都道府県別のコロナ向け病床使用率は、沖縄が最も高く46%。次いで島根45%、山口44%。広島は31%だった。5日時点では山口が23%で最も高かった。全国的に上昇傾向にある。
自宅療養者も最多は沖縄で4543人。東京2762人、神奈川2039人、大阪1969人。
「大学入学共通テスト」を目前に控え、日本全国の新規感染者数は1万人を超えた。文部科学省は共通テストを受験できない受験生のための救済策を急遽、発表したが、試験4日前での突如のルール変更に大学、受験生からは戸惑いが多く出ている。
感染力の強いオミクロン株の対策として、岸田文雄首相はワクチン・治療薬の早期の確保などに取り組むとしているが、AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料で、ワクチン・治療薬の確保に目途が立っていない実態がわかった。第5波では最大で1日2万5千人超の新規感染者を出したが、専門家からは「2月には2倍、3倍の陽性者が出る可能性があり、医療ひっ迫を引き起こす懸念が強い」と警鐘を鳴らす。
「我々専門家が思っている以上の速さでオミクロンの感染が拡大している。正直、恐怖感があります」
こう言うのは順天堂大の堀賢教授(感染制御学)だ。全国の感染者数は1月4日に1千人を超え、8日には8400人、そして12日には1万人を超えた。
感染が急拡大した要因は感染力の強いオミクロン株だと見られる。堀教授は昨年末、これまでのデルタ株とオミクロン株が置き換わるのは2月中旬頃、感染のピークは3月に来ると予測をしていた。しかし、附属の順天堂医院ではすでに感染者の8割がオミクロン株に代わっているという。
このスピードはこれまでの変異株を凌駕する。昨年春に大阪で医療崩壊を引き起こしたアルファ株に置き換わるのには6週間、東京五輪中に猛威をふるったデルタ株に置き換わるのに4週間かかったのに対し、オミクロン株は2週間程度で代わる勢いだと堀教授は見る。さらに、「短期間に急速に感染者が増えると、感染者数のピークが高くなります。そうすれば、重症患者も増え、医療供給体制をひっ迫させる」と言う。
他方で、いまオミクロン株に対して楽観論が出てきている。オミクロン株は感染力が強いものの、重症化率が低く、病原性がデルタ株よりも半分から6割程度少ないと言われている。前東京都知事、元厚労大臣の舛添要一氏はネット番組で「限りなく普通の風邪に近づいてきている」、テレビ番組でもお笑いコンビ・ブラックマヨネーズの小杉竜一氏が「東京の重症者は4人。これでもっと気を引き締めてとか言われると気絶しそう」などと発言し、一定の支持を集めている。
しかし、専門家の意見は違う。堀教授はこう語る。
「仮にオミクロン株の病原性がデルタ株よりも6割少ないとしても、感染者数が1.6倍増えれば、入院を必要とする患者の数は同じ。現時点で正確な予測は難しいですが、昨年夏に猛威をふるったデルタ株よりも、2倍、3倍は感染者を出す可能性がある。いまは若い人を中心に感染していますが、今後は家庭を通じて高齢者にも感染が拡大する。
今後、高齢者を中心に重症者が出て医療体制をひっ迫させる懸念があります。そのような状況になる限り、社会の行動を制限せざるを得ない。楽観論を語るには、重症化率があと一桁は低くなる必要がある」
オミクロン株の抑制策としていま重視されているのは、3回目の追加接種のためのワクチンと、治療薬だ。岸田首相は11日に、高齢者などを対象にする3回目接種の前倒し、高齢者だけではなく一般の人の接種数も増やしていく、現在供給を進める米メルク社製だけではなく、米ファイザー社の経口薬も2月中の実用化を目指すなどと表明した。
ワクチンや治療薬がしっかりと確保され、供給されれば安心だが、官邸関係者は「首相は先手先手をアピールするが、実は交渉はうまく進んでいない」と打ち明ける。
どのような状況なのか。AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料によると、ワクチンの交渉についてはこう記されている。
<追加接種に使用するワクチンについては、ファイザーワクチン1億2千万回分、モデルナワクチン7500万回分を確保済み>
<昨年12月、今年第1四半期に1800万回分のワクチンを購入することについて、武田社及びモデルナ社と合意>
<ワクチンの更なる確保や、前倒しでの輸入に向けて、モデルナ社及びファイザー社との交渉を継続する>
一見、ワクチン確保に成功しているように見えるが、官邸関係者は内部資料について、こう説明する。
「資料中に『確保済み』とあるワクチンは、菅政権時代に契約成功したもの。岸田首相が確保できたのはモデルナ追加購入分のみです。また、これらの確保済みワクチンについて、実際の供給スケジュールは見通せておらず、『交渉を継続する』という言葉でお茶を濁しているのが実態です。
年末にファイザーのブーラCEOと会談したものの、ワクチン供給交渉は進んでおらず、1・2回目でファイザーを接種した国民の大多数が3回目はモデルナでの「混合接種」を強いられることにならざるを得ない状況は、1歩も改善していません」
医療従事者からは不満の声も上がっている。都内の病院に勤める医師はこう語る。
「前倒しで接種を進めるといっているが、本当にワクチンを供給してもらえるのか現場でも不安視している。堀内(詔子)ワクチン接種推進担当大臣は何をやっているんですかね。河野太郎前大臣は『俺が令和の運び屋だ』みたいにうそぶいて、連日のようにニュースに出ていましたから、それに比べると堀内大臣は姿が見えず、何もやっていない印象しかない」
一方、重症化を防ぐとして期待が高まる治療薬だが、ファイザー社製の治療薬の交渉状況についてはどうか。先の内部資料にはこう書かれている。
<基本合意 昨年12月17日に合計200万回分の確保について、ファイザー社と合意済>
<最終合意 1月中下旬の締結を目指して調整中>
<納入時期 ファイザー社側で当初3月としていた最初の納入時期について、前倒し、2月下旬に納入、配送開始することが可能との回答。更なる前倒しに向けて調整中>
先の官邸関係者はこう説明する。
「ファイザー社製の治療薬はメルク社製よりも効果が高いとされており、確保が望まれています。首相は年末に『CEOと会談し基本合意した』と語っていましたが、いまだに最終合意には至っておらず、納入時期も早くて2月末。実際に使えるようになる前に第6波が大きく押し寄せることは避けられません。岸田首相は『先手』をアピールしますが、その実情は内閣支持率低下を恐れ、批判を避けるための場当たり的な対応です」
現場でも心配の声が上がっている。都内の医療従事者はこう語る。
「経口薬は届きましたが、1医療機関につき3人分だけです。追加で必要な場合は、申し込めばくるが、これでは必要なときに効果的な治療ができなくなる恐れがある。掛け声だけではなく、具体的に確保してもらえないと」
日本でオミクロン株がどのように猛威を振るうかは、まだわかっていないことが多い。油断は禁物といえそうだ。
(AERAdot.編集部・吉崎洋夫)
「大学入学共通テスト」を目前に控え、日本全国の新規感染者数は1万人を超えた。文部科学省は共通テストを受験できない受験生のための救済策を急遽、発表したが、試験4日前での突如のルール変更に大学、受験生からは戸惑いが多く出ている。
感染力の強いオミクロン株の対策として、岸田文雄首相はワクチン・治療薬の早期の確保などに取り組むとしているが、AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料で、ワクチン・治療薬の確保に目途が立っていない実態がわかった。第5波では最大で1日2万5千人超の新規感染者を出したが、専門家からは「2月には2倍、3倍の陽性者が出る可能性があり、医療ひっ迫を引き起こす懸念が強い」と警鐘を鳴らす。
「我々専門家が思っている以上の速さでオミクロンの感染が拡大している。正直、恐怖感があります」
こう言うのは順天堂大の堀賢教授(感染制御学)だ。全国の感染者数は1月4日に1千人を超え、8日には8400人、そして12日には1万人を超えた。
感染が急拡大した要因は感染力の強いオミクロン株だと見られる。堀教授は昨年末、これまでのデルタ株とオミクロン株が置き換わるのは2月中旬頃、感染のピークは3月に来ると予測をしていた。しかし、附属の順天堂医院ではすでに感染者の8割がオミクロン株に代わっているという。
このスピードはこれまでの変異株を凌駕する。昨年春に大阪で医療崩壊を引き起こしたアルファ株に置き換わるのには6週間、東京五輪中に猛威をふるったデルタ株に置き換わるのに4週間かかったのに対し、オミクロン株は2週間程度で代わる勢いだと堀教授は見る。さらに、「短期間に急速に感染者が増えると、感染者数のピークが高くなります。そうすれば、重症患者も増え、医療供給体制をひっ迫させる」と言う。
他方で、いまオミクロン株に対して楽観論が出てきている。オミクロン株は感染力が強いものの、重症化率が低く、病原性がデルタ株よりも半分から6割程度少ないと言われている。前東京都知事、元厚労大臣の舛添要一氏はネット番組で「限りなく普通の風邪に近づいてきている」、テレビ番組でもお笑いコンビ・ブラックマヨネーズの小杉竜一氏が「東京の重症者は4人。これでもっと気を引き締めてとか言われると気絶しそう」などと発言し、一定の支持を集めている。
しかし、専門家の意見は違う。堀教授はこう語る。
「仮にオミクロン株の病原性がデルタ株よりも6割少ないとしても、感染者数が1.6倍増えれば、入院を必要とする患者の数は同じ。現時点で正確な予測は難しいですが、昨年夏に猛威をふるったデルタ株よりも、2倍、3倍は感染者を出す可能性がある。いまは若い人を中心に感染していますが、今後は家庭を通じて高齢者にも感染が拡大する。
今後、高齢者を中心に重症者が出て医療体制をひっ迫させる懸念があります。そのような状況になる限り、社会の行動を制限せざるを得ない。楽観論を語るには、重症化率があと一桁は低くなる必要がある」
オミクロン株の抑制策としていま重視されているのは、3回目の追加接種のためのワクチンと、治療薬だ。岸田首相は11日に、高齢者などを対象にする3回目接種の前倒し、高齢者だけではなく一般の人の接種数も増やしていく、現在供給を進める米メルク社製だけではなく、米ファイザー社の経口薬も2月中の実用化を目指すなどと表明した。
ワクチンや治療薬がしっかりと確保され、供給されれば安心だが、官邸関係者は「首相は先手先手をアピールするが、実は交渉はうまく進んでいない」と打ち明ける。
どのような状況なのか。AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料によると、ワクチンの交渉についてはこう記されている。
<追加接種に使用するワクチンについては、ファイザーワクチン1億2千万回分、モデルナワクチン7500万回分を確保済み>
<昨年12月、今年第1四半期に1800万回分のワクチンを購入することについて、武田社及びモデルナ社と合意>
<ワクチンの更なる確保や、前倒しでの輸入に向けて、モデルナ社及びファイザー社との交渉を継続する>
一見、ワクチン確保に成功しているように見えるが、官邸関係者は内部資料について、こう説明する。
「資料中に『確保済み』とあるワクチンは、菅政権時代に契約成功したもの。岸田首相が確保できたのはモデルナ追加購入分のみです。また、これらの確保済みワクチンについて、実際の供給スケジュールは見通せておらず、『交渉を継続する』という言葉でお茶を濁しているのが実態です。
年末にファイザーのブーラCEOと会談したものの、ワクチン供給交渉は進んでおらず、1・2回目でファイザーを接種した国民の大多数が3回目はモデルナでの「混合接種」を強いられることにならざるを得ない状況は、1歩も改善していません」
医療従事者からは不満の声も上がっている。都内の病院に勤める医師はこう語る。
「前倒しで接種を進めるといっているが、本当にワクチンを供給してもらえるのか現場でも不安視している。堀内(詔子)ワクチン接種推進担当大臣は何をやっているんですかね。河野太郎前大臣は『俺が令和の運び屋だ』みたいにうそぶいて、連日のようにニュースに出ていましたから、それに比べると堀内大臣は姿が見えず、何もやっていない印象しかない」
一方、重症化を防ぐとして期待が高まる治療薬だが、ファイザー社製の治療薬の交渉状況についてはどうか。先の内部資料にはこう書かれている。
<基本合意 昨年12月17日に合計200万回分の確保について、ファイザー社と合意済>
<最終合意 1月中下旬の締結を目指して調整中>
<納入時期 ファイザー社側で当初3月としていた最初の納入時期について、前倒し、2月下旬に納入、配送開始することが可能との回答。更なる前倒しに向けて調整中>
先の官邸関係者はこう説明する。
「ファイザー社製の治療薬はメルク社製よりも効果が高いとされており、確保が望まれています。首相は年末に『CEOと会談し基本合意した』と語っていましたが、いまだに最終合意には至っておらず、納入時期も早くて2月末。実際に使えるようになる前に第6波が大きく押し寄せることは避けられません。岸田首相は『先手』をアピールしますが、その実情は内閣支持率低下を恐れ、批判を避けるための場当たり的な対応です」
現場でも心配の声が上がっている。都内の医療従事者はこう語る。
「経口薬は届きましたが、1医療機関につき3人分だけです。追加で必要な場合は、申し込めばくるが、これでは必要なときに効果的な治療ができなくなる恐れがある。掛け声だけではなく、具体的に確保してもらえないと」
日本でオミクロン株がどのように猛威を振るうかは、まだわかっていないことが多い。油断は禁物といえそうだ。
児童相談所が対応した児童虐待件数と虐待死した児童数
18歳未満の子どもへの児童虐待は、30年連続で増え続け、2020年度は過去最多の20万5029件になった。20万件を超えたのは初めて。前年度より5・8%(1万1249件)多くなった。厚生労働省が27日、全国の児童相談所(児相)が相談対応した件数を公表した。
件数が増えているのは、相談経路の50・5%を占める「警察等」からの連絡が増えていることが大きい。通報で駆けつけた警察官が、夫婦間の暴力が子どもの前で行われる「面前DV」を心理的虐待と判断して児相に連絡するケースが目立つという。
相談の経路はこのほか、「近隣・知人」の13・5%、「家族・親戚」の8・2%と続いた。「学校」が6・7%と前年度から0・5ポイント減っており、厚労省は「新型コロナウイルスの感染拡大による休校が影響した可能性がある」としており、虐待の見落としが懸念される。
虐待のタイプ別では「心理的虐待」が12万1325件(59・2%)で最も多かった。「身体的虐待」が5万33件(24・4%)で続き、「ネグレクト」(育児放棄)が3万1420件(15・3%)だった。
新型コロナウイルスの感染拡大による自粛で、親と子どもが自宅で過ごす時間が長くなり、児童虐待の増加を懸念する声もあったが、前年度比の増加幅は18年度(19・5%増)、19年度(21・2%)を下回った。また、20年度の月別の件数では、最初の緊急事態宣言が出た4月が前年同月より13%増えた一方、宣言が解除されていた6月も前年水準を17%上回った。厚労省は「感染状況との関連性はみられない」(担当者)と分析する。