韓国、「文政権」6割の支持率で経済改革に取り組まない「理由」
バブルで衰退する中国 技術力で復活する日本
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空論に酔う韓国圧力集団
圧力をはねつける仏政治
「新たに、『勝又壽良のワールドビュー』を開設します」
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韓国の経済状況は、確実に悪化している。企業が設備投資を抑制しているからだ。韓国経済の将来が見えない結果である。これでは、潜在的成長率を押上げるエネルギー欠乏に陥る。確実にガス欠状態に向かっている。自営業者は、最低賃金の大幅引き上げによる労働コスト上昇に耐えきれず廃業する。あるいは、従業員を解雇して家族労働で細々と経営を続けるという最悪事態に落込んでいる。この理由はどこにあるのか。
文政権は、経済政策を間違えているからだ。自ら革新政権を名乗っている以上、保守党政権と違うことをやらなければ存在価値がない。そういう錯覚に陥っている。文政権の支持基盤は、労組と市民団体である。現実から遊離した理想論に固執しており、この間違い集団が文政権に圧力を加えているのだ。
理想論は結構であるし、時間がかかっても実行すべきである。だが、労組も市民団体も最低賃金を大幅に引上げれば、それで韓国経済は好循環に向かうと思い込んでいる。IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)の担当官が、韓国の最低賃金の大幅引き上げは経済混乱をもたらすだけ、と忠告している。それでも聞く耳持たず、である。政府は、来年の最賃引き上げ(10.9%)について再検討もせず、そのまま「公告」してしまった。
もはや、来年の経済混乱は不可避となった。ここまで頑なに間違えた政策を強行している背景には、彼らの信ずる理念が空想的であり現実感から大きく遊離していることが上げられる。
空論に酔う韓国圧力集団
『朝鮮日報』(8月4日付)は、「韓国の経済危機は新自由主義のせい?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチェ・スンヒョン政治部次長である。
韓国は、相手の議論を封じる時に証拠を出さずに、レッテルを貼ってやり込める風潮が極めて強い。「エビデンス」(証拠)を確認しようとしない悪弊があるのだ。特に、自ら革新派を標榜する側にそれが顕著である。「右翼」という言葉が、相手を罵倒する際に強力な武器として使われている。これに、「反日」のレッテルを貼られたたら再起不能だ。韓国という国は、レッテル貼り=空論が支配する国である。この弊害が、現在の韓国をダメな国に陥れている。
例えば、日韓併合は絶対的な悪と位置づけられている。日韓併合によって両班(ヤンバン)制度が最終的に崩壊し、朝鮮で経済発展の基盤ができあがった。こういう歴史的な研究は一切棚上げして、あたかも自力で近代化を達成したかのごとき妄念を抱いている。この奢りが、現在の韓国経済の危機をもたらした。戦後の韓国経済の発展は、日本の資本と技術の導入によって軌道に乗ったものだ。そういう客観的な評価が抜けている。これが災いしており現在、直面している問題を自力で解決する能力がない。存在するのは「奢り」だけで「反省」の一片もない国である。繰り返せば、自らの能力不足に気づかない結果である。
(1)「韓国の最近の経済危機を巡り、政府・与党から『全ては新自由主義のせいだ』という時代遅れの論理が聞かれる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は『韓国経済の困難な部分は新自由主義の経済政策と雇用なき成長のせいだ』と述べ、共に民主党の金太年(キム・テニョン)政策委員会議長は『過去10年間の新自由主義政策で賃金格差、所得の不平等がさらに拡大した』と指摘した」
ここにも、韓国社会の悪弊が滲んでいる。誰かを悪者にして自らは責任を回避している。韓国経済が現在の混乱を招いた原因は、現状を無視した大幅な最低賃金上昇にある。この因果関係がなぜ分らないのか。「エビデンス」に基づかない空論の世界で、問題を処理しようとしているところに最大の欠陥がある。これこそ、「積弊一掃」の対象である。韓国経済は、こうやって真の原因から目を逸らして衰退するに違いない。
(2)「自由市場、貿易、規制緩和を要諦とする新自由主義は、簡単に言えば、国家による介入を最小化し、市場の自律的な判断に経済と貿易の流れを委ねることが特徴だ。その反対語として、政府主導の計画中心経済がある。新自由主義が韓国社会で最初に本格化したのは、アジア通貨危機の直後だった。当時の金大中(キム・デジュン)大統領が金融市場を開放し、大規模な整理解雇を実施したほか、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が支持層の反発を顧みず、韓米自由貿易協定(FTA)の締結に踏み切った。これらは全て新自由主義の経済政策だ。現在民主党の代表室に写真が掲げられた歴代大統領2人が韓国の新自由主義の出発点だったのだ」
文政権と与党「共に民主党」は、韓国経済疲弊の原点を保守政権に求め、そのバックにある新自由主義なるものを批判している。しかし、資本主義経済は本来、自由な企業の行動の上に築かれるものだ。中国の「社会主義市場経済」は、まやかしの市場経済である。文政権と与党は、どうやら中国式モデルを頭に描いて、市場経済システム自体を排斥しようと考えているにちがいない。そうでなければ、新自由主義批判という話が出てくるはずもあるまい。
現実に、革新派政権の看板を掲げていた金大中・盧武鉉の両政権は、市場経済化を進めた点で、新自由主義を実行した。それにも関わらず、現在の韓国経済が不調に陥った理由を市場開放政策に求めるのは余りにも無定見、かつ無責任の誹(そし)りを免れまい。換言すれば、ご都合主議というほかない。
(3)「むしろ、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領を筆頭とする保守政権は国家経済を逆方向で運営した。文大統領や金政策委議長がそれを知らないはずはない。それでもなお『新自由主義責任論』が飛び出すのは、自分たちの経済面での失政を認めることを嫌い、スケープゴートを探さなければならないという心理に見える。実際韓国経済学界の主流は、西洋社会の新自由主義が韓国経済に本格的に移植されたとは言えないという意見だ」
文政権は、自らの経済政策の失敗を認めて修正する勇気を持たない政権である。最新の世論調査では、次のような結果が出ている(『朝鮮日報』8月4日付)。
「韓国ギャラップが3日に発表した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は、先週に比べて2ポイント低い60%だった。文大統領の支持率は7週連続で下落しており、ギャラップによる今回の調査もこれまでで最も低い結果となった」
支持しない理由は
① 経済問題や国民生活の問題が未解決:38%
② 北朝鮮との関係・親北的な政策:11%
③ 最低賃金引上げ:6%
不支持の理由では、①と③の経済問題・最賃引上が、合計で44%も占めている。国民の不満が経済問題にあることは確実である。この現実を解決しないで、責任を新自由主義に求めることは政権を預かる側として余りにも無責任と言うほかない。経済不振の理由は、急激に最低賃金を引上げすぎたことにある。功を焦らずに、スローペースの引上げにすべきだったのだ。天に唾するような振る舞いは恥ずかしいことなのだ。
文政権はフランスのマクロン政権と就任と退任の時期がほぼ一緒である。このことから、文氏とマクロン氏の政権担当能力の優劣が比較される羽目となった。ここで、マクロン氏がどのようして、フランスの経済改革と取り組んでいるか。それを見ておきたい。
圧力はねのける仏政治
『日本経済新聞』(8月3日付)は、「マクロン氏、支持率最低でも改革断行」と題する記事を掲載した。
マクロン氏は、文氏と違って過去の政権に責任をなすりつける卑怯なことをやらない。経済改革=市場経済化がフランス経済の活力を生む。こういう信念で労組の反対を押し切って実行に踏み切っている。理念を弄ばす、成果を上げるという「エビデンス」重視の政治家であるからだろう。韓国国民は、いずれマクロン氏と文氏の経済改革の実績を比較する時期が来る。その時、文氏を大統領に選んだことを悔いるはずだ。
(4)「就任2年目のフランスのマクロン大統領が支持率低迷の逆風下で構造改革を断行している。理由は明白。改革が2年目に入り、財政緊縮や公務員などの既得権に切り込む『痛み』が表面化してきたためだ。18年1月には一部高齢者も含めて社会保障税の引き上げを断行。約550万人の公務員数を22年までに12万人削減する案や、仏国鉄の特権的な雇用区分の撤廃も打ち出した」
マクロン氏は、前革新派政権で幅広い改革を目指したが実行できず、自ら政権を率いて労組の反対する既得権益にも鋭く切り込んでいる。この点が文政権と完全に異なっている。文氏は圧力団体の労組と市民団体の言うままに動いている。ロボット政権である。文氏は社会派弁護士で弱者の味方であると広言している。時に、涙をこぼすお人だが、その涙は新たな解雇者を生んでいる矛楯に気づかなければダメなのだ。涙だけで社会の矛楯は解決しない。
(5)「フランスは公務員が労働者の2割を占める役人大国。支持率への打撃を覚悟で『聖域』にあえて踏み込んでいるのは、十数人の側近チームだ。最側近のコレール大統領府事務局長を除けば、エムリアン特別顧問など40歳のマクロン氏と同世代の30~40歳代が中心メンバーになっている。過去の政権が避けてきた理想主義的な大手術へとマクロンチームを駆り立てるのは『経済競争力を回復しないとドイツと対等に渡り合えない』仏政府筋)という危機感だ。英国の離脱が決まり、EU内での存在感は一段と高まった。だが、ドイツとの国力の差は鮮明。国内総生産(GDP)は1人当たり1割強、規模で4割の差があり、公的債務のGDP比は逆に独の6割程度に対して仏は100%近い」
公務員の数が多い国は、産業構造が高度化していないことの証明である。経済が市場経済中心に循環している国家は、民間が公的サービスを効率的に供給している。今から20年ほど前、ドイツ南部の農村地帯を旅行したことがあった。途中で村役場に寄ったが職員は一人だけ。この事実を聞かされたとき、本当に驚いた。ドイツの徹底した効率追求の姿勢に感服した。ドイツの経済運営はピカイチ。わが日本が、逆立ちしても及ばない合理性の貫徹である。さすがは、宗教改革発祥の国であると脱帽した。
フランスは、カソリックの国である。プロテスタントを拒否したゆえに、経済の合理化ではドイツに大きな差を付けられている。マクロン氏がしゃかりきになって合理化に取り組んでも、カソリックゆえの「甘さ」まで払拭はできまい。それでも、ドイツに追いつく姿勢は政治家として当然だ。文在寅大統領に、マクロン氏の持つ気迫の1割でもあれば、韓国の現状が少しは改善されるだろうが。
(6)「経済再生に向け、緊縮と並行して『金持ちのための大統領』という批判を承知で企業活動を促す政策も進める。法人減税や雇用・解雇の柔軟性を上げる労働法改正、起業の書類審査の簡素化など矢継ぎ早に手を打つ。マクロン氏は7月、上下院議員を前にしたスピーチで企業の活力が国力を取り戻すために必須だと強調。『富を分かち合うには、まず富を築かなければならない。環境を開放し、投資を呼び込む』と語り、元投資銀行マンらしい切れ味で、金持ち優遇批判に真っ向から反論してみせた」
このパラグラフを読めば、文氏はマクロン氏の対極に位置する保守的政治家である。文氏は、大企業の法人税を引上げ、労働市場改革法を廃止するなど「逆コース」を歩んでいる。文氏は、大企業を敵に回すのでなく、彼らが安心して設備投資できる環境をつくることだ。これは冗談だが、マクロン氏に韓国の経済政策の青写真を書いて貰い、それを忠実に実行する方が効果的であろう。こういう冗句を書かざるを得ないほど、文氏の経済政策は迷走している。
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(2018年8月7日)
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