日本の薬草酒 蘭麝酒(らんじゃ) | 西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

BenFiddichの店名は店主の鹿山博康から由来【Ben】→【山】【Fiddich】→【鹿】
畑を持つ農家バーテンダーであり『Farm to glass』を提唱
日本在来種の自生する草根木皮をもカクテルに変える新しい可能性を模索
アブサン、薬草酒、古酒がゴロゴロ転がるBar

日本には様々な歴史ある電灯薬草酒がある。
中国から伝わったものもあれば日本独自に
進化したものまで。例えば

養命酒、桑酒、順徳酒、保命酒、梅酒
忍冬酒、紫蘇酒、あやすぎ酒、せうせう酒、
延寿酒、蘭麝酒機那サフラン酒、皇帝酒、
陶陶酒、浅芽酒霙酒、枸杞酒、赤酒、
菖蒲酒、蝮酒、養老酒、鳩酒、地黄酒
五加皮酒、豆淋酒、山葡萄酒、枸杞酒
榧酒、栢酒、延命酒

などがある。

そのなかで今日は蘭麝酒(らんじゃ)について。

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蘭麝酒は福井県福井市の
越前国一乗谷浅倉氏遺跡から程近い青木家に400年伝わる味醂薬草酒。その名は青木蘭麝堂

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青木家は浅倉氏一門であり武将の子孫である。
浅倉氏滅亡後も
青木家がレシピを代々受け継ぎ現在に至る。

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(当時の明治時代の写真)↑


蘭麝酒の名前の由来は
奈良東大寺正倉院に収蔵されている
香木「蘭奢待」から因んでいる。
あの織田信長も威光にあやかり
削りとった有名なアレ

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香木のように香りの良いお酒であると謳う為に
名前を借りた形だ。

蘭麝酒は味醂をベースにシナモン、クローブなどの十数種類の生薬を配合。(レシピは秘密)

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青木家は1799年(寛政11年)から日本酒造りを商売としてスタートをさせており
蘭麝酒造りは1851年(嘉永4年)から浅倉家より授かったレシピを元に復刻スタートさせた。



そう、僕にとって1851年の江戸後期に
蘭麝酒造りを復刻し再開したのが
とても興味深い。

この1800年代の江戸時代はというと
薬草酒というのものが一般の方々にも
広く普及されてきた時代だ。
代表格が忍冬酒、保命酒だろう。
この二大巨頭は様々な諸藩で作られ
忍冬酒は現在の和歌山、愛知、三重、静岡
保命酒は広島、山口、岡山、兵庫、愛知
の地で作られた。共に固有名詞が強くその名前にあやかって各諸藩で製造され同一銘柄名であっても製造方法が違ったりするほど実は広義だ。

ただ、この蘭麝酒に至ってはここ福井県福井市の
一乗谷の地でしか造られていない。
模造品も生まれなかった。

保命酒の誕生は1600年代〜
忍冬酒の誕生は1500年代〜
蘭麝酒の復刻誕生は1851年だが
始まりは1500年代〜

同じく歴史は長い。

蘭麝酒は一度途絶えている。
復活した理由は鹿山の憶測だが
名前は違えど保命酒、忍冬酒の1800年代の隆盛に追随した形であろう。

忍冬酒は徳川家の庇護を受けた御用達であり
保命酒も福山藩の庇護を受けた銘酒だ。
浅倉家ゆかりの蘭麝酒はそもそも江戸時代に入る前に織田信長により滅ぼされる。賊軍の銘酒。
故に保命酒、忍冬酒のようにはいかなかったのだろう。

保命酒については以前記事にしたので
見てほしい↓


蘭麝酒でも保命酒、忍冬酒にしても
製法としては
味醂をベースに酒精強化されたリキュールだ。
味醂に様々なボタニカルが浸漬されたリキュールだと思って良い。
シナモン、クローブ、五味子、地黄、当帰、甘草
など歴史的に中国から流入してきたボタニカルを浸漬させる。

BenFiddichでは
これを冷蔵庫で冷やしてストレートも良い。

はたまたカクテルの副材料にも使えるだろう。

例えば『マンハッタン』というカクテルがある。通常は

ウィスキー45ml
スウィートベルモット15ml
アンゴスチェラビターズ1dash
であるが

BenFiddichでは

『蘭麝マンハッタン』
ジャパニーズウィスキー45ml
蘭麝酒15ml
アンゴスチェラビターズ1dash

で作る事ができる。
これはスウィートベルモットを蘭麝酒に置き換えただけだ。

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はたまた豆乳に甘味付け代わりに入れても
健康的だろう。

蘭麝酒30ml
豆乳90ml

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現代に至っても蘭麝酒がここ福井の地で
脈々と受け継がれているのは歴史の重み。
ジャパニーズウィスキー、日本酒が世界的地位を
確立しているならば僕は伝統と歴史が培った
ボタニカル味醂リキュールである蘭麝酒を
ジャパニーズ.トラディショナル.リキュールとしてバーテンダーとして広くお客様に伝えてゆきたい

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蘭麝酒の製造所の横にそびえ立つ
樹齢500年の大ケヤキ

蘭麝酒の歴史と共に寄り添っている