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2017-09-26 05:00:00

中国、「ミレニアル世代」暴騰した住宅に絶望「喪の文化」蔓延

テーマ:ブログ

 

 

失敗した中国式成長モデル

中古住宅の支払いに70年

 

 

習近平氏は、10月18日からの第19回党大会を前に人事の「票読み」に耽っていることだろう。2期目の政権はもちろん、2022年以降の3期目も睨んだ布陣に余念があるまい。そのためには、高目の経済成長実現が前提だ。インフラと住宅の固定資産投資に力点を置く経済政策が最も手っ取り早い。こういう青写真の元で、計画は手抜かりなく進んできた。事実、今年上半期の成長率は前年比6.9%である。党大会開催を前にして、経済面では万全の体制である。

 

物事には陽の当たる部分があれば、その影もあるのだ。習氏はこの「日陰の部分」には思い至らなかった。住宅相場の高騰が、結婚適齢期を迎えているミレニアル世代(1980~2000年ころの出生)の懐状態を直撃しているのだ。所得に比べて手の届かない住宅価格が、彼らをやり場のない絶望感へと追いやっている。それが、「喪」という自虐的な文化を流行らせている、というのだ。習氏は皮肉にも、ミレニアル世代からの支持を失っている。習氏は、若者から「習おじさん」と呼ばれるのが夢だという。現実は、逆の結果を招いているようだ。

 

中国経済は、インフラ投資と住宅投資による固定資産投資が支えている。今年1~8月の固定資産投資は前年同期比7.8%増である。道路や鉄道などインフラ投資は20%も伸びたが、製造業の投資が4.5%増にとどまった。これを見ても分かるとおり、中国経済は極端にインフラ投資に偏った状態にある。中国人民銀行のデータを基にロイターが算出したところでは、「8月の住宅ローンなど家計向け融資は6635億元で、7月の5616億元から増加。家計向け融資が新規融資全体に占める比率は、8月は61%で、7月の68%から低下した」(『ロイター』9月16日付)。

 

上記のデータを整理しておこう。

 

中国人民銀行によれば、8月の住宅ローンなど家計向け融資が、新規融資全体61%も占めている。7月は68%であるが、ともかく新規融資の6割が住宅ローンなどである事実は驚くべきことだ。GDPの39%が個人消費である中国経済が、新規融資の60%台を家計向けが占めている現実に、中国経済の不均衡ぶりが窺える。つまり、住宅ローンが相対的に異常は膨らみ方をしていることだ。これは、中国経済の歪みを個人に背負わせている証明であろう。ミレニアル世代は、その犠牲にさせられてやり場のない不満を抱えているはずだ。

 

失敗した中国式成長モデル

『ロイター』(9月5日付)は、「中国ミレ二アル世代にまん延する自虐的『喪の文化』」と題して、次のように論じた。

 

この記事では、中国社会主義が目指した高度経済成長が、若者の夢を奪っている皮肉な結果が浮き彫りにしている。「中国社会主義万歳」という人々にとっては、なんとも皮肉な現実が持ち上がったのだ。最大の原因は、中国政府が「バランストグロス」(均衡成長)という概念を全く無視したことだ。少なくとも、社会主義を標榜する国家として、資本主義国家と違った路線を追及すべきであった。それが、資本主義経済の亜流であり、かつ、市場機構を無視したので、「自律調整弁」を備えない最悪の経済成長路線を暴走してしまった。

 

習氏は、ミレニアル世代の約3億8000万人が、中国社会主義に対して疑念を持っている事実を知っておくべきだ。習近平氏が国家主席になったとき、中国はフランス革命(1789~99年)直前の社会的な混乱状態にあると認識していた。その解決には、高目の経済成長率実現が不可欠と見た。それが、大変な誤解であった。「均衡成長」という成長方式で、矛盾を解決しながら進む方式について無頓着でありすぎた。本来の市場主義を敵対視して、あってはならない弾圧を加えたのだ。ノーベル平和賞受賞の劉暁波氏の獄死は、その痛ましい犠牲である。ミレニアル世代が、習共産党に背を向ける理由があるのだ。

 

中国政府は、経済成長の果実を内政問題解決に使わなかった。外延的発展(領土拡張)という中国伝統の「普遍帝国主義」に基づき、軍事費拡大に投入した。「社会主義政治」から逸脱した国家運営に傾斜したのだ。ミレニアル世代にとって、理解を超えた政策を選択した。ミレニアル世代は、「普遍的価値観」を持っている。中国社会主義の枠を超えた問題意識の持ち主である。個の確立と言っても良い。中国共産党が無視している「個人の価値」は、ミレニアル世代共通の価値観である。共産党とミレニアル世代の間に見る価値観の相違が、いずれは世代間対立を生むのであろう。しかも、人口動態的にみれば、このミレニアル世代の後継者は今後、累増してゆく。習共産党が少数派に落ち込む時期も遠くはない。

 

(1)「さまざまな種類のお茶を提供するカフェチェーン『喪茶』のメニューは冗談半分だが、そこに反映されている感情は深刻である。将来に大きな期待を抱いていた中国の相当な数の若者が、希望を失い、ソーシャルメディア上で『喪』と呼ばれる態度を示している。『葬式』を意味する漢字に由来する、意気消沈を示す言葉だ。多くの場合、皮肉に満ちた敗北主義を楽しむ『喪』の文化は、インターネット上の著名人や、音楽や一部の人気モバイルゲーム、テレビ番組、悲しい表情の絵文字や悲観的なスローガンによって人気に拍車がかかっている」

 

葬式を意味する「喪」が、ミレニアル世代に共通した鬱積した心理状態を象徴しているという。今のところは、無力なインテリ層であるが、永遠に「浮き草」状態であるとは思えない。実は最近、ツイッターで奇妙な投稿があり、話題になっている。ツイッター発信側に、習近平氏の娘が加わっているのでないか、とされているからだ。

 

「中国版ツイッター『微博』(8月29日)で、『後継者制度はもう続かない。民主化の歩みは止まらない!』と意味深長な投稿が流れた。発信者はアカウント『記者眼光』(記者の目)で、習近平陣営が管理するネットメディア『学習小組(学習チーム)』のメンバーが管理しているとされる。この中に、習近平氏の一人娘、習明澤を中心とした広報チームが入っており、民主主義寄りの立場を取っているという」(『大紀元』9月2日付)

 

習近平氏の一人娘、習明澤もミレニアル世代である。彼女は、米国留学組であり民主主義とは何か、を知っているはずだ。とすれば、「後継者制度はもう続かない。民主化の歩みは止まらない!」は、中国の未来へ明るい展望を示している。選挙によらない国家主席の後継者制度はもはや続かず、民主的に選ばれる時代が来る、というメッセージであるからだ。

 

私は、今年1月のブログで習近平氏が2022年以降、大統領制を目指していると書いた。同時に、現在は言論弾圧しているが、民主政治に移行する前段階で、国内の騒乱を防ぐべく、あえて弾圧強化している面も予想されると書き込んだ。前記の、習氏の娘が関わるツイッターが、民主化を予告しているとすれば、「世紀の大ニュース」となる。まだ、真偽のほどは分からない。

 

(2)「数年前と比べて好調とは言いがたい経済において、この文化(注:「喪」の文化)は、好条件の就職を巡る苛酷な競争に対する反動と言える。中国では以前から住宅の所有がほぼ結婚の必要条件のように思われているが、集合住宅の価格が急騰するなかで、主要都市では住宅がますます購入しにくくなっている」

 

中国では、結婚の条件として男性側が住宅を用意するという。だが、最近の住宅価格が暴騰して、普通の所得階層ではとても住宅を用意できるはずがない。まさに、習近平氏の不動産依存経済運営が、若者の結婚の夢を奪っていると言えるのだ。

 

就職も困難になっている。後のパラグラフで取り上げているように、給与は引き下げられている。一方では、住宅価格はうなぎ登り。このギャップでは、中国の若者でなくても意気消沈して当然であろう。

 

(3)「共産党機関紙の人民日報は8月、喪茶を『精神的な麻薬』を売っているとして非難。論説のなかで、『喪』の文化は『極端で悲観的かつ希望のない態度であり、憂慮と議論に値する』と表現した。『喪』の文化はポーズや気取りかもしれないが、高学歴の若者の一部に見られる絶望感は、安定性を重視する習近平国家主席とその政権にとって大きな懸念事項である。『喪』は、成算や労力の多寡を問わず目標を達成しようとする、現在繁栄している中国の都市文化に対する反乱でもある。これに結びついているのが、成功を期待する社会・家庭からの強いプレッシャーである。一人っ子政策世代の一員として、高齢化する両親や祖父母を扶養することを期待されているという事情がこれには通常伴っている」

 

「喪」の文化は、ミレニアル世代の若者の精神に深く入り込んでいる。大学を出ても満足な就職口はない。給与は低い。これでは、社会へ飛び出すときから「敗残兵」のような気持ちにさせられるのだろう。一方、一人っ子政策によって両親と祖父母の合計6人の期待を一身に集めている。これでは、若者が重度の「喪」の心理状態へ追い込まれるのも致し方あるまい。

 

中国共産党は、「普遍的帝国主義」に陥っている。いずれ米国経済を追い抜いて、世界覇権を握るという壮大な夢を描いている。彼らにとっては、ミレニアル世代の「喪」などあり得ないことに違いない。ミレニアル世代の捉える中国像こそ、等身大の中国である。世界の権威あると言われるシンクタンクが、未来予想をしている。全て、現在の経済成長率を単純に未来へ引き延ばして、中国は米国を抜くという。こうした単純な予測がもたらす中国共産党の夢は、ミレニアル世代の中国観とますます、そのギャップを拡大するはずだ。

 

中古住宅の支払いに70年

(4)「18歳から35歳くらいまでの中国ミレニアル世代の人口は、約3億8000万人。先行世代には思いもよらなかったような機会にも恵まれているが、彼らが抱いていた希望は実現困難になりつつある。9月5日、将来に大きな期待を抱いていた中国の相当な数の若者が、希望を失い、ソーシャルメディア上で『喪』と呼ばれる態度を示している。今年、大卒者の平均初任給は16%下落し、月4014元(約6万7000円)になった。国内大学の卒業者が過去最高の800万人(1997年の10倍近い)に達し、就職競争が激化しているためだ」

 

今年の大卒者の平均初任給が、昨年よりも16%も下落したとは驚きである。日本では考えられない現実だ。その賃下げ理由は、大学卒業生が増えたからだという。なにやら、入札制度を思わせるような情景である。中国の経済成長率はこれから下降する。雇用が増える状況にはない。となると、賃金はますます下落の傾向を強めるであろう。これでは、個人消費が対GDP比で40%台に乗る期待は持てない。中国経済は泥沼状態に入り込むであろう。

 

中国経済は、製造業のウエイトが高くサービス業が未成熟である。本来、製造業が高度に発達すると、そこから新たなサービス業が生まれるもの。中国製造業はハイテクでなくロウテクの域に止まっている。先端的なサービス業が生まれないのだ。スマホを利用したビジネスは盛んだが、雇用吸収力は小さいのだ。

 

(5)「マイホーム購入はほぼ中国全土で共通する夢だが、北京、上海、深圳といった大都市で、より高級な住宅への住み替えはますます難しくなりつつある。中国不動産関連サイト最大手によれば、北京の中古住宅市場では2016年に価格が36.7%も跳ね上がり、2寝室の平均的な住宅価格は約600万元(約1億円)に達した。これは同都市の住民1人あたり平均可処分所得の約70倍である。ちなみにこの比率は、ニューヨーク市では25倍に満たない」

 

北京の中古住宅価格は、2016年に36.7%も跳ね上がった。2寝室の平均的な住宅価格は約600万元(約1億円)だという。これは、平均可処分所得の約70倍にもなるという。70年分の可処分所得が必要とは、飲まず食わずで、ひたすら支払い続けて70年という意味である。こんな馬鹿げた現状をもたらしたのは、不動産値上がりが地方政府の財源になったこと。また、GDPを押し上げる目的がもたらした悲劇である。これが、嘘も偽りもない共産党政治なのだ。

 

(6)「北京の賃借人は推定800万人で、その大半がミレニアル世代とされているが、1人あたり家賃の中央値が過去5年間で33%上昇し、6月には月2748元に達したという。これは同市の所得中央値の58%に相当する。こうした住宅コストの上昇によって、中国の若年労働者は市の周縁部に住まざるを得ず、ストレスの多い長時間通勤を強いられる場合が多い。このような経済的圧迫は、中国若年層の晩婚化にもつながっている。東部の主要都市である南京では、公式統計による初婚年齢の中央値が、2012年の29.9歳から、昨年は31.6歳に上昇した」

 

北京の1人あたり家賃の中央値(注:平均値ではない)は、6月が2748元(約4万7000円)である。所得の中央値で58%にもなるという。家賃が、所得の約6割であれば、残りの4割で生活費を賄わなければならない計算だ。こういう厳しい生活を余儀なくされた元凶は、不動産価格を強引に押し上げた政府の政策である。市場原則に任せておけば、このような事態は免れるのだ。需給による価格調整機能が生きて、所得に見合った家賃が形成されるはずだ。

 

家賃の高騰は、結婚年齢を遅らせる結果を招く。中国の合計特殊出生率は、すでに1.01見当(日本は1.44=2016年)まで下がっている。ミレニアル世代の生活実態を知れば知るほど、中国の将来に赤信号を感ぜざるをえない。その深刻さは、日本の比ではない。日本の方が、はるかに恵まれている。自由主義と専制主義の違いでもあろう。それでも、日本の「親中派」は中国万歳を叫んでいるのだ。不思議の一語である。

 

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(2017年9月26日)

 

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2017-09-25 05:00:00

韓国、「事大思想」THAAD経済制裁で中国をWTO提訴せず

テーマ:ブログ

 

 

中国へ強気になれない腰抜け

米国との同盟が最大の安全弁

 

 

文在寅(ムン・ジェイン)政権ほど腰抜けな政府はない。中国政府の経済制裁で国民の利益が侵害されているにもかかわらず、WTO(世界貿易機関)へ提訴もしないのだ。韓国は、北朝鮮がミサイル・核の開発をしているために、防衛上でTHAAD(超高高度ミサイル網)を設置した。中国が、これに難癖をつけて韓国を経済制裁している。宗主国気取りをしているのだ。これに対して、毅然として対抗手段もとれない情けない政府である。

 

中国は、韓国のTHAAD設置に反対ならば、自己責任で北朝鮮のミサイル・核の開発を中止させるべきである。それをしないで、韓国を旧「属国」扱いで経済報復するとは、余りにも身勝手な振る舞いだ。韓国を弱小国と見下した行動である。

 

日本人の私がここまで韓国へ肩入れする必要はない。「反日」で常に揺さぶられている相手であるからだ。ただ、中国の行動はWTOの規約を無視した行動である。今後、南シナ海や東シナ海へと、その無法な爪が伸びてゆく危険性を考えると、韓国への報復は決して見逃してはならぬ問題である。

 

文政権が、中国の経済報復に対して弱腰である理由は何か。

 

第一は、文政権が「86世代」の特色である「反米・親中朝」、「反企業」という学生時代から抱いていた「理念」に忠実であることだ。文政権はもともと、THAAD設置に反対であった。中国の反対意向を熟知しており、それに呼応する方針を表明していた。だから、中国によるTHAAD設置の報復に「内心」では受け入れているのだろう。国民の利益を無視して、「中国政府へ殉死する」意向だろうか。

 

第二は、文政権が朴前政権時代、ロッテが自ら経営のゴルフ場をTHAAD設置場所に提供したこと自体に不満を持っていることだ。「86世代」は、「反企業」でもある。ロッテが中国から経済報復されて苦境に立たされているのは、これも「内心」では「ざまあ見ろ」という心理状態であろう。

 

以上のような伏線を前提にすると、韓国大統領府が通商資源部の「WTO提訴」の意向を抑えて、あえて提訴しないという決定をくだした深層心理が手に取るように分かる気がするのだ。文在寅政権は、誰のための政権なのか。学生時代の夢を実現する「反米・親中朝」、「反企業」政権としたならば、韓国の企業も国民も救われないだろう。

 

中国へ強気になれない腰抜け

『朝鮮日報』(9月14日付)は、「中国によるTHAAD報復、青瓦台がWTO提訴見送りへ」と題する社説を掲げた。

 

この社説では、大統領府が北朝鮮問題を巡って中国から協力を得たいという理由で、あえて中国の経済制裁をWTOに提訴しない点を問題にしている。この大統領府の決定は正しいだろうか。中国政府に対してそのような「忖度」(そんたく)をしても通じるはずがない。むだな配慮と言うべきだろう。この点については、後で取り上げて議論する。

 

THAADを巡る中国の経済制裁は、明らかにWTO規定から逸脱している。韓国政府は、その矛盾を堂々と言えないほど弱腰である。「反日」となると、国を挙げての騒ぎになるが、こと相手が中国に関わる問題になると、途端に腰が引けてくる。この精神構造の背後には、儒教社会特有の意識があるのだ。「本家」(中国)に対して、逆らってはいけない。そういう負け犬根性が、最初から働いているに違いない。哀しい民族である。儒教とはここまで、「長いものには巻かれろ」という保守回帰文化であることに驚く。

 

(1)「高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に反発して韓国への報復を続ける中国について、青瓦台(韓国大統領府)は14日、世界貿易機関(WTO)に提訴する可能性を否定した。青瓦台の報道官は同日午後の記者会見で『中間の難しい問題については、戦略的な意思疎通と協力を一層強化しつつ解決していこうと思う』して『今は北朝鮮の核やミサイル挑発などに対応するために、中国との協力を維持していくことが非常に重要な時期」と述べた」

 

中国が、北朝鮮問題で韓国側の事情を斟酌して動いたことがあっただろうか。一度もないのだ。過去になかったことが、今後に起こるはずがない。韓国は、独立国家としてWTOに提訴して、第三者に事の善悪の判断を仰いだ方が良い。かつて日本は、レアアース問題で中国を提訴して勝訴している。それが原因で、日中関係がこじれて険悪になった訳でない。北朝鮮のミサイルと核の問題は、安全保障に関わる問題である。韓国固有の自衛権という立場でTHAADを設置するのだから、中国がこれを不服として経済制裁するのは筋違いなのだ。それをWTOの舞台で主張できない文政権こそ問題である。

 

(2)「青瓦台の関係者は、『今は提訴しないからと言って、韓国企業が困難に直面しているのをただ傍観するのではなく、韓国と中国が一層深い関係を築き、意思疎通を通じて外交的方法によって2つの問題を同時に解決しようというもの』と述べた。さらに『国家は全ての可能性に備えて検討している。このような問題があった場合、WTOに対してどうすべきか検討するのは当然だ』としながらも『WTOへの提訴については勝訴の可能性があるというだけで、確信があるわけではない』とも述べた。産業通商資源部は先ごろ、中国によるTHAAD報復措置がWTOの最恵国待遇の規定に違反しているため、WTOに提訴した場合韓国は勝訴できるという法理的検討を終えたという」

 

このパラグラフにおける大統領府の説明は、完全に詭弁を弄している。北朝鮮問題と、THAAD経済制裁の同時解決を図るというが、実現できると見ているのだろうか。北朝鮮問題が、やむなくTHAAD導入をさせた点では同根である。だが、中国は北朝鮮に対して経済制裁に積極的に取り組まず、原油供給では抜け穴を用意してきた。その中国が、韓国を制裁するとはあべこべである。中国の矛盾を突いてゆくべきなのだ。

 

北朝鮮問題で、韓国が中国と個別交渉できる範囲を超えている。韓国は、中国の印象を良くするためにWTO提訴を見送っても、北が核やミサイルを放棄する訳でない。この問題の解決は、最終的に米と中ロが鍵を握っている。もっとはっきり言えば、韓国は当事者でなくなったのだ。この現実を受け入れれば韓国が、北の問題で中国と個別交渉できる幻想を捨てるべきだ。ゆえに、韓国がWTOへ提訴して、中国の時代錯誤の意識を世界にさらけ出す強硬手段を執っても、韓国に北の問題で不利な結果は出ないのだ。米国が、韓国の代理人の役を果たしているからだ。

 

ただ、「86世代」は本質的に「反米・親中朝」である。中国をWTOに提訴することなど、恐れ多くてできない、という心情であろう。ならば、多大の損害を被っている韓国企業と韓国国民の立場はどうなるのか。中国へ忠義立てするよりも、韓国国内の損害に思いをいたすべきだ。

 

『中央日報』(9月16日付)は、「THAAD報復で撤収を決めたロッテ、社会主義中国市場を見直すべき」と題する社説を掲げた。

 

韓国大統領府と、韓国企業の所管である産業通商資源部(日本の経済産業省)では、WTO提訴の感覚が異なっている。大統領府は、「86世代」の学生運動上がりの集団である。もともと、官僚組織に無縁で市民組織の「一匹狼」的な人たちである。根っからの「反企業戦士」であるから、中国の経済制裁で苦しんでいる企業などについて無頓着なのだろう。事ここに至ってなお、中国のご機嫌取りをしようという「86世代」は、韓国の将来を誤らせる禍根となろう。

 

(3)「中国に3兆ウォン(約2930億円)を投資したロッテマートが撤収する。ロッテグループは最近、中国内のロッテマート全112店舗を売却すると明らかにした。中国がロッテに高高度防衛ミサイル(THAAD)配備場所を提供したという理由で無差別報復を加えてから6カ月目だ。体つきが大きいだけで小児的な行動を繰り返す中国の稚拙な姿は嘆かざるを得ない。問題はため息ばかりついている場合ではないという点だ。中国内の韓国産不買運動で現代自動車やアモーレパシフィックなど多くの韓国企業が苦戦している。『第2のロッテマート』になるのではという恐怖の中、機会の地と見なされてきた中国が韓国企業の墓に変わる雰囲気だ」

 

ロッテは約3000億円を投資して、中国市場を開拓してきた。THAADの敷地を提供したという理由で、中国政府から難癖(消防法違反)をつけられ閉店を命じられたもの。再開の目途も立たず、112の全店舗を売却して中国市場から撤退する。文政権は、中国政府からの不条理な扱いに対して、抗議もせずに静観しているだけ。こういうヌエ的な政府も存在するのだ。まさに、「親中国」の立場を鮮明にしている。文大統領はどこの国の大統領なのか。自国企業が、中国政府からいわれなき報復を受けても、効果的な対策を打たない。こういうときこそ、WTOなどに提訴すべきなのだ。文氏は韓国企業を見殺しにした点で永遠に記憶されよう。

 
(4)「中国の卑怯な報復に堂々と対抗しようという声が出ている。中国を世界貿易機関(WTO)に提訴しようという意見がそれだ。もちろん中国をWTOに提訴するのは複雑な手続きやその実効性などを考えると容易でない。しかし象徴的な意味が大きい。特に西側国家から市場経済の地位を取得しようとする中国には大きな打撃となる。産業通商資源部が最近、WTO提訴カードに言及した背景には、このような布石があるとみられる。しかし青瓦台(チョンワデ、大統領府)はすぐに『WTO提訴はない』と一線を画した。戦略的あいまい性どころか、手元のカードまで捨ててしまうのと変わらない」

 

中国政府の行動について、WTOの場で白黒をつけることは極めて重要である。西側諸国(日米欧)から、中国はWTOで「非市場国経済」という扱いを受けている。今回の、韓国制裁は、「非市場国経済」の振る舞いそのものだ。どこに、「市場経済国」に値するような行動があるだろうか。韓国の産業通商資源部は、「韓国制裁」が「非市場国経済」そのものであると立証したかったようだ。こうした中国の弱みを突けば、彼らの「唯我独尊」という子供じみた行動を是正するきっかけを与えられるはずだ。惜しい機会を逸した。日本政府ならば、絶対に見逃さず提訴するであろう。

 

韓国政府は、韓国企業の権利も守らないヌエ的な立場に堕している。これは、一種の「利敵行為」である。韓国政府は、ここまで自己の評判を落として、北朝鮮問題解決における中国の役割に期待している。これは、正しい政策選択であろうか。いくら「親中政府」といえども、国を売るに等しい行為に受け取られるであろう。世ではこれを「売国奴」と呼ぶが、そういう汚名を帰せられないように奮起すべきだ。

 

米国との同盟が最大の安全弁

『朝鮮日報』(9月15日付)は、「韓国が信じられるのは安保理ではなく同盟」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙ニューヨーク特派員、金徳翰(キム・ドクハン)氏である。

 

文政権は、北朝鮮問題解決で中国の役割に大きな期待を掛けている。そのため、WTO提訴も止めるという「犠牲」を払っているのだ。このコラムでは、そういう「中国詣で」が意味をなさないと指摘している。中国は所詮、北朝鮮と一緒に朝鮮戦争で韓国を侵略した国である。その中国に対して最大の信服を寄せているから悲劇である。むなしい行為だ。この点は、私も一貫して主張している。韓国が、簡単に中国へ接近している姿に疑問を持ち続けてきた。中国に心を許すべきではないのだ。朝鮮戦争でも、中国は韓国へ「謝罪」していないのだ。

 

米国が、2015年の安倍訪米時、米議会上下両院合同会議の席で安倍氏に演説をさせた。米国は、このとき初めて「侵略国日本」を許す気持ちになったという。侵略された側には、長年の鬱積した気持ちが残るのだ。この例で言えば、韓国は中国にすり寄るのでなく、米国と協調することが最善の道であった。中ロの参加する国連安保理に期待するよりも、同盟国と行動することだ。それが、いかに理に満ち利益になるかを説いている。

 

(5)「国連ではとっくの昔から正義や善意など消え去っている。安保理も拒否権を持つ五つの常任理事国が自国の利益を追求する談合の場に成り下がってしまった。実際に国連安保理が国際社会の紛争を解決できないケースはいくらでもある。最近もシリアではアサド大統領を中心とする独裁政権と反政府勢力が2011年から悲惨な内戦を続けているが、安保理ではロシアの反対で非難決議さえ一度も採択されていない。その間、シリアでは33万人が犠牲になった」

 

5大常任理事国は、自国の利益を中心に国際問題を議論している。そういう場に、自国の安全保障を託することほど危険なことはない。米国と中ロの利益は絶えず異なっており、意見の一致を見ることは、双方の思惑が最小限一致する時だけだ。

 

この現実を認識すれば、韓国が北朝鮮問題解決に当たって、八方美人的に「米中ロ」三カ国の意見一致に期待するほど愚かなことはない。とりわけ、中国のご機嫌取りは無駄である。中国に対しては毅然と対応することだ。ベトナムを見るがいい。中国に対して決して媚びを売らずにいる。韓国もベトナムを見倣うべきだ。韓国には、米国という強力無比な同盟国が存在する。文政権の「反米・親中朝」意識は、韓国の基本的な安全保障政策に逆行するもの。「反米・親中朝」の幼稚な考えは即刻、改めるべきであろう。

 

(6)「安保理で話し合われる北朝鮮問題や韓半島(朝鮮半島)問題も最終的には米国、中国、ロシアの利益が侵害されない範囲内でのみ合意が形成される。中国とロシアはこれまで北朝鮮の崩壊を招くような制裁には同意してこなかったし、今後もそうだろう。国際社会が本当に制裁を通じて北朝鮮の核問題を解決する意志があれば、中国のパイプラインはずっと前から閉じられていたはずだ」

 

中国が、北朝鮮に対して微温的な態度であったのは、中国最高指導部に「反習近平派」を抱えていたことも理由である。10月18日からの第19回党大会によって、習氏の目指す人事が決まれば、江沢民派に気兼ねした「北朝鮮政策」から抜け出す機会が生まれる。その理由は、米国が北朝鮮政策を最大の外交案件に据えているからだ。米国は、米貿易赤字の解消という理由からも、中国へ強烈な圧力を掛けている。中国経済は今や、「剣が峰」に立ったのだ。北朝鮮を国家として崩壊させず、「金正恩氏」排除という目標で米国と共同歩調をとらざるを得なくなっている。それこそ、「孫子の兵法」に従い、戦わずして勝つ方法を米中が模索するであろう。

 

こういう隠密作戦に、韓国の出る幕はない。中国は、韓国が尻尾を振ってきたから北朝鮮対策に取り組むのでない。一重に、対米関係改善が目的である。そんな中国へ、WTO提訴を取りやめるという「プレゼント」を送っても意味がないのだ。韓国は、米国や日本との関係強化が、最善の北朝鮮対策になる。

 

(7)「韓半島の命運が左右される決定的な瞬間に、韓国が頼るべきは安保理でない。6・25戦争(注:朝鮮戦争)で国連軍を派遣してくれたような国連はもはや存在しない。韓国が頼れるのは韓国と利害が一致する同盟国だけだ。『国際社会』『人類普遍の価値』といった抽象的でかっこよく見える言葉に自国の安全保障を委ねる誘惑を振り払わねばならない。それは今の安保理がわれわれに示してくれている」

 

文政権は、空想的な政策に弱い政権である。突然、建設中の原発を中止するとか、最低賃金を大幅に引上げれば「所得主導経済」が実現して、韓国経済が3%台成長に復帰するとか、夢のようなことばかり言っている。その延長線でWTO提訴を止めて、中国に北朝鮮対策で本腰を入れて貰うと言い出している。現実の北朝鮮政策は、米中二カ国の関係に移っているのだ。こういう厳しい国際情勢の現実を全く知らないのが、韓国「86世代」政権である。長年、外野に在籍して政策から遠ざかっていた面々が大挙、大統領府に集合しているにすぎない。いわば、「烏合の衆」とも言える。

 

外交では、外交部長官(外務大臣)初め、外交政策に素人が集まっている。日米中ロの四カ国大使は、全て非外交官出身である。大統領府の外交スタッフも素人同然とされる。これで一体、満足な外交政策ができるだろうか。はなはだ頼りにならない外交陣であることは確かだ。

 

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(2016年9月25日)

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2017-09-24 05:00:00

中国、「信用崩壊!」民間投資不振で鮮明「マネーサプライ急減」

テーマ:ブログ

 

 

経済の血液が減ってきた

民間投資回復に10ヵ条

 

 

私は、9月17日のブログのサブタイトルに、「すでにバブルは崩壊した、『後始末』で財政資金投入へ」とつけた。その後に発表された経済データを見ると一層、その感を深める。端的な例は、自律的に通貨供給が減少に転じたことである。経済が縮小均衡に向かっている中国は、エンジンである民間企業投資がはっきりと減速状態に入ったのだ。

 

中国政府は今、大慌てである。民間企業投資活発化の「手引き」なるものを発表するほどである。この問題については後で取り上げるが、まことに要領を得ない文書である。理解しにくい内容を要約すると、民間企業に対して設備投資を積極的にやってくれ、金融面でネックがあれば相談に乗る、官民共同事業の「PPP方式」に参加してくれ、と言った調子である。

 

この一片の通達で民間投資が回復するはずがない。中国経済全体が過剰設備を抱えている現状で、どうやって新規投資をするのか。まさに、「バブル経済」崩壊による自律的な経済縮小に見舞われている。この状態は、これまで予測されてきたものだ。及ばずながら、私はこのリスク到来を警鐘してきたが、それがいよいよ現実化してきた。

 

歴史上のバブル崩壊は、不動産の資産価格や株価の急落現象によって表面化してきた。中国の場合、政府の強烈な介入政策で価格の急落を防いでいる。それ故、外部から中国のバブル崩壊を「発見」することは極めて難しい。だが、債務が膨張し続けて不良債権化することで、中国経済は好循環の流れがストップしたことを暗示している。経済が順調に拡大していれば、債務が際限なく増えるはずがない。その点で、中国経済はすでに「死んだ」も同然の状態にある。大地の底で起こる「大地震」の予知同様に、中国のバブル崩壊は債務膨張で予知できる。債務が返済できずに累増しているからだ。債務のレバレッジ(テコの作用)が、効かなくなった。

 

8月の主要経済指標は、中国経済の「死」を感じさせるものである。

 

         7月     8月(前年同期比増加率)

輸出       7.2%   5.5%

固定資産投資   8.3%   7.8%(1月からの累計)

工業生産     6.4%   6.0%

不動産販売面積 14.0   12.7%(1月からの累計)

 

経済の先行きを占う意味では、固定資産投資の行方がポイントになる。もともと、中国のようにGDPの半分近くを占める固定資産投資は異常である。均衡がとれた経済では、個人消費が60~70%を占めるのが普通だ。中国の場合、個人消費は40%に達せず、残りの大半は固定資産投資という「土建国家経済」である。

 

この高い固定資産投資比率をいかに下げるか。急激に下げると、GDP成長率が急減速する。そこで、徐々に引き下げるとなると、皮肉にも非効率で無駄な投資を行なう羽目になる。現状がこの過程だ。政治的な理由から、中国は急激に経済成長率を下げられない宿命を負っている。専制国家ゆえに、高い経済成長率が共産党政権の正統性を担保している。こうして、中国のバブル崩壊は市場経済国と異なり、陰湿で超長期の時間を余儀なくされる。これまで、長年にわたり中国経済への理由なき楽観論が支配してきた。それが、破綻するのだ。世界は、非市場経済国のバブル崩壊=信用崩壊を初めて経験する。貴重な例になろう。

 

1~8月の固定資産投資は前年同期比7.8%増である。1~7月より0.5ポイント縮小した。1999年以来18年ぶりの低水準だ。道路や鉄道などインフラ投資は20%伸びたが、製造業の投資が4.5%増にとどまった。インフラ投資は、政府のさじ加減一つで増やせるが、製造業の固定資産投資は勝手が違うのだ。採算性という投資のソロバンが、最大のクリアすべき条件となる。肝心の採算性低下が、投資減速をもたらしている理由だ。

 

経済の血液が減ってきた

8月のマネーサプライM2伸び率は、前年同月比8.9%にとどまった。M2伸び率は、1996年の集計開始以来の最低水準を更新する結果となった。

 

ここでマネーサプライ(M2)の伸び率(前年同月比)が、どのような推移を経て減少してきたかを見ておきたい。

 

2016年 9月 11.5%

     10月 11.6%

     11月 11,4%

     12月 11.3%

  17年 1月 11.3%

      2月 11.1%

      3月 10.6%

      4月 10.5%

      5月  9.6%

      6月  9.4%

      7月  9.2%

      8月  8.9%

 

今年の1~8月の平均増加率は10.08%である。9月以降もこの減衰過程が続けば、17年通年のM2増加率は9%台に低下するはずだ。実は、政府の計画では今年のM2は12%の増加予想である。昨年が13%であるから若干の減少を見込んでいたが、一度も12%の増加率にならないどころか、5月からは10%を割り込む事態になった。

 

マネーサプライ増加率の減速は何を意味するか。これは、「信用崩壊」、「信用収縮」と言われる現象である。目立った金利の上昇がなくても、貸出先企業の業績低下や担保価値の低下などによって、いわゆる銀行の「貸し渋り」が起こる。1990年代、それをいやと言うほど経験したのが日本経済である。

 

「信用収縮」は、不適切な融資の継続によっても発生する。すなわち、過剰債務の発生から引き起こされるもの。具体的には、次のようなプロセスを経る。銀行の過剰融資が、焦げ付き発生や貸倒れを多発させるようになると、融資機関は不良債権の発生を警戒するようになる。現在の中国で起こっているマネーサプライ増加率の減少は、まさにこの状態を指している。バッド・デット(不良債権)は、バッド・バンク(不良債権受け皿会社)に買い取られ始めている。9月17日のブログは、この状態を克明に既述したので、ぜひ、参考にしていただきたい。

 

過剰融資が、自然発生的に「貸し渋り」を生んで「信用崩壊」、「信用収縮」を引き起こすのは興味深い。自然界で雪崩が起こるようなものだ。市場経済ルールを無視する非市場経済国の中国でも、銀行には倒産回避という自己防衛本能が備わっているからだ。中国政府はこれまで、市場経済ルールに楯突き、中国流を押し通してきた。だが、金融機関には国際的融資ルールが存在する。中国政府といえども、これだけは無視できないのだ。最後は市場経済という国際ルールに「屈服」させられたのだ。

 

私はこのブログを書きながら、ある種の「感慨」を覚える。中国が、無理に無理を重ねて、強引な成長政策を推し進めてきたが、最後はいかんともしがたい「信用崩壊」に見舞われているからだ。債務による固定資産投資の限界が、はっきりと露呈されてきた。中国は、世界でも例がない固定資産投資依存の偏った経済運営を行なっている。それが、短期的にGDPを押し上げると見たからだ。この政策を極限まで推し進めた習氏は、これからその燃え尽きた残骸を一つ一つ拾い上げて、中国経済の秩序を回復させなければならない。気の遠くなるような過程が待っている。

 

習氏には、2期目の政権がこういう「残務整理」の課題を背負っていく自覚があるだろうか。IMF(国際通貨基金)は、2012~16年の経済成長率が、債務に依存しない「正常な成長」であれば、5.5%と推計した。実際は過剰債務という支柱によって、これよりも1.75%ポイントも高い成長率(7.25%)を貪った。率にして3割余も「水ぶくれ」した経済である。この3割がどこに使われたのか。内政でなく軍事費の拡張である。習氏の政権基盤確立に向けられたのだ。

 

この過剰成長分が債務であったのだが、すでに「信用収縮」状態に入っている中で、過剰債務の返済は想像を絶するコストをもたらすであろう。その見本は、「失われた20年」と揶揄されてきた日本の苦闘に現れている。中国は、日本を上回る過剰債務だ。それは、日本以上の「信用収縮」コストを払うという意味でもある。比喩的に言えば、「失われた30年」が中国の未来である。

 

中国政府は、何の説明もなく突然、民間投資を刺激する方針を発表した。前述の通り、今年1~8月の累計固定資産投資において、製造業の投資が4.5%増にとどまったことを重視した結果であろう。

 

民間投資回復に10ヵ条

『人民網』(9月16日付)は、「国務院が民間の効果的な投資の活力を刺激するための意見発表」と題して報じた。

 

箇条書きにした10項目が全文である。ほかに何の説明もついていない。

 

『ロイター』(9月15日付)も、次のような記事を報じただけだ。

「中国国務院(内閣に相当)は15日、インフラなどのセクターにおける民間投資の呼び込みに向けた指針を公表した。ウェブサイトに掲載された声明によると、中国はインフラや公益のセクターで民間投資のアクセスを拡大する。指針は民間企業の事業コスト引き下げにも言及した。詳細は発表されていない」

 

中国政府は、この10項目で企業が設備投資を増加させると見ているはずがない。「役所仕事」で布告を出しただけであろう。インフラ投資では目の色を変える中国官僚が、民間の設備投資では賄賂という「見返り」はないと見たのかどうか不明にしても、「やる気」を全く感じさせない、民間投資回復策である。

 

(1)「中国国務院弁公庁はこのほど、「民間の効果的な投資の活力を刺激し、経済の健全で継続的な発展を促進することに関する指導的意見」を発表した。同意見は、民間の効果的な投資を刺激するために以下の10分野の政策的措置を示している。

1.「規制緩和・管理強化・サービス改善」改革の推進を深化させる。

2.民間投資プロジェクトの報告を展開し、状況を審査し、整理する。

3.産業転換・高度化を推進する。

4.民間資本が政府と社会資本が連携する(PPP)プロジェクトに参加するよう奨励する。

5.企業の経営コストを削減する。

6.融資をめぐる難題解決に取り組む。

7.政務の信頼構築を強化する。

8.政策の計画・調整を強化する。

9.「親(民営企業が困難に直面している場合、積極的にサポートし、より親しく語り合う)」、「清(民営企業家との関係をより清くする)」の新型政商関係を構築し、政府と民営企業が意思の疎通を図るための健全なメカニズムを構築する。

10.各種政策・対策を確実に実施し、その成果を上げ、民営企業の満足感を向上させる」

 

中国政府が、詳細な説明をつけていない段階で、コメントを書くのも不思議な話だが普段、中国経済をウオッチしている立場から、中国政府が何を意図しているか解説したい。

 

1,「規制緩和・管理強化・サービス改善」改革とは何か。政府の規制を緩和して、企業独自のマネジメントを強化する一方、消費者へのサービスを向上させて業績を好転させる。主旨はその通りだが、反面で外資企業への締め付けが厳しい露骨な保護主義をとっている。この点の改善も不可欠である。そうでなければ、外資企業は投資を回復させまい。

 

2.民間投資プロジェクトの報告を展開し、状況を審査し、整理するとは何か。民間投資プロジェクトも一々、政府に報告させるというのだ。「社会主義市場経済」とは、市場経済の顔をしているが、実質は「半官半民」ということであろう。息の詰まる社会での経済活動である。これで、先進国経済を追い抜くと豪語しているが、そもそもその発想法が間違えている。

 

3.産業転換・高度化を推進するとは何か。例の「2025産業強国」を指しているが、技術基盤がなく、外資企業の「技術窃取」によって目標達成という企みだ。中国による米企業技術の「強制移転」では、約3兆ドルの損失を受けていると言う。中国は、「他人の褌」で相撲を取る積もりだが、「米通商法301条」が知的財産権流出阻止の壁となろう。

 

4.民間資本が、政府と社会資本が連携する(PPP)プロジェクトに参加を推進するとは何か。PPPは、パブリック・プライベート・パートナーシップの頭文字をとったもの。中国の公的セクターの非効率は有名である。最初から、採算を度外視したプロジェトに民間資金を導入しようという魂胆だ。インフラ投資によるGDP押し上げが主目的であるから、民間資本は食い物にされるだけだろう。

 

5.企業の経営コスト削減とは何か。当面、「賃金コスト」削減である。労働生産性を上げて賃金上昇分を吸収する狙いだ。だが、AI(人工知能)とロボットの活用では、先進国がいち早く着手しており、外資系企業が続々と「帰国」している。中国が、「信用収縮」状態に入っている現在、新規投資は困難な状況に追い込まれている。

 

6.融資をめぐる難題解決に取り組むとは何か。ここに中国経済の抱える難問をいかに解くかという本音が出ている。「信用収縮」状態に入っているなかで、中国全体が「デレバレッジ」(債務削減)に取り組まざるを得ないからだ。部隊が戦闘に敗れ「戦線後退」という厳しい中で、精鋭部隊を再編成するような話である。新規融資をいかに確保するかだが、ここまで追い込まれる前に、債務依存経済から脱出すべきであった。私はそれを一貫して指摘してきた。『人民網』は、一度、「そんなことは分かっている」と反応したことがある。実は何にも、分かっていなかったのだ。

 

7.政務の信頼構築を強化するとは何か。政治的腐敗防止を意味している。企業から賄賂を受け取ってきた官僚が、身を糺すと言うのである。ただ、賄賂は中国の悪しき文化である。「名刺」代わりに賄賂を受け取る。そういう中国ビジネスの病根除去は、ほとんど不可能であろう。

 

8.政策の計画・調整を強化とは何か。「社会主義市場経済」の立て直しという意味だろう。このスタイルが、現在の中国経済を大混乱に陥れた元凶である。計画経済の放棄が先決だ。ただ、中国共産党が存在する限り、このスタイルからの脱却は不可能であろう。よって、中国経済の発展の可能性は少ない。

 

9.政府と民営企業が意思の疎通を図るべく、健全なメカニズムを構築するとは何か。具体的には、「親」と「清」の関係を強化すると指摘する。ここではたと戸惑うのは、中国があくまでも純粋な「市場経済」システムを拒否することだ。その裏には。民主主義政治=市場経済という密接な関係を嗅ぎ取っている。あくまでも共産党独裁で我が世の春を続けたい。それには、「社会主義市場経済」という「市場経済モドキ」の経済システムが不可欠と考えている。空前の「信用収縮」に落ち込んできた原因が、純粋市場経済システムでなかったのだ。その根本的な反省がないのだ。

 

市場経済のメリットは、非合理的な要因が日々の取引過程で排除されることである。価格機能がその信号の役割を果たしてくれるのだ。市場システムが日々、経済の逸脱を最小限にする「メンテナンス」情報を出してくれることに気づくことが必要である。「社会主義市場経済」では、政府によってそのメンテナンス機能が強引に取り外されているのだ。

 

10.各種政策・対策を確実に実施し、民営企業の満足感を向上させるとは何か。民営企業の満足は、政府の規制が撤廃されることに尽きる。社内に共産党支部がつくられ、政府と共産党に監視されている民営企業とは、想像を絶する存在だ。中国共産党は、中国4000年の歴史に絶対的な優位性を認めている。客観的に言えば、民主主義政治へ発展もできなかった保守回帰型文明である。決して、自慢できる歴史ではない。停滞の4000年において、恵まれてきたのは、一握りの支配階級だけである。それを矛盾として把握できない、中国共産党とはいかなる存在か。深くわれわれにその本質を問いかけてくるのだ。

 

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(2017年9月24日)

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