【皇室のトリビア】#49
これまで書いてきたように、「眞子さんの乱」で分かったことは、皇室というのは何とも窮屈で生きづらい世界だということである。
眞子さんの婚約発表からしばらくして、小室家の借金問題が週刊誌で報じられて以来、世間では、さすがにあの男が相手では破談だろうと言われ続けた。
問題をかかえた「あの小室家ではねぇ」というわけである。ところがある皇室の関係者からこう言われたことがある。
「絶対に結婚しますよ。なぜなら眞子さまは皇室を出たいのです。それにはこれがラストチャンスなんです」と。それを聞いて、内親王ですら皇室を出たいと思うほど生きづらい世界なのかと驚いたほどだ。
皇室は生きづらい世界と言われるのは何も今回が初めてではない。現上皇后の美智子さまも現皇后の雅子さまも結婚された頃はよく言われた。
それなのにまたもや同じ言葉を聞くのは、皇室が時代に合わせて変化してこなかったからだろう。その原因は、やはり宮内庁にあるのではないか。
例えば、あれほど批判を受けたら、どんな人だって反論したいはず。少なくとも間違っている箇所を指摘したうえで訂正させたいと思うだろう。
しかし、基本的に皇族は反論しない。もちろん反論する権利はあるが、皇族が反論すれば影響が大きく、言論活動をゆがめる可能性があるからだ。
そこで皇族を代弁するかたちで、2007年から宮内庁がホームページに「皇室関連報道について」というサイトを立て、主に週刊誌が誤った報道をしたら誌名を挙げて反論するようになった。
なぜ週刊誌かといえば、宮内記者会(宮内庁にある記者クラブ)には大手主要新聞社と通信社、それにテレビ局が加盟しているが、週刊誌は入っていないからだ。
戦前の宮内記者会は新聞社と通信社で、戦後になってテレビ局も加わったが、ゲリラ取材を得意とした週刊誌はウサンくさいと思われたのか加盟できなかった。加盟社なら、もし問題になるような報道をすれば出入り禁止にできるから、宮内庁の意図に反する報道はしない。
もっとも「大本営発表」のような報道しかできないから、皇室ファンでなければ読まない。週刊誌はそれに縛られないから、勝手に報じる。ということで、もっぱら宮内庁の反論の対象は週刊誌の記事ということになる。
■皇族の実像を伝えようとしない宮内庁の壁
ところが、眞子さんの婚約が明らかになって以降、宮内庁が反論したのはたった3回である。ホームページを見れば分かるが、美智子さまが宮内庁長官を動かしたとか、すべて美智子さまに関係している記事ばかりだ。
美智子さまのことに関していうなら、約60年も前、伊勢神宮を参拝したときのお召しに針金が入っていたかどうかなんていう記事にも宮内庁は反論していたのだが……。
では眞子さんに関してはなぜ反論しないのか。「複雑性PTSD」と診断される前に、なぜ眞子さんが納得できるような反論をしなかったのか。小室圭さんが眞子さんの婚約者であっても、一民間人にすぎず、皇族ではないからなのか。
宮内庁は天皇一家、皇太子一家のための組織であると考えれば、秋篠宮家の眞子さんは重要ではなかったのかもしれない。でも、何かおかしい。
おかしいのはまだある。私たちは眞子さんがどんな女性で何をしようとしていたのか、どれほどの人が知っているだろうか。ある皇室記者はこんなことを言ったことがある。
「佳子さまは可愛い感じなので取材することはありましたが、眞子さんに関してはまったく手つかずで、どういう人かと聞かれてもよく分からないんです」
これも宮内庁が皇族の「実像」を伝えようとしないからである。
その皇室記者が眞子さんの生の声を聞いたのは、最後の結婚会見を含めて3回しかなかったそうだ。ICUの学園祭に行くと眞子さんは焼き鳥を売ったりしているのを取材したと聞いたから、当然眞子さんとやりとりはあったと思ったのだが、全くなかったという。
宮内庁も眞子さんの思いや肉声を伝えてきたわけではない。だから、私たちは眞子さんについては何も知らず、そして今も知らない。(つづく)