福井県立恐竜博物館で、獣脚類のような肉食恐竜もいれば、その餌食となった草食恐竜も巨体を林立させている。
頭の高さは地上から11メートル、4階建てビルほど
例えば、肉食の獣脚類ティラノサウルスと並んで、その大きさからどこの博物館でも人気のブラキオサウルス(大型竜脚類)である(写真)。
大きな体躯にもかかわらず小さな頭は、見上げるほど。その高さは、4階建てビルに匹敵する11メートルもある。体長は22メートルだ。
その隣は、マメンチサウルスだ(写真)。首が異常に長く、全長の半分を占める。首が長いのは、首の骨である頸椎が19個もあるからだ。あまりにも長いので、適切な位置から撮ろうと思っても、うまくカメラのフレーム内に収まらなかった。
マメンチサウルスの長すぎる首
こんなに首が長かったら、バランスをとるのに苦労しただろう。また頭の先に血液を送るのにも、心臓と頸動脈に負担がかかったはずだ。
頸椎の構造から見て、長い首をもたげて高い樹上の葉を食べるのには適応していなかったらしい。むしろ地表近くの草をそれだけ広範囲に食べられたことになる。
もう1つ、非合理的な進化を説明するのに有効な仮説は、「性選択」説だ。現生の種で最も適切な例を挙げれば、クジャクのオスの大きな尾羽である。あれは、メスをどれだけ引き寄せられかを競った結果、進化したものだ。クジャクのオスのあれだけ大きく派手な尾羽は、捕食者に目立つし、また飛びかかってきた捕食者から逃げるのにも大きな尾羽は大きなハンデになる。
性選択で説明できる
ダーウィンの自然淘汰説からは、決して説明できない生存に不利な非合理的な尾羽だが、オスがそれで多くのメスを引き寄せられるとすれば、それだけオスの尾羽が長く派手な遺伝子がクジャクの中に広がる。それが、現生のクジャクのオスなのだ。
ちなみに首の長さで、現生種で最も有名なキリンも、あの長い首は、樹上の葉を食べやすいからではなく、長い首のオスほどメスを獲得できるという性選択で説明できる。実際、メスをめぐってオス同士が争う、長い首を振り回す「ネッキング」では、首の長い方が有利である。
マメンチサウルスの長すぎる首も、オスのそれがメスに好まれ、選ばれたから、次第にそうしたオスが選択され、性別を問わず、長い首の個体が生まれるように進化したと考えられるのだ。
肉食恐竜も餌に困らなかった、これだけ大型草食恐竜
そのそばに、別の大型竜脚類もいる。ルーフェンゴサウルスだ(写真)。
これらがすべて前回紹介した肉食の獣脚類と同時・同所的に生きていたわけではないが、これだけ大型の草食恐竜がいたら、肉食恐竜も餌には不自由しなかっただろう。
昨年の今日の日記:「エチオピア紀行(185):NME=古いばかりではない、60万年前のホミニン頭蓋のボドの謎」