中国 白酒蒸留所へ | 西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

BenFiddichの店名は店主の鹿山博康から由来【Ben】→【山】【Fiddich】→【鹿】
畑を持つ農家バーテンダーであり『Farm to glass』を提唱
日本在来種の自生する草根木皮をもカクテルに変える新しい可能性を模索
アブサン、薬草酒、古酒がゴロゴロ転がるBar

BenFiddich店主の鹿山です。


竹で作られる竹白酒がある。その前に白酒について日本では馴染みがないので小話を。

白酒(パイチュウ)といえば中国が誇る伝統蒸留酒であり、中華料理の円卓で出されるアレだ。

誰しもがもしかしたらショットでグィッとやって
ネガティブな思い出があるかもしれない。

鹿山も数年前に四川省で中国の白酒協会会長の人々と中華式の本気の円卓の歓待を受けたことがあった。それはそれはもう歓迎される側は飲めなくなるまで飲まされる。
まだ飲めるのに飲まない】という行為は
歓迎する側に対してとても失礼である。

歓迎される側は限界の壁を越えた時に不思議と友情が芽生えてくる。そんな昔のアニメの原っぱで殴り合いのケンカの後に大の字になって肩を組んで笑って生まれる友情が中華式のオールドファッションなコミュニケーションだ。

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四川省で白酒協会会長と蒸留所の人々と歓談した時の画像



然しながら実はここ数年中国の若者の間ではそんなオールドファッションスタイルを毛嫌いして
白酒はおっさんや成金が飲む酒というレッテルを貼られている。そんなイメージ払拭を図ろうと
白酒の様々なメーカーは新しいスタイルを模索している。
白酒をベースにしたジンを作ったり、はたまたアルコール度数40度の白酒(通常は50度以上)をリリースしカクテルベースとしての白酒があったりする。
ヨーロッパのバーテンダーの間でも白酒カクテルコンペティションを開催して優勝者は白酒のアイコン的存在となり啓蒙活動に従事する。
日本にはまだまだ浸透してないが数年前にヨーロッパのカクテルバーに行くと白酒を使ったカクテルをたまに見かける事があった。少しずつ浸透していってるのだろう。

僕は白酒が好きだ。
メキシコでいうとこのメスカルのような立ち位置であろう。カクテルに1TSPを注ぐと桃やバナナのような膨らみが加わる。
試しにジントニックに1TSPの白酒を加えてほしい。最高だ。

【白酒の原料と作り方】

白酒の原料は穀物原料。主に
高粱(コーリャン)黍(キビ)、麦、餅米、トウモロコシなど様々な配合であり
アメリカンウィスキーでいう小麦、ライ、トウモロコシの各社秘伝の黄金比が中国の白酒でも同じく各社腕の見せ所だ。

【竹白酒の作り方は?】

竹白酒はこれに竹を粉砕したのを合わせ醸し蒸留する。その後生きた『生竹』に熟成させ高級白酒となる。使う竹は孟宗竹。

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竹白酒蒸留所の白酒の原料
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生きた生竹の節ごとに白酒を竹熟成
目減りが激しいので高級酒となる。
冬は90日間熟成。
夏や雨が多い季節は60日ほど。
地下からも水を吸うので
63度の原酒の白酒注入量 500ミリが
取り出し量 603ミリとなるとのこと。
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これがその竹白酒



造り方のプロセスはいわゆる白酒と変わらない。
【固体発酵】という世界では類を見ない液状ではない発酵の仕方でそこから水蒸気を当ててアルコールを回収する。

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固体発酵の発酵蔵
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中身はこうなっている。土中発酵となる。
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水蒸気を当てて蒸溜機
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残渣は豚などの飼料となる。



2019年に日本大使館のツテでこの竹白酒が
面白い取り組みをしているとの事で白酒の故郷
四川省瀘州市(Luzhou)に赴き見学をさせて頂いた。
四川省は成都や重慶などの大都市圏以外では
内陸部特有の平地が少ない山岳地帯の貧困地域が数多く存在する

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白酒の故郷、瀘州(Luzhou)は
平地が少なく山がち




竹白酒の面白い取り組みとはその販売方法。

瀘州(Luzhou)の山間の村人や仕事がない人に
無償でボトルを手渡しそのボトルが売れたら売り上げの何%かは本人の手に渡る。
そのような販売方法で山間の村人が仕事や別の用事で都市部に行き来するついでにその竹白酒も販売してもらう。売る本人も竹白酒が用事のついでに売れれば良いのでプレッシャーにならない。

本当にその方法で売れるのか?

と思うがうまくいってるらしい。ふだんから稼ぎになる仕事を持っていない貧困地域の人だと稀にめちゃくちゃ売り捌くエースが存在するのだ。

こういったやり方は日本に合うのかどうかは意見が分かれるところだが瀘州(Luzhou)の仕事がない人にとっては助けになっているのだと思う。


最後に

僕が初めて中国に行ったのは2013年。
最後に行ったのは2020年初頭のコロナ前。
計十数回は渡航してるけど年々目覚ましい進化を遂げている。最後に中国へ行った2020年初頭に至っては慣れてないところだと現金はおろかクレジットカードで支払おうとすると嫌な顔される。
全てアプリ内で済ませられるのだ。

僕はバーテンダーとしての仕事で中国へ行くので料飲業界及びBar業界の目線になるけど中国人のバーテンダーは非常に勉強熱心だ。
中国のバーテンダー相手にセミナーをすると質問の嵐が飛んで収拾がつかなくなるくらいぶつかってくる。みんな知識、技術を吸収して大きな夢があるのだろう。あのぶつかってくる強いハングリー精神は僕は見習いたいと思う。