美人画の喜多川歌麿。

歌麿は言葉では言い尽くせないところ、

わからないのが女性だというごく微妙

さを「歌まくら」の枕絵で描いている。

 

喜多川歌麿と「歌まくら」

喜多川歌麿の出生地、出身地など不詳。

浮世絵師鳥山石燕に学び、役者絵や絵

本を制作し、その後版元・蔦屋重三郎

のもとで美人画や枕絵を描く。

 

墨摺版本とちがい、浮世絵春画の花形

である錦絵大判を3点(他「願ひの糸

口」、「絵本小町引」)を描く。

その内の最もはやく描いた「歌まくら」

(通称名)は、「歌麿の毛がき 彫師の

泣きどころ」と狂歌に謡われるほどの

下絵で、寛政の改革のすこし前の天明8

(1788)年の錦絵大判版画12枚組物。

 

ー歌まくらー

12図の第1図(海女と河童)

(海女と河童)

岩場から海の底を見る海女。

 

 

眺めている女の表情と姿態。

海の底を覗く顔。

その顔に手を添え、手をつく小指を折

り、海底に映すその眼が妖しく、艶か

しい。

腰に紅い布を覆った裾と立てた膝の足

の隙間には、薄い毛が見える。

岩場から二匹の河童に犯される海女を

視る女。

 

 

 

第10図(茶屋の座敷の男女)

(座敷の男女)

全12図の内の第10図より。

茶屋の二階座敷の男女。

 

 

顔が見えない男と女。

何かお愉しみもよう。

女は男の頬に手を添え唇を吸っている

のか、片脚を男の腰にかけ、その膝が

薄墨色の男の着物に透けてみえる。

乱れた紅色の長襦袢の裾から、ふっく

らした白いお尻、下半身を浮かせている。

男に身をゆだねているのだろうか…。

扇をもつ男の眼がかすかに見える。

男がもつ扇には、

蛤(はまぐり)に はしをしかっと 

はさまれて

鴫(しぎ)たちかぬる 秋の夕暮れ

 

と、狂歌が書かれており、奥の深い

味のある歌麿の枕絵。

 

 

 

「歌まくら」(偃息)

歌麿35歳の頃の「歌まくら」(通称名)

の版画は、男と女の伽(とぎ)を描く。

「歌まくら」の序文に『且は図工の名に

寄せて艶本(えほん)有(う)当(た)

枕となづけ、春の寝覚めの伽(とぎ)と

なす』とある。

伽は寝床で侍(はべ)り、相手をして慰

めるという意味。

歌麿が描く女性は、エンジョイ・ライフ

で、偃息(えんそく)を愉しんでいる。

 

喜多川歌麿(枕絵「歌まくら」)

墨摺版本とちがい、浮世絵春画の花形

である錦絵大判を3点(他「願ひの糸

口」、「絵本小町引」)を描く。

その内の最もはやく描いた「歌まくら」

(通称名)は、「歌麿の毛がき 彫師の

泣きどころ」と狂歌に謡われるほどの

下絵で、寛政の改革のすこし前の天明8

(1788)年の錦絵大判版画12枚組物。

 

歌麿は、規制から逃れて描いた絵がも

とで、幕府の咎めを受けて亡くなる。

浮世絵は江戸時代で終わり、明治以降

に趣きを異にした錦絵は春画と呼ばれ

るようになる。

 

 

 

<勝川春潮(生没年不詳)。安永から寛政(1722-1801)活躍>

勝川春潮の春画「好色図会十二候」ー男と女の物語(143)

2021.7.26

勝川春潮の「逸題組物」(紅嫌)ー男と女の物語(144)

<喜多川歌麿(1753?-1806)寛政期(1789-1801)に活躍>