②後編 1777年以前のアブサンの原型であるボトルについて | 西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

BenFiddichの店名は店主の鹿山博康から由来【Ben】→【山】【Fiddich】→【鹿】
畑を持つ農家バーテンダーであり『Farm to glass』を提唱
日本在来種の自生する草根木皮をもカクテルに変える新しい可能性を模索
アブサン、薬草酒、古酒がゴロゴロ転がるBar

前回は弊社 BenFiddichにある一番古いボトルである
1777年以前のアブサンの原型ボトルについて】
の記事を書いた。

今回はその続き
及びこのボトルを得た経緯

まずはラベル情報をおさらいしよう
左上から
CADET→人の名前

Apothicaire→調薬草師

Rue st Honore N 108 a Paris→薬局の住所

Wermouth?→印字が擦れてわかりづらい(ベルモットと記載されてるはず)

Vin d'Absinthe de table→アブサンワイン

ラベルの周りの蛇の絵面→ニガヨモギの象徴
旧約聖書より
エデンの園から追放された蛇が這った後に生えた草が
【wormwood】ニガヨモギを意味してる

ここで一番大事であり
1777年以前とわかるのが
【Apothicaire】の記載

Apothicaire→調薬草師


1777年

当時のブルボン朝フランス王国のルイ16世の号令のもと発令された法律が

調薬草師が薬剤師になりライセンス制度になる


詳しくはこちら

https://fr.m.wikipedia.org/wiki/Apothicaire


【Apothicaire】→【Pharmacie】

になる


日本語だと言語変換するならば

【調薬草師】→【調剤師】


この1777年から

王立薬学大学が創立され、一般学習内容が制定され

薬局(Pharmacie)

の店主のみが薬剤師免許を取得でき、その資格のあるもののみが、薬を調合・製造できるという変更内容


調薬草師や類似のカテゴリーである、スパイス調合家、聖職についている人達の薬作りは、禁止されたのである



よってこのボトルはApothicaire表記

1777年以前ということがわかる






これは

いわゆるabsintheの原型であり

【Vin d'Absinthe de table】



薬屋で売られていた胃薬としての用途も兼ねている



中身は

白ワインにアルコール強化、ニガヨモギを漬け込み砂糖で甘みをつけたもの

いわゆるvermouth


では今のabsintheが

今の味わいになったのは

いつ頃のことだろう


歴史の針を進めると


スイス ヌーシャテル州 ヴァルドトラヴェール地方に伝わる

近隣地域伝統薬用酒に目をつけたのが



①商業absintheの始祖 デュビエ公爵

『Dubied pere et Fils』1798年〜

スイス ヌーシャテル州 ヴァル.ド.トラヴェール地方の薬用酒を初めて商業化


さらに商業absintheの始祖デュビエ公爵の娘婿にあたるアンリ.ルイ.ペルノ氏が独立し

『Pernod et Fils』1805年〜創業

後の世界的アブサンムーブメントを作る

(現世界酒類総合メーカーのペルノリカール社だ)

(フランスのポンタルリエにある大規模蒸留所)



1800年〜absintheが商業化されてから

年を追うごとに今のabsintheの味わいになってゆく


いわゆるabsintheの三大ボタニカルである

アニス、フェンネルのアネトールの含有量が徐々に増えてゆく

このアニス、フェンネルは

スイス ヌーシャテル州のヴァル.ド.トラヴェール地方の自生植物ではない。


このアニス、フェンネルのアネトールの自然甘味成分の嗜好品は南ヨーロッパ圏の十八番だ。

この南ヨーロッパのアネトール文化と

スイスの高山地帯ヴァル.ド.トラヴェール地方に自生する

ニガヨモギを主体にした緑色系ハーブが合わさったことにより今のabsintheの味わいが誕生する






鹿山が入手した

薬屋で売られていた

【Vin d'Absinthe de table】アブサンワイン

1700年代のヴァル.ド.トラヴェール地方で作られた

地域伝統薬用酒

とは違っているが

このabsintheの代名詞であるニガヨモギを主体にした

胃薬という点では共通する





ではこの

【Vin d'Absinthe de table】はどこで手に入れたのか?





毎年10月にフランスアブサンの聖地であるポンタルリエの街にAbsinthiades(アブサンティアード)というイベントが存在する
(ここ)
absinthe生産者
absintheに関係する酒類従事者
absintheをこよなく愛するものが世界中から集結するのだ


鹿山もいてもたってもいられず2017年に参加をしてきた。



このイベントの趣旨は
各蒸留所の自慢のabsintheを出品し、
それを審査員達が得点をつけその年の
ゴールドメダル
シルバー
ブロンズ
の賞を設ける品評会だ。

集まる来客としては地元の人たち
及び外からは
国別としてはフランス以外にも近隣国のスイス、ドイツ、イタリア、チェコからのお客様が多く、遠くからはアメリカ、オーストラリア、南アフリカ、我々日本人と国際色が豊かだ

それと同時にabsintheの歴史にまつわる展示品

アンティークのabsintheグッズの販売などをし、
このポンタルリエの街は
absintheloverの人々の熱気で渦巻き、一つの町興しとなっている

19世紀の古いabsintheスプーンなど当時のアンティーク品が並ぶ

加水用カラフェ、ノベルティの灰皿

absintheファウンテン


19世紀のアンティークのアブサングラス


無料試飲コーナーも並ぶ
















そこで見つけてしまった
















どーん!Vin d'Absinthe de table

アブサン界において有名な
パリからほど近い
フランス オーヴェル.シュル.オワーズにある
アブサン博物館(Le musee de Absinthe)
(ここは最後にゴッホが死去したラヴー旅館にほど近い場所にあり、そこは流石である)


そこの館長であり
アブサン界のボスであり、
著名な収集家及びアブサン研究家でもある
Marie Claude Delahaya(マリー.クロード.ドラエ)
の所有するコレクションが
同じものを二つ持っているとのことで
一本出品されていたのだ















速攻ATMに走り大人買いだ











そしてBenFiddichへ
これまでつらつら書いたが
じゃあこれ美味いのか?




美味しいか不味いかなら判断としては美味しくはない

液面も大分低下している










歴史を飲む






ということだと思う






嗜好品だから






鹿山はそこに喜びを感じられる







歴史が好きだから







ものとして1777年以前であり
フランス革命前だ





その時代のものが現代の2018年に存在する
実在した歴史に想いを馳せて夢想しながら
お酒を楽しめる人なら喜びを分かち合いたい










今宵
西新宿 Bar BenFiddichお待ちしております