アメリカによる第2次制裁を受けた直後だから、ロシアのプーチンは、さぞかし当惑と怒りを露わにしているのではないか。


プーチンとロシアに何のプラスにもならない愚行
 言うまでもなく、17日にウクライナ東部ドネツク州の親ロ派占領地区上空で起こったマレーシア航空機撃墜事件の件である。ロシアや親ロ派がいくら反論・言い繕うと、多くの傍証から国際社会は、ウクライナ親ロ派テロリストがロシア軍から供与された地対空ミサイルBUK(ビーク)でマレーシア機を撃墜したと考えている。
 ただプーチンは、こうした民間機撃墜という世界が憤激するテロルを命じたわけではないだろう。調査が進み、親ロ派テロリストの犯行が確証されれれば、ロシアはEU・アメリカも含めた国々からさらなる追加制裁を受けることは避けられないからだ。
 プーチンにとって、ウクライナ軍機の撃墜ならいざ知らず、民間機の撃墜は何のプラスにもならない。多国籍の乗客の命を奪った無法ぶりから、ロシアに対する国際社会の非難の高まりは避けようもないし、上述の対ロ追加制裁が濃厚になる。


親ロ派テロリストが交流サイトに「ウクライナ軍輸送機撃墜」の投稿
 おそらく現地の親ロ派テロリストと派遣されたロシア軍の一部兵員の不注意・過誤によるミサイル発射だろう。
 その傍証は、枚挙にいとまもないほどだ。
 まずマレーシア航空機が墜落したと発表される前に、親ロ派テロリスト幹部によりウクライナ軍の輸送機を撃墜したというコメントが交流サイトに投稿されたが、後になってそのほとんどが削除されていたことだ。
 このコメントで述べられた時間などは、マレーシア機撃墜の状況と符合する。


隠ぺいとウクライナ軍への責任転嫁に乗り出す
 また、撃墜後に親ロ派テロリストとロシア軍情報機関将校が行った通信を傍受して録音したとされる音声も公開された。
 その中でベース(悪霊)と名乗る親ロ派テロリストがロシア軍将校とされる人物に対し、「たった今、飛行機を撃ち落とした」と話していた。また別の録音では、戦闘員らしき人物が飛行機の残骸が散乱する墜落現場から、「100%間違いなく、これは民間機だ」と、うろたえきって報告している。
 ロシアメディアも、マレーシア機墜落直後に「親ロ派がウクライナ軍輸送機を撃墜したと語った」と報じた。
 こうしたことからロシアのプーチンは、早い段階でこの事実を把握し、隠ぺいとウクライナ軍への責任転嫁に乗り出したことが想像できる。


国際調査団への妨害と証拠隠滅に走るテロリストども
 これと符合するように、高度3万メートルという高高度の飛行物体も撃ち落せるという地対空ミサイルBUKらしき物体が、ロシアから運び込まれた様子がウクライナ軍に確認され、しかもそのBUKらしき物は事件後に大慌てでロシア国内に運び出された様子が撮影されていた。
 さらにまた、ロシア軍から得た地対空ミサイルで、直近の週だけでもウクライナ軍の輸送機1機、攻撃機2機を撃墜している。こうしたことなどから、親ロ派テロリストどもがマレーシア機をウクライナ軍輸送機と間違えて撃ち落したことは間違いあるまい。
 そうとしてみれば墜落地を占領している親ロ派テロリストが、国際調査団の現地調査を妨害する一方、証拠隠滅に走っているのも頷ける(写真=撃墜されたマレーシア機の残骸)。さらに嫌悪感を催させるのは、墜落現場で親ロ派テロリストどもが犠牲者の所持品を漁り回り、金目の物を持ち去っていると報じられたことだ。


撃墜されたマレーシア機

 被害者の遺体や遺品は、この暑さの中に野ざらしにされており、それが欧米諸国の政府・市民をいっそうの憤激させている。


対ロ融和的な西欧の姿勢は一変か
 この蛮行のロシアの責任は、重大だ。
 高高度の航空機を撃墜するための地対空ミサイルの運用には、訓練を積んだ兵員が必要だで、昨日まで市民だった民兵が扱える代物ではなく、高度に訓練された正規軍=ロシア軍の指導のもとである可能性が非常に高いからだ。
 プーチンにとって手痛いのは、全員死亡した乗客298人のうち、オランダ人が半数以上の192人を占め、ベルギーとドイツがそれぞれ4人となっていることだ。これらの国々は、これまでのロシアのクリミア奪取・併合とその後のウクライナ東部へのロシアの軍事干渉に微温的だった。
 さらに夏休み期間のせいか、乗客の中に子どもが約80人も含まれていたことも、親ロ派とロシアへの激しい怒りをかっている。
 世論の風向きが変わり、一気に対ロ強硬論に傾いているから、各国政府も歩調を合わせざるをえない。


オーストラリアはG20からのロシア締め出しか
 さらに27人が遭難したオーストラリアでは、11月にブリスベンで開かれる予定のG20にロシアを締め出せという声が急速に高まっている。
 自国民10人を殺されたイギリスは、いっそう対ロ強硬姿勢を強めるだろう。
 アメリカは、オランダとの二重国籍の1人を除くと被災者はいない。それでも1983年9月にサハリン上空で大韓航空機が旧ソ連空軍機に撃ち落とされた暴挙を彷彿させることから、この蛮行に対してさらに対ロ制裁姿勢を強めるだろう。
 注目されるのは、ロシアと常に共同歩調をとってきたスターリニスト中国の動向である。死亡者のマレーシア国籍44人、インドネシア国籍12人のうち、華僑も含まれていることだろうから、ロシアを擁護する姿勢はとれないだろう。国連安保理にロシア非難決議が提出された場合、反対はできないに違いない。


東南アジア航空路はウクライナ東部上空を通る不運
 不幸中の幸いだったのは、遭難者に日本人がいないらしいことだ。アムステルダムからクアラルンプールという経路から考え、トランジットする日本人も考えにくいことが救いだった。
 ヨーロッパからマレーシアなど東南アジアへの航空路として、ウクライナ上空は最短ルートになる。したがって撃墜されたマレーシア機の飛行したルートは、ヨーロッパの航空会社だけでなく、アジア太平洋地域16カ国のうち15カ国が利用しているという。
 ただ東南アジアよりも緯度が北になる日本のヨーロッパへの(からの)航空路は、シベリア上空となり、ウクライナ上空は飛ばない。
 このことは、10日と19日にリブパブリがフィンランド往復のJAL便で直接、視認している。


旧ソ連構成国だったエストニアのタリンで知った悲報
 悲劇の日、リブパブリはエストニアのタリンにいた。日本からは遠いが、タリンからウクライナ東部はさほど遠くない。しかもエストニアとウクライナは、かつて旧ソ連の構成共和国だった。
 一瞬だが背筋に冷たい物が走った。


旧市庁舎上から観たタリン

 写真は、タリン旧市街ラエコヤ広場の旧市庁舎を登り、そこから観たタリン市街とバルト海。


昨年の今日の日記:「地球の二酸化炭素濃度、ついに400ppm越えという危機;東京選挙区で山本太郎の当選を許すな」