成り上がり金満家の品格のなさが露呈された1エピソードである。
 イギリスのエリザベス女王が、昨年10月に国賓として訪英したスターリニスト中国の習近平一行(写真下の上の左は女王の夫君のエディンバラ公フィリップ王配)の行状に対し、「とても無礼だった」と不満を述べていた様子がテレビカメラのマイクに拾われ、これが映像とともに、BBC放送などに報じられた。


訪英した習近平夫妻との記念撮影

晩餐会で


 その一部始終は、以下のとおり。


習近平訪英時の警備責任者にエリザベス女王が園遊会でねぎらい
 それによると、女王の生誕90歳を祝し、バッキンガム宮殿で去る10日に開かれた園遊会で、習近平夫妻の警備を監督したロンドン警視庁の女性警視長のルーシー・ドルシ氏を紹介された女王は、「まあ、お気の毒。(貴女、警備役に当たって)運が悪かったわね」と、労をねぎらうように話しかけた(写真=左はドルシ氏)。それに対しドルシ氏も、「あの時はかなりの試練でした」と答えた。随員も、女王に「中国側に非常に業務を妨げられました」と説明を加えた。


園遊会でドルシ氏をねぎらうエリザベス女王

 さらに女王は、中国駐在で習近平らとともに一時帰国していたバーバラ・ウッドワード大使に対しても、「(習近平らは)とても無礼だった」(They were very rude to the Ambassador.)と、話をふった。ドルシ氏も「非礼で配慮に欠けていたと思います」と、同意した。


厚遇でもてなしたのに
 「rude」というのは、とても強い非難の言葉で、こんな言葉が昔から気品ある女王として著名なエリザベス女王の口から出たのは、よほど習近平らの非礼を腹に据えかねていたのだろう。そこに、警備に当たったドルシ氏と帰国していた駐北京大使がいたから、思わず口をついたのだと思われる。
 習近平の訪英に際しては、空港に女王自らが出迎えた他、要人でもふだんはとても泊めない自身の住居であるバッキンガム宮殿に宿泊させるなど破格の厚遇でもてなした。


女王初めイギリス側に大顰蹙
 ところがスターリニストどもは、金満超大国に成り上がった思い上がりを背景に、女王と習近平夫妻の乗る馬車に自国の警護官が無理やり乗り込もうとしたり、バッキンガム宮殿の宿舎の家具の配置にまで文句をつけ、さらに晩餐会にも自国のメニューの一部を持ち込もうとしたりしたという。この時の中国側の行動に対し、女王は「彼らの行動は異常だ」とも述べている。
 一事が万事、こんな調子だったから、園遊会で当時警護に当たったドルシ氏を見かけて、思わずねぎらいの言葉が出たのだろう。
 ウッドワード大使も、習近平の一行の傲慢な態度や高圧的な発言に悩まされ、一例としてウッドワード大使が夜中に中国側に突然呼び出され、イギリス滞在を途中で中止するとの圧力をかけられたこともあったという。


独裁者がこうだから、下々の中国人も「rude」――ごもっとも
 経済大国化で増長するスターリニストどもにとって、イギリス訪問は、投資や貿易で総額400億ポンド(約6兆2500億円)に上る破格の餌を与える機会だけに、かつて清朝の時代、アヘン戦争やアロー戦争で痛めつけられた仕返しの意味もあったのだろう。
 しかしそれにしても、女王にここまで軽蔑されたスターリニストどもの品格のなさは、やはり異常だ。
 独裁者がこうであれば、下々の中国人観光客が外国で不作法のほどを働くのもよく分かる道理だ。


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