まだ正式の乗鞍岳登山口前のなだらかな歩きやすい砂利道を進む。
右手に不消ヶ池(きえずがいけ)が見え(下の写真の上)、さらに様々な高山植物の花を楽しむ(下の写真の中央と下)。
斜面の大雪渓を観て
大雪渓が見えてきた(写真)。リフトなんてないが、夏スキーを楽しめる場所として有名で、板を担いで上端まで登り、滑り降りてくる。
滑降距離は1キロ近くあるであろうか。
夏スキーを楽しむ人たちが、まるでアリのように見える。
現代は地球温暖化の時代だから、温暖化がさらに進むと、この大雪渓もいずれ消えるかもしれない。しかし地球軌道の振れ、地軸の振れなどで(「ミランコヴィッチ・サイクル」という循環が知られている)一転して氷河期に入れば、ここにも大きな山岳氷河が発達するだろう。
ちなみにミランコヴィッチ・サイクルの効果によれば、温暖期(間氷期)は、二酸化炭素などの温暖化効果ガスを排出し続ける人間活動の影響さえなければ今がピークで、そろそろ氷河期への坂を転げ出して良い頃だ。
氷河期の再来か否かに思いをはせる
氷河期再来か否かについて2説があって、圧倒的多数派は二酸化炭素などの温暖化効果ガスの削減が進まない限りもはや氷河期は来ないというもの、そして少数派だがミランコヴィッチ・サイクルによる地球の寒冷化は人間活動の効果を打ち消し、やがて地球は新しい氷河期に入る、というものがある。
どちらに転んでも、将来の人間活動にとって影響は大きい。
僕は以前、どちらが人類にとって望ましくないかをある第四紀学者に訪ねた時、氏は新氷河期の到来の方が悪影響がある、と答えた。
氷河期再来なら文明の崩壊?
新氷河期が来れば、両極と高山に氷床・氷河が発達し、地球の水が陸地に貼り付けられ、海水準が劇的に下がるので(1万2000年前に終わった最終氷河期のピーク=約2万年前=には最大100メートルほど海水準は低下した)、現在の港湾はすべて内陸になるので使用不能になる。
現在の穀倉地帯の多くは、寒冷化のために作物栽培が不可能になる。世界的な大飢饉が発生するだろう。
つまり作物は育たず世界的な食糧危機が訪れる懸念があり、また海上輸送の麻痺から食料・エネルギー・鉱物資源などの供給途絶が起こる。
つまりただ寒くなるというだけでなく、地球文明の崩壊の恐れがあるというのだ。
1.2万年前に終わった氷河期以降に農耕牧畜始まり、文明社会へ
そう言えば、人類最古のシュメール文明の始まりは、1.2万年前に氷河期が終わり、それにより農耕牧畜が開始された延長上の約6000年前であった。この頃、地球は氷河期以降で最も温暖で、「ヒプシサーマル(気候最良期)」と呼ばれる。アフリカやオーストラリアの乾燥地が湿潤になり、現在サハラ砂漠の広がる一帯は緑の植生が広がっていた。
最終氷河期終結以降、人類、文明社会は小氷期などのごく短期の「寒の戻り」以外、氷河期を体験していない(新氷河期が襲った場合のカタストロフィーについては、過去の06年11月30日付日記:「氷河時代のカタストロフィー:ローレンタイド氷床、サフル大陸」、06年11月28日付日記:「『デイ・アフター・トゥモロー』:ヤンガー・ドリアス期、氷河期」を参照)。
ついに「肩の小屋」に
それが不安である。
それなら多少の温暖化の方がまだマシかも、と思うが、それにしても今夏の暑さを思えば、それも具合が悪い。
登山記から横道に逸れた。歩き始めて40分、僕たちはついに「肩の小屋」の後の登山口にたどりついた(写真)。
昨年の今日の日記:「北朝鮮の中距離弾道ミサイル『火星12』のグアム撃ち込み恫喝、果たしてアメリカは撃墜するか、できるか?」