正しい体とお金の知識 -2ページ目

正しい体とお金の知識

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 厚生労働省は14日、新型コロナウイルス感染による全国の自宅療養者が、12日午前0時時点で1万8628人となり、前週比で約16倍に増えたと発表した。入院が必要なのに受け入れ先の医療機関が決まっていない人は全国で297人おり、同約4倍となった。オミクロン株の急拡大により、さらなる増加が懸念される。

 都道府県別のコロナ向け病床使用率は、沖縄が最も高く46%。次いで島根45%、山口44%。広島は31%だった。5日時点では山口が23%で最も高かった。全国的に上昇傾向にある。

 自宅療養者も最多は沖縄で4543人。東京2762人、神奈川2039人、大阪1969人。

「大学入学共通テスト」を目前に控え、日本全国の新規感染者数は1万人を超えた。文部科学省は共通テストを受験できない受験生のための救済策を急遽、発表したが、試験4日前での突如のルール変更に大学、受験生からは戸惑いが多く出ている。

感染力の強いオミクロン株の対策として、岸田文雄首相はワクチン・治療薬の早期の確保などに取り組むとしているが、AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料で、ワクチン・治療薬の確保に目途が立っていない実態がわかった。第5波では最大で1日2万5千人超の新規感染者を出したが、専門家からは「2月には2倍、3倍の陽性者が出る可能性があり、医療ひっ迫を引き起こす懸念が強い」と警鐘を鳴らす。

「我々専門家が思っている以上の速さでオミクロンの感染が拡大している。正直、恐怖感があります」

 こう言うのは順天堂大の堀賢教授(感染制御学)だ。全国の感染者数は1月4日に1千人を超え、8日には8400人、そして12日には1万人を超えた。

 感染が急拡大した要因は感染力の強いオミクロン株だと見られる。堀教授は昨年末、これまでのデルタ株とオミクロン株が置き換わるのは2月中旬頃、感染のピークは3月に来ると予測をしていた。しかし、附属の順天堂医院ではすでに感染者の8割がオミクロン株に代わっているという。

 このスピードはこれまでの変異株を凌駕する。昨年春に大阪で医療崩壊を引き起こしたアルファ株に置き換わるのには6週間、東京五輪中に猛威をふるったデルタ株に置き換わるのに4週間かかったのに対し、オミクロン株は2週間程度で代わる勢いだと堀教授は見る。さらに、「短期間に急速に感染者が増えると、感染者数のピークが高くなります。そうすれば、重症患者も増え、医療供給体制をひっ迫させる」と言う。

 他方で、いまオミクロン株に対して楽観論が出てきている。オミクロン株は感染力が強いものの、重症化率が低く、病原性がデルタ株よりも半分から6割程度少ないと言われている。前東京都知事、元厚労大臣の舛添要一氏はネット番組で「限りなく普通の風邪に近づいてきている」、テレビ番組でもお笑いコンビ・ブラックマヨネーズの小杉竜一氏が「東京の重症者は4人。これでもっと気を引き締めてとか言われると気絶しそう」などと発言し、一定の支持を集めている。

 しかし、専門家の意見は違う。堀教授はこう語る。

「仮にオミクロン株の病原性がデルタ株よりも6割少ないとしても、感染者数が1.6倍増えれば、入院を必要とする患者の数は同じ。現時点で正確な予測は難しいですが、昨年夏に猛威をふるったデルタ株よりも、2倍、3倍は感染者を出す可能性がある。いまは若い人を中心に感染していますが、今後は家庭を通じて高齢者にも感染が拡大する。

今後、高齢者を中心に重症者が出て医療体制をひっ迫させる懸念があります。そのような状況になる限り、社会の行動を制限せざるを得ない。楽観論を語るには、重症化率があと一桁は低くなる必要がある」

 オミクロン株の抑制策としていま重視されているのは、3回目の追加接種のためのワクチンと、治療薬だ。岸田首相は11日に、高齢者などを対象にする3回目接種の前倒し、高齢者だけではなく一般の人の接種数も増やしていく、現在供給を進める米メルク社製だけではなく、米ファイザー社の経口薬も2月中の実用化を目指すなどと表明した。

 ワクチンや治療薬がしっかりと確保され、供給されれば安心だが、官邸関係者は「首相は先手先手をアピールするが、実は交渉はうまく進んでいない」と打ち明ける。

 どのような状況なのか。AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料によると、ワクチンの交渉についてはこう記されている。

<追加接種に使用するワクチンについては、ファイザーワクチン1億2千万回分、モデルナワクチン7500万回分を確保済み>

<昨年12月、今年第1四半期に1800万回分のワクチンを購入することについて、武田社及びモデルナ社と合意>

<ワクチンの更なる確保や、前倒しでの輸入に向けて、モデルナ社及びファイザー社との交渉を継続する>

 一見、ワクチン確保に成功しているように見えるが、官邸関係者は内部資料について、こう説明する。

「資料中に『確保済み』とあるワクチンは、菅政権時代に契約成功したもの。岸田首相が確保できたのはモデルナ追加購入分のみです。また、これらの確保済みワクチンについて、実際の供給スケジュールは見通せておらず、『交渉を継続する』という言葉でお茶を濁しているのが実態です。

年末にファイザーのブーラCEOと会談したものの、ワクチン供給交渉は進んでおらず、1・2回目でファイザーを接種した国民の大多数が3回目はモデルナでの「混合接種」を強いられることにならざるを得ない状況は、1歩も改善していません」

 医療従事者からは不満の声も上がっている。都内の病院に勤める医師はこう語る。

「前倒しで接種を進めるといっているが、本当にワクチンを供給してもらえるのか現場でも不安視している。堀内(詔子)ワクチン接種推進担当大臣は何をやっているんですかね。河野太郎前大臣は『俺が令和の運び屋だ』みたいにうそぶいて、連日のようにニュースに出ていましたから、それに比べると堀内大臣は姿が見えず、何もやっていない印象しかない」

 一方、重症化を防ぐとして期待が高まる治療薬だが、ファイザー社製の治療薬の交渉状況についてはどうか。先の内部資料にはこう書かれている。

<基本合意 昨年12月17日に合計200万回分の確保について、ファイザー社と合意済>

<最終合意 1月中下旬の締結を目指して調整中>

<納入時期 ファイザー社側で当初3月としていた最初の納入時期について、前倒し、2月下旬に納入、配送開始することが可能との回答。更なる前倒しに向けて調整中>

 先の官邸関係者はこう説明する。

「ファイザー社製の治療薬はメルク社製よりも効果が高いとされており、確保が望まれています。首相は年末に『CEOと会談し基本合意した』と語っていましたが、いまだに最終合意には至っておらず、納入時期も早くて2月末。実際に使えるようになる前に第6波が大きく押し寄せることは避けられません。岸田首相は『先手』をアピールしますが、その実情は内閣支持率低下を恐れ、批判を避けるための場当たり的な対応です」

 現場でも心配の声が上がっている。都内の医療従事者はこう語る。

「経口薬は届きましたが、1医療機関につき3人分だけです。追加で必要な場合は、申し込めばくるが、これでは必要なときに効果的な治療ができなくなる恐れがある。掛け声だけではなく、具体的に確保してもらえないと」

 日本でオミクロン株がどのように猛威を振るうかは、まだわかっていないことが多い。油断は禁物といえそうだ。

(AERAdot.編集部・吉崎洋夫)

「大学入学共通テスト」を目前に控え、日本全国の新規感染者数は1万人を超えた。文部科学省は共通テストを受験できない受験生のための救済策を急遽、発表したが、試験4日前での突如のルール変更に大学、受験生からは戸惑いが多く出ている。

感染力の強いオミクロン株の対策として、岸田文雄首相はワクチン・治療薬の早期の確保などに取り組むとしているが、AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料で、ワクチン・治療薬の確保に目途が立っていない実態がわかった。第5波では最大で1日2万5千人超の新規感染者を出したが、専門家からは「2月には2倍、3倍の陽性者が出る可能性があり、医療ひっ迫を引き起こす懸念が強い」と警鐘を鳴らす。

「我々専門家が思っている以上の速さでオミクロンの感染が拡大している。正直、恐怖感があります」

 こう言うのは順天堂大の堀賢教授(感染制御学)だ。全国の感染者数は1月4日に1千人を超え、8日には8400人、そして12日には1万人を超えた。

 感染が急拡大した要因は感染力の強いオミクロン株だと見られる。堀教授は昨年末、これまでのデルタ株とオミクロン株が置き換わるのは2月中旬頃、感染のピークは3月に来ると予測をしていた。しかし、附属の順天堂医院ではすでに感染者の8割がオミクロン株に代わっているという。

 このスピードはこれまでの変異株を凌駕する。昨年春に大阪で医療崩壊を引き起こしたアルファ株に置き換わるのには6週間、東京五輪中に猛威をふるったデルタ株に置き換わるのに4週間かかったのに対し、オミクロン株は2週間程度で代わる勢いだと堀教授は見る。さらに、「短期間に急速に感染者が増えると、感染者数のピークが高くなります。そうすれば、重症患者も増え、医療供給体制をひっ迫させる」と言う。

 他方で、いまオミクロン株に対して楽観論が出てきている。オミクロン株は感染力が強いものの、重症化率が低く、病原性がデルタ株よりも半分から6割程度少ないと言われている。前東京都知事、元厚労大臣の舛添要一氏はネット番組で「限りなく普通の風邪に近づいてきている」、テレビ番組でもお笑いコンビ・ブラックマヨネーズの小杉竜一氏が「東京の重症者は4人。これでもっと気を引き締めてとか言われると気絶しそう」などと発言し、一定の支持を集めている。

 しかし、専門家の意見は違う。堀教授はこう語る。

「仮にオミクロン株の病原性がデルタ株よりも6割少ないとしても、感染者数が1.6倍増えれば、入院を必要とする患者の数は同じ。現時点で正確な予測は難しいですが、昨年夏に猛威をふるったデルタ株よりも、2倍、3倍は感染者を出す可能性がある。いまは若い人を中心に感染していますが、今後は家庭を通じて高齢者にも感染が拡大する。

今後、高齢者を中心に重症者が出て医療体制をひっ迫させる懸念があります。そのような状況になる限り、社会の行動を制限せざるを得ない。楽観論を語るには、重症化率があと一桁は低くなる必要がある」

 オミクロン株の抑制策としていま重視されているのは、3回目の追加接種のためのワクチンと、治療薬だ。岸田首相は11日に、高齢者などを対象にする3回目接種の前倒し、高齢者だけではなく一般の人の接種数も増やしていく、現在供給を進める米メルク社製だけではなく、米ファイザー社の経口薬も2月中の実用化を目指すなどと表明した。

 ワクチンや治療薬がしっかりと確保され、供給されれば安心だが、官邸関係者は「首相は先手先手をアピールするが、実は交渉はうまく進んでいない」と打ち明ける。

 どのような状況なのか。AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料によると、ワクチンの交渉についてはこう記されている。

<追加接種に使用するワクチンについては、ファイザーワクチン1億2千万回分、モデルナワクチン7500万回分を確保済み>

<昨年12月、今年第1四半期に1800万回分のワクチンを購入することについて、武田社及びモデルナ社と合意>

<ワクチンの更なる確保や、前倒しでの輸入に向けて、モデルナ社及びファイザー社との交渉を継続する>

 一見、ワクチン確保に成功しているように見えるが、官邸関係者は内部資料について、こう説明する。

「資料中に『確保済み』とあるワクチンは、菅政権時代に契約成功したもの。岸田首相が確保できたのはモデルナ追加購入分のみです。また、これらの確保済みワクチンについて、実際の供給スケジュールは見通せておらず、『交渉を継続する』という言葉でお茶を濁しているのが実態です。

年末にファイザーのブーラCEOと会談したものの、ワクチン供給交渉は進んでおらず、1・2回目でファイザーを接種した国民の大多数が3回目はモデルナでの「混合接種」を強いられることにならざるを得ない状況は、1歩も改善していません」

 医療従事者からは不満の声も上がっている。都内の病院に勤める医師はこう語る。

「前倒しで接種を進めるといっているが、本当にワクチンを供給してもらえるのか現場でも不安視している。堀内(詔子)ワクチン接種推進担当大臣は何をやっているんですかね。河野太郎前大臣は『俺が令和の運び屋だ』みたいにうそぶいて、連日のようにニュースに出ていましたから、それに比べると堀内大臣は姿が見えず、何もやっていない印象しかない」

 一方、重症化を防ぐとして期待が高まる治療薬だが、ファイザー社製の治療薬の交渉状況についてはどうか。先の内部資料にはこう書かれている。

<基本合意 昨年12月17日に合計200万回分の確保について、ファイザー社と合意済>

<最終合意 1月中下旬の締結を目指して調整中>

<納入時期 ファイザー社側で当初3月としていた最初の納入時期について、前倒し、2月下旬に納入、配送開始することが可能との回答。更なる前倒しに向けて調整中>

 先の官邸関係者はこう説明する。

「ファイザー社製の治療薬はメルク社製よりも効果が高いとされており、確保が望まれています。首相は年末に『CEOと会談し基本合意した』と語っていましたが、いまだに最終合意には至っておらず、納入時期も早くて2月末。実際に使えるようになる前に第6波が大きく押し寄せることは避けられません。岸田首相は『先手』をアピールしますが、その実情は内閣支持率低下を恐れ、批判を避けるための場当たり的な対応です」

 現場でも心配の声が上がっている。都内の医療従事者はこう語る。

「経口薬は届きましたが、1医療機関につき3人分だけです。追加で必要な場合は、申し込めばくるが、これでは必要なときに効果的な治療ができなくなる恐れがある。掛け声だけではなく、具体的に確保してもらえないと」

 日本でオミクロン株がどのように猛威を振るうかは、まだわかっていないことが多い。油断は禁物といえそうだ。

 まだまだ厳しい残暑が続く日本列島。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、ミネラルウォーターの需要が伸びている。酷暑の中でもマスクが欠かせない日常が続き、こまめな水分補給を心掛けている人が増えているようだ。

「水と安全はタダ」といわれてきた水資源大国の日本だが、今や美味しい水は「買って飲む」のが当たり前。天然水の需要は拡大の一途をたどっているが、過剰な採水によって水が枯渇してしまう恐れはないのか。(SankeiBiz編集部)

 ■日本の水源地を中国系外国資本が買収

 蛇口をひねれば、どこでも安全な水が手に入る。世界的に見れば、日本はかなり恵まれた環境にある。とはいえ、水道水をそのまま飲む人は減り続け、日本ミネラルウォーター協会によると、1人当たりのミネラルウォーターの消費量は2020年で33.3リットルに上る。

500ミリリットルのペットボトル66本分だ。30年前の1990年にはわずか1.6リットルだったから、天然水の消費量は約20倍に増えたことになる。

 世界に目を転じれば、深刻な水不足に直面している国は少なくない。イラン南西部のフゼスタン州では今年7月、市民による抗議デモが続き、治安当局が出動し死傷者が出る事態に発展した。水

ビジネスは世界規模では100兆円市場ともいわれ、開発途上国では先行しているフランスなどの企業がビジネスチャンスをつかんでいるとされる。日本でも、北海道・羊蹄山麓の水源地などでは、中国系外国資本が次々と買収していると報じられている。

 貴重な資源である日本の天然水は大丈夫なのか。業界で「水の番人」と呼ばれている水資源保護のキーマンに聞いてみた。サントリーホールディングスのサステナビリティ推進部チーフスペシャリスト、山田健さん(66)だ。

 「地下水を保全しなければ、いつかは大変なことになる!」

 山田さんは2000年、社内でこう訴えた。ミネラルウォーターからウイスキー、ビールに至るまで、同社の商品はほとんど地下水に頼っていた。地下水や天然水を維持するため森を育むことが、会社を育てていくことにつながると、山田さんは考えたのだという。

 森を育むという壮大な事業は役員会で承認され、2003年に「天然水の森」活動としてスタート。現在は多くの飲料メーカーが取り組んでいる水源涵養(かんよう)事業だが、サントリーの取り組みはまさにその嚆矢(こうし)だった。

 山田さんが所属するサントリーのミネラルウォーターといえば、「南アルプスの天然水」だが、この「天然水」という言葉、実はサントリーの“造語”だったという。

1989年に「サントリー山崎の名水」、「サントリー南アルプスの水」という商品を発売していたが、売り上げは芳しくなかった。どうしたものかと社員が会議室に集まり、そこで「天然水」という言葉が生まれたのだそうだ。

 「山の神様がくれた水」というキャッチコピーとともに「南アルプスの天然水」は世に送り出されたのは1991年。採水地は阿蘇(熊本県)や奥大山(鳥取県)、北アルプス(長野県)と広がり、現在は「サントリー天然水」というブランドで統一されている。

「天然水富士山」「清らかな天然水」「伊賀の天然水」「日本の天然水」…。ラベルや商品名に「天然水」を冠した商品が各メーカーから発売され、今や「天然水」はミネラルウォーターの代名詞になった。

 ■川にしみだしてくる水は何年も前に降った雨

 「山にどのくらいの水の量が蓄えられているのか、現地調査とコンピューター・シミュレーションによって見極めたうえで、持続可能な量の地下水を汲(く)み上げています」

 山田さんはこう強調する。サントリーは林野庁と60年間の契約を結ぶと、熊本県の国有林内にある育成途上の森林の整備を開始。同社の水科学研究所の調査では、全国の工場で汲み上げる地下水よりも多くの水を生み出すために必要な面積は7000ヘクタールと算出されたが、2011年に目標を達成した。

新たな目標として「2倍の水を育む」ために、1万2000ヘクタールという広大な面積が設定されたが、これも2019年6月に達成したという。こうした活動の発起人となったのが山田さんだった。

 「水の保全活動は単に、樹木を植えればいい、間伐すればいいということではありません。人間が良かれと思ってやったことが、環境の変化によってマイナスに作用することもあります」

 水の成分分析はもちろん、地下の地質や地層の調査から、水質浄化機能の高い「土づくり」につながる整備計画の立案など、その活動は多岐にわたる。

 山田さんによると、2018年7月の西日本豪雨の際、天然水の森では、樹木が根ごとひっくり返る「根返り」はほとんど起きなかったが、対岸のヒノキの山は頂上からふもとまで木々がなぎ倒されていた。

管理が行き届いていないヒノキの森は、地面に光が届かなくなり、土が流されてしまう。そうすると、表面のやわらかい土がなくなって根が浮き上がり、水が蓄えられなくなるという。

 「良い森は降った雨のほとんどが地面にしみます。荒れている森の川は、大雨が降ると一気に増水して濁り水になりますが、良い森の川は濁りません。川にしみだしてくる水は何年も前に降った雨なのです」

 大事なのはスポンジのような「ふかふかの土」を育むこと。ふかふかの土壌であれば、降雨でもたらされた水や雪解けの水が大地に浸透していく。その水は数十年という長い歳月をかけ、地層を潜り抜け磨かれ、ミネラル分を蓄えた天然水となる。

 そのミネラルウォーターの1人当たりの消費量は33.3リットル(2020年)だが、米国(114.7リットル)やフランス(139.0リットル)、イタリア(187.7リットル)と比べてもまだ少なく、日本国内での需要はさらに拡大するとみられている。

 山田さんらのチームでは、地下水の流動モデルなどを分析。スーパーコンピューターにも匹敵する精度でシミュレーションを重ね、地下水量を算出したうえで採水しているという。

1年の半分は水源の山に赴き、森を見つめる山田さんは、「自然は決して制御しきれない」と指摘する。その自然に対する謙虚な姿勢は、「森を育てる」というより、「森を慈しむ」といった方がいいかもしれない。

 海外のミネラルウォーターの水源地では、汲みすぎによる枯渇の危機が報じられたこともあったが、少なくとも「天然水」の水源地では、そうした心配はなさそうである。厳しい蒸し暑さの残暑が続くが、熱中症予防のカギとなる水分補給のためにも、ここはありがたく、おいしい天然水をいただきたい。

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