芋よりはなお好物だ。サアサア 吸

って吸って吸い尽くして 堪能させ

てから いっそう龍宮へ連れていっ

て 囲って おこうす」

口にてズウツ、ズツズツ、チウツチ

ウチウツ、ズウツズウツ「フゝゝゝウ」 

   

 

(海女)

「アレ憎い蛸だのう、フゝゝゝ。エゝ

いっそアレ々奥のフゝゝゝ、小壺の口

を吸われるので、息がはずんで、ア、

エゝゝモ、イツソ。それなイボで、ま

ただヨウ、ハア、ア、いゝいゝ…」

(大蛸)

「なんと8本の足のからみあんばいは

どうだ 々 あれあれ中がふくれあが

って フゝ フゝ」

     

湯のような淫水ぬらぬらぬら、どくど

くどく。

 

 

(小蛸)

親方がしまうと、また俺がこのイボで

さねがしら(実頭)から けつの穴ま

でこすってこすって気をやらせたうえ

で また吸い出してやるにヨ、チウチウ」

 

 

 

 

葛飾北斎「喜能会之故真通」

(海女と蛸)

「喜能会之故真通(きのえのこまつ)」

は、いろいろな意味が込められている。

序文に「甲の小松寝にかよふ」とある。

「甲子(きのえね)待(まち)」の日

の時刻は午前1時頃で、正月の行事の

延命を願った「小松引」との掛詞で、

文化11(1814)年の正月の歳旦物を

暗示する。

 

北斎の春画「海女と蛸」。

岩場の海女は、たこを捕らえて蛸開

(たこつび)のために来たが、逆に

蛸に開(つび)を吸い付かれている。

 

北斎の絵や書き入れは直截で、歌麿

の枕絵とは趣きを異にするが、歌麿

と同じく、「海女と蛸」で描く女性

は性(生)を満喫している。

 

 

参考(メモ)

喜多川歌麿(1753?-1806)

寛政期(1789-1801)に活躍

喜多川歌麿(枕絵「歌まくら」)ー男と女の物語(145)

2021.7.28

<喜多川歌麿(枕絵「ねがひの糸口」)>ー男と女の物語(146)