勝又壽良の経済時評
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2019-03-19 05:00:00

中国、「改革?」地方の成長率競争煽るGDPランキング「発表中止」

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中国は、米中貿易戦争でこれまでの政策運営方針が、いかに時代遅れであったかを認識したのだろうか。恒例の地方政府ごとのGDPランキングの発表を取り止めると人民日報が発表した。これまでも、地方官僚の業績判断基準はGDP成長率でないと言っている一方で、地方のGDPランキングを発表するというチグハグなことをやってきた。

 

これは、「GDPこそわが命」という最高指導部の暗黙の評価基準が生きていた結果であろう。ところが、米中貿易戦争で米国から「どつき回され」、ようやくグローバル・スタンダードを知ったのだろうか。

 

GDPランキン発表を止めることは、無理な成長率の嵩上げをする必要がないということでもあろう。本当に、「量」(GDP)から「質」(環境保全)へと政策の目的が変ったのだろうか。即断はできない。苦し紛れに、またGDP競争に戻らないとも言い切れないところが中国の変幻自在のところだ。

 

『人民網』(3月13日付)は、「地方のGDP規模・成長率のランキング中止へ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「全国人民代表大会(全人代)財政経済委員会の尹中卿副主任はこのほど全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)の記者会見で、『今年から国家統計局は各省・自治区・直轄市の域内生産額(GDP)について統一の計算方法を採用し、各地方のGDPの規模や成長率のランキングを中止する』と述べた」

 

ここには、驚くべき記述がある。「今年から国家統計局は各省・自治区・直轄市の域内生産額(GDP)について統一の計算方法を採用する」というのだ。となると、今までは、地方政府が勝手な基準でGDP統計をつくっていたことになる。これほどインチキな話はない。これまでのGDP統計は、各地方政府が勝手につくった数値をどのようにして補正したのか。統計の専門家が聞いたら卒倒しそうな原始的な方法による「腰だめ計算」であったに違いない。そんな信憑性のないGDP統計で「世界2位」などと言えるはずがない。笑い話で、世界のGDP2位は依然として日本であるという。こちらに、信憑性があるような感じもするほど、中国統計は信頼性に欠けるのだ。

 

(2)「尹副主任は、『国家統計局は全国のバランスシート、全国と各省区市の自然資産のバランスシートを編成することを検討し、審査・評価メカニズムを改善し、正しい業績観の確立を推進する』と強調した。また末端レベル、企業、個人や家庭の負担を軽減し、国家、機関、地方の統計調査項目を整理し、統計報告が多い上に混乱しているという問題を解決するために、関係機関はインターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの方法の利用を検討し、データの提供と利用を規範化し、データバンクの構築を共同で行い、統計データの共有制度を改善するとしている」

 

中国は、経済関係のバランスシートと自然資産バランスシートをつくる案を検討したいという。これは、胡錦濤時代に地方官僚の業績評価基準をGDPから環境保全に移すと発言したことを10年近く経った現在、検討し始めるということだ。これが事実とすれば、米中貿易戦争でUSTR(米通商代表部)から徹底的に説教された結果であろう。中国の発想法いかに遅れていたか、痛切に知ったのだろうか。

 

データの共同利用を行なうデータバンクの構築を行なうという。地方政府も巻き込めば「ウソGDP統計」を防ぐ方法が確立されるはずだ。なぜ、今まで着手しなかったのか。解せない話でもある。USTRからの要求であろうか。

 

(3)「現在、『統計法』の改正が第13期全国人民代表大会常務委員会の立法プランに組み込まれ、関連の作業が着実に進められている。昨年6月には、同常務委が『統計法』の法執行に関わる検査報告を聴取・審議した。国務院とその関連機関は全人代財経委の法執行検査で発見された問題について、是正と改革を真剣に検討していた」。

 

統計法という実務面の手続きが全人代のテーマになっている。ここが不思議である。利権を隠すという特別の意味が絡むにちがいない。とすれば、すべての情報がウソ偽りなく集計されるとは限らないのだ。やっぱり、利権に絡む微妙な所はスルーするのだろう。

 

「ウソGDP」海外専門家、知恵を絞って真実見極める「工夫」

中国が、実質GDPで約2%ポイントのゲタを履かせている。その結果、現在のGDPは実際よりも12%も水ぶくれしている。この記事は、本欄でも取り上げて読者から注目していただいた。もう一度、掲載する。

 

「米ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所は7日、中国経済は公式統計を約12%下回り、近年は実質成長率が毎年約2ポイント水増しされてきたとする論文を発表した。中国の公式統計に対する根強い懐疑論を改めて裏付けた」。『フィナンシャル・タイムズ』(3月8日付け)

 

中国のGDP統計がウソであれば、どうやって真実の姿を捉えるのか。海外の専門家はいろいろと知恵を絞って対応している。それを取り上げた。

 

『ロイター』(3月12日付け)は、「衛星画像や旅行予約、中国統計の穴どう埋めるか」と題する記事を掲載した。

 

中国政府が発表する経済統計の正確性には長年にわたり疑念が持たれており、外国人投資家やアナリストは経済実態を把握するため、各々独自の方法を編み出している。利用するのは衛星画像から運輸データ、電力消費量、旅行予約サイトまで幅広い。「多くの人々は公式統計だけを見るのではなく、成長率を代替するデータを探そうとしている」と語る。

 

しかし、何とも厄介な話である。ウソ統計を発表するメリットは何かだ。実情を知られると都合の悪いことがあるのだろう。中国の弱点を握られることを恐れている。それは、外国に対してか、あるいは自国国民に向けて虚勢を張る必要があるからか。いずれにしても「面倒くさい国家」であることに変わりない。

 

(5)「公式統計によると、中国の2018年の国内総生産(GDP)成長率は6.6%で、同国では過去28年間で最低だ。米ジョーンズトレーディングの首席市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は、『GDPには常に疑問がつきまとう』と指摘。『大半の米国人投資家はこの数字を少し割り引く。数字がXだとすると、本当の数字は“X引く何か”ではないかと考える。それに絶対値ではなく数字の基調を見極めようとする』と話した」

 

本当のGDPの数字は、「X引く何か」であることである。冒頭に取り上げた、米ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所は、その謎を解いてくれた。毎年、2%ポイントの上乗せをしているという。

 

(6)「UBSアセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ピーター・バイ氏は、データ数値にフィルターをかける必要性を強調する。バイ氏が消費者需要を見極めるために活用するのは、旅行予約サイトや、中国人観光客を相手にする化粧品・食品会社による状況説明だ」 

 

ここでは、旅行予約サイトや、中国人観光客を相手にする化粧品・食品会社の売上を参考にするという。これは個人消費の動向把握である。

 

(7)「GAMインベストメント・マネジメント(チューリヒ)のポートフォリオマネジャー、ジャン・シー・コーテシ氏は、サンフランシスコのスペースノウ社が開発した中国衛星製造業指数SKI-CSMI-INDEXを注視している。この指数は衛星画像とアルゴリズムを駆使して中国の工業施設を分析し、製造業活動の活発度を測っている」

 

衛星画像で夜の明るさで生産活動を見るというもの。

 

(8)「欧州資産運用会社アムンディのシニアエコノミスト、クィンウェイ・ワン氏は、貨物・乗客輸送のデータと建設中の事務所スペース、電力消費量を組み合わせた社内モデルを利用している。しかし多くのアナリストにとって、現場を訪れるのに勝る分析手法はないようだ。4Dインフラストラクチャのグローバル・ポートフォリオ・マネジャー、サラ・ショー氏は、「北京をぶらつくとどこも満員で、レストランにも入れないし電車にも乗れない。経済状態がまだ割と大丈夫な証拠だろう」と語った」 

 

貨物・乗客輸送のデータと建設中の事務所スペース、電力消費量を組み合わせた社内モデルをつくっている。これは、かつて李克強首相が、省長時代に編み出した「貨物輸送量・電力消費量・通貨発行高」に最も近いようだ。私の一押しは、マネーサプライ(M2)である。銀行の信用創造能力を見る上で最適。金融理論にマッチしている。

 

 

2019-03-18 05:00:00

失業者の帰農急増が暗示、韓国経済崩壊へカウント・ダウン

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零落する地方産業の実態

文政権の政策が最低最悪

帰農者増加は不況の前兆

 

韓国経済の底流では、地殻変動が起り始めています。韓国政府は、原因が大幅な最低賃金の引上げにあることを知っているはずです。その大幅最低賃金の引上げ幅は、2年間(2018~19年)で約30%になります。その引上げ幅を修正すれば、問題は解決するのです。しかし、文政権の支持基盤は労組です。労組との関係悪化を回避する目的で、南北交流事業を突破口に景気回復への道を探ったのです。その「離れ業」は、米朝首脳会談の失敗で水泡に帰しました。ここに、韓国経済は回復への切り札を失いなったのです。

 

タイトルの「失業者の帰農が暗示、韓国経済崩壊へカウント・ダウン」は、読者の興味をかき立てる「営業用」ではありません。昨年から、農業就業者が増えたことは、都市部で失業してやむなく出身地へ帰らざるを得なくなった証明です。経済用語では、こういう状態を「偽装失業」「不完全就業」と呼びます。日本では、1960年代からの高度経済成長期に「死語」となりました。約60年前のことです。

 

韓国では「帰農者」の増加が、就業率を高めるという皮肉な結果を招いています。正確には、「不完全就業者」の増加と呼ぶべきです。韓国統計庁は、就業者が増加したと発表しています。実態は逆であり、雇用状態が悪化していると判断すべきなのです。

 

先進国では、自営農の急増する現象を景気低迷の前兆と解釈しています。2008年の金融危機で、スペインとギリシャの経済が急激に悪化しました。その際も、帰農=自営農が増えたのです。日本でも「昭和恐慌」(1927~31年)の際、都会で失業した多くの人たちが、田舎の親元へ帰って農業に従事した歴史があります。私は、今回の韓国における帰農者急増を、直感的に「不況シグナル」と捉えました。

 

文政権が、米朝首脳会談で北朝鮮寄りの姿勢を明らかにし、交流事業にこだわった理由は、景気回復のテコに利用する計画だったのです。現に、韓国大統領府の文正仁(ムン・ジョンイン)統一・外交・安保特別補佐官は、米国の外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』への寄稿(3月15日発行)で次のように指摘しました。

 

1.文在寅(ムン・ジェイン)大統領は韓国で経済政策が行き詰まった時に、自らに政治的な利益をもたらす南北交流事業に賭けた。

2.文大統領が外交政策でも突破口を見いだすことができなければ、2020年4月の総選挙を前に苦しい立場で不確実な未来を迎えるかもしれない。

 

上記のような2点に基づき、文氏が南北交流に賭けていた以上、これが失敗に陥った影響は深刻です。経済の悪化は必至であり、文大統領の政治的な立場が不利になることは否めません。

 

零落する地方産業の実態

以上の概略説明を足がかりに、やや詳しく韓国経済の実態を見て行きましょう。『韓国経済新聞』(3月15日付け)に、次のような記事がありました。

 

「先月1週間、京畿道平沢(ピョンテク)から全羅南道霊光(ヨングァン)、釜山(プサン)、慶尚北道浦項(ポハン)、江原道高城(コソン)まで海岸線に沿って2400キロを回ったある教授の言葉が脳裏から離れない。『話にならない。停止した工場、つぶれた飲食店、船が2隻だけの釜山(プサン)新港…憂鬱になるしかない』」というものです。
 

ここには、1965~90年までの25年間、「漢江の奇跡」と言われた高度経済成長の輝かしい跡は見られません。「停止した工場、つぶれた飲食店、船が2隻だけの釜山新港」と暗い話が充満しています。日本の技術と資本が、「漢江の奇跡」を支援したあと、韓国に新しい産業が興らないのです。

 

2002年に大統領に就任した盧武鉉氏以降、日韓関係が悪化して、日韓企業の関係は希薄化しました。これによって、韓国企業へ世界の技術情報が伝わらなくなった面があるのです。現在では、普通になった「第4次産業革命」という言葉すら、韓国メディアは2015年時点で知らなかったほどです。技術情報ギャップが、イノベーション立ち後れ要因と解釈すれば、興味深いデータがあります。(つづく)

 

2019-03-17 05:00:00

中国、「忍びよる危機」一人っ子政策放棄後も出生率低下「対策なし」

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中国政府は、出生率低下に真の危機感を持っていないようだ。ファーウェイ(華為技術)が次世代通信網「5G」で競争力を維持できれば、世界を支配できて万々歳という程度の認識である。人口こそ、国家を支える最大要素である。その感覚が欠如している。まさに、内政軽視、外延的拡大第一という「帝国主義」の通弊にはまり込んでいる。

 

先の全人代に提出された5件の提案書では、「出産の包括的な自由化」という言葉が使われている。これで、各地で産児制限の抜本的な修正を求める声が高まっていることが浮き彫りとなった。中国は2016年に一人っ子政策を廃止。2人目の子どもの出産を認めたが、昨年の出生率は2年連続で低下しており、各地の代表からは「出産の自由化」に向けた抜本策が必要だとの声が相次いでいる。

 

一部では産児制限を撤廃し、憲法から計画出産に関する文言をすべて削除することを求める案も出ている。政府系シンクタンクの中国社会科学院(CASS)が先に発表した報告書によると、同国の人口は2029年に14億4200万人でピークに達し、30年には長期にわたる「止めようのない」人口減少が始まる見通しとされている。これは、『ロイター』(3月12日付け)が伝えたもの。

 

「止めようのない人口減少」とは、何を意味するかだ。それは、中国の人口が限りなく減り続けるという意味である。習近平氏が描く「世界覇権」など全くあり得ない空想になる。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(3月13日付)は、「中国、一人っ子政策撤廃も少子化に打つ手なし」と題する記事を掲載した。

 

(1)「人口は増加を続けて2029年に約14億4千万人でピークを迎え、その後減少に向かうと中国政府は試算する。生産年齢人口が減少して物品・サービスの産出量が減れば、中国経済は苦境に陥ると警告する人もいる。カリフォルニア大学アーバイン校の人口統計学者、王豊氏は『若年人口が減り、彼らが産む子供の数が減ると、中国経済に間違いなく重大な結果をもたらす』と語る」

 

私は、人口問題がいつも念頭にある。日本の急速な合計特殊出生率低下に対した、日本政府が長いことその重要性に気付かなかった事実をみてきたからだ。中には、人口減になれば満員電車が空いて、通勤が楽になるという「すっとぼけた議論」もあった。中国政府も、こういう認識であろう。中国の合計特殊出生率は公表されなくなった。多分、「1」を割っているから、中国社会科学院は「止めようのない」人口減少が始まると危機感を訴えたと見られる。

 

(2)「総じて人口減と同様に高齢化も中国の労働力の低下を加速する。中国人民大学の試算によると、60歳以上の人口は50年に4億7900万人に達し、総人口に占める割合は現在の16%から30%強にまで増える。王教授は現在の人口動向が続けば、中国の国内総生産(GDP)は今後数十年間、年0.5%のペースで減少し、成長が鈍化するほど、この傾向は顕著になると分析。『同じ0.5ポイント下がるのでも、成長率が6%の時よりも3%成長に減速した時の方がずっと深刻だ』と強調する」

 

私は、このパラグラフを読んで「GDPが今後数十年間、年0.5%ポイントのペースで減少する」とする部分に釘付けになった。「0.5%ポイント」の減少になれば、どういう結果になるか。今年のGDPを6.0%成長と仮定すれば、ゼロ成長時代は13年後に現実化する。その後も減り続けるから、中国経済は縮小状態に入る計算だ。

 

中国経済はこの時、超高齢社会になって年金や社会保障費の負担が増加している。軍事費は膨張している。世界覇権などと言っている経済的なゆとりは失われているはずだ。中国政府は、それが見通せないとすれば、もはや何を言っても無駄であろう。

 

(3)「多くの国で高齢化は成長率低下と関連しており、特に日本や西欧諸国では顕著だ。経済活動の多くの部分が生産性を高める投資ではなく、高齢者の介護に費やされる。だが、経済学者たちは中国では1人当たりの国民所得が先進国に比べ低い中で高齢化が進んでいることに注目する。つまり、労働者1人の1時間当たり生産額で示される労働生産性が比較的低く、労働者の経済産出量を伸ばす余地があるということだ。定年を現在の男性60歳、女性55歳から引き上げれば、生産量をさらに増やせる」

 

下線を引いた部分を実現できれば、少しは危機を緩和できるとしても、それには政治体制が足かせになる。完全な市場経済化しない限り、生産性向上は困難である。中国が共産党体制を続ける限り、生産性向上は見込めない。自滅か改革か。中国の選ぶ道が、一つしかない。

 

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