鹿山です
2018年7月1日をもって
Bar BenFiddichは
五周年を迎える
まだまだ五年というと若造、若輩
オープン当初
1人で切り盛りしていたBenFiddichは
今では同ビルに二店舗目をオープン
鹿山含めた5人で切り盛りをしているBarとなった
1人でやっていた頃はある種の独身気分で自由気まま
今では従業員も増えると家族の父親になった気分
これも支えてくださったお客様や関係者、弊社バーテンダーのお陰でここまでこれたと思う
感謝
周年パーティーなどを開催し
自分が主役になるというのは
鹿山は気恥ずかしいし、
あまり柄ではない
ただ
五年という十年に向けた一つの節目として
自分の中ではやはり感慨深いし、考えさせられる
なので、感謝の意を込めて
鹿山のコレクションを一つだけ開けたいと思う
鹿山のabsintheコレクションとしても一番古いボトルいや、absintheではない
absintheの原型だ
absintheの原型ってなんだ?
そう、vermouth(ベルモット)だ
ただ、歴史上のワインにハーブ、スパイスを浸漬させたものの種類を一口でvermouthというのはあまりに広義
割愛するが、
紀元前の文明時代からどの地域にもワインに薬草を漬け込み
医療目的とした滋養強壮はあったのだ
そこにabsintheの主原料である
ニガヨモギ(wormwood)は古くから
vermouthの属性では多く使われている
僕らの知ってる嗜好品としてのvermouthの歴史の確立は1800年代以降
なんで1800年代以降なのか?
大きくは
1700年代後期にイギリスに端を発した産業革命が起き世界観が変わる
物流交通網の整備、富の拡大が増えれば都市部の嗜好品も増え、
さらには現代的医療が確立されてくれば
立証不透明な民間医療薬だった薬酒も立場は変わる
1700年代の終わりには薬液としてのvermouthの使用は終焉に向かう
特にはイタリアとフランスでは
食前酒としての嗜好品として使用が増える
その証拠に
1786年イタリアでは嗜好品としてのvermouthの始祖
Antonio Benedetto Carpano氏が
カルパノ社を興す
いわゆる今のイタリアンベルモットのスウィートベルモットだ
いや、フランスも負けてないぞ
1813年フランス
Joseph Noilly氏によって
みんな大好きノイリープラットも確立
フレンチベルモットの元祖であり、いわゆるドライベルモットだ
この産業革命以後の嗜好品の拡大、物流交通網のインフラ、現代医療の進歩による
vermouth以外にも様々な薬酒というのは嗜好品に転換
アマーロ、アブサン、シャルトリューズ、ベネディクティン、etc...こういった1800年以前、薬酒だったものが薬酒の嗜好品としてのブランドを確立し、(薬としての立ち位置が必要なくなる)1800年代以降に形となる
補足するならば
産業革命以前もvermouthは流通している
大航海時代には長い航海に耐えるため
度数を上げ、糖分を加えて保存性を高めて船に積み込まれている。
そう、暑い南方の国へ酒類を搬送するのに
vermouthは適していた。
バーテンダーなら皆が知ってるイギリスのインド植民地時代のトニックウォーターのキニーネによる
マラリア予防の歴史は周知の通り
しかし、キニーネによるトニックウォーターだけではなく
17世紀、18世紀には医療目的かつ嗜好品として
『wormwood wine』『ニガヨモギワイン』が
インド植民地で
普及している。
これは白ワインにニガヨモギを浸漬し、糖分を加えたものだ。
これは胃腸を整えるために推奨された
話は戻り
産業革命以降,以前の世界と世界観の変換により
vermouthが完全に嗜好品となったことは書いた
それではBenFiddichにあるこちらの
1777年以前のabsintheの原型であるボトルについて
書きたい
ボトルとしては1777年以前
なぜ1777年以前かは後ほど書く
その前にこのボトルは
カテゴリとしては
『Vin d'Absinthe de table』
【アブサンワイン】だ
日本のBarブックの歴史教科書に書いてある
今のvermouthの語源は
1500年代 ドイツにあった
白ワインにニガヨモギの花を浸漬し、砂糖を加えた
Wermut(ニガヨモギ)に由来する。
このボトルはいわゆるその類の薬屋で売られていた
アブサンワイン
ラベルを読み解こう
左上からCADET→人の名前
Apothicaire→調薬草師
Rue st Honore N 108 a Paris→薬局の住所
Wermouth?→印字が擦れてわかりづらい(ベルモットと記載されてあるはず)
Vin d'Absinthe de table→アブサンワイン
ラベルの周りの蛇の絵面→ニガヨモギの象徴
旧約聖書より
エデンの園から追放された蛇が這った後に生えた草が【wormwood】ニガヨモギを意味してる(と思う)
ここで一番大事であり
1777年以前とわかるのが
【Apothicaire】の記載だ
Apothicaire→調薬草師
1777年
当時のブルボン朝 フランス王国のルイ16世の号令のもと法律が作られ
調薬草師が薬剤師になりライセンス制度になる
詳しくはこちら
↓
https://fr.m.wikipedia.org/wiki/Apothicaire
【Apothicaire】→【Pharmacie】
になる
日本語だと言葉変換するならば
【調薬草師】→【調剤師】
フランス行くと薬局がPharmacieなのはその名残
この1777年から
王立薬学大学が創立され、一般学習内容が制定され
薬局(Pharmacie)
の店主のみが薬剤師免許を取得でき、その資格のあるもののみが、薬を調合・製造できるという変更内容
調薬草師や類似のカテゴリーである、スパイス調合家、聖職についている人達の薬作りは、禁止されたのである
よってこのボトルはApothicaire表記
1777年以前ということがわかる
いわゆるabsintheの原型なのだ
そう薬です
このフランス革命以前のブルボン朝末期に仕込まれたであろう代物をどうやって手に入れたのか次回書く
続く
今宵、西新宿Bar BenFiddichお待ちしております