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第四章「大人にできること」

生活保護と子ども-(2)

 

 2011年度、ついに生活保護受給は200万世帯を超えた。1990年代に80数万人だった受給者は、2012年には220万人に及ぶそうだ。この数値はこの制度が発足したばかりの戦後の混乱期(1950年代)に匹敵する。リーマンショック以来の長引く不況の影響もあるのだろうが、尋常ではない。しかも高齢者や母子家庭ばかりでなく、働き盛りの30~50歳代の受給者が急速に増えているという。




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全国の支給総額はここ5年間で1兆円も増加し、3兆4000億円である。この費用は市区町村がその四分の一を負担するため、自治体の財政をかなり圧迫し始めている。NHKの報道によれば、大阪市では市民の18人に1人が生活保護受給者となり、市の一般会計予算の15パーセント近くを占めるまでに至っている。


その大阪には、生活保護を受けながら働かず、精神科の医者から薬をもらい、それを転売して金儲けをしている30代男性がいる。生活保護を受けている人は、医療費が無料である。月々の保護費は12万円くらいだから、薬の転売代金の収入と共に、丸ごと不労所得による「収益」となる。医者も医者だが、こうした悪質な不正受給を見抜けないシステムは一体どうなっているのか。あわせて、こんな若者を育ててしまった教育の、どこに問題があるのだろうか、と思う。


弱者を食い物にする「貧困ビジネス」も増加している。ホームレスなど高齢の独身者を、自分の所有する建物に住まわせて生活保護を申請し、12万円ほどの支給額から10万円もピンハネするそうだ。中には医者と結託して診断書を書かせ、「働けない証明」とする者もいる。なんとも浅ましい世の中になったものだ。

こんな悪質な「犯罪」に比べれば、我が家で暮らすことになった「偽装離婚」など、取るに足らないと言える。もちろん、200万世帯は不正受給ばかりだ、などと言うつもりは全くないし、受給者の圧倒的多数は正規の権利を行使しているはずだ。マスコミはいつも「極端な例」を話題にしているから、それに惑わされて生活保護受給者へのイメージを悪い方向で捉えてはいけないと戒める必要もある。


憲法で保障された「最後のセイフティネット」である。北九州であったような保護打ち切り策によって餓死に至るできごとなどは、起こしてはならない。が、それでも不正受給を取り締まる手立てはないのかと、世間は苛立つのである。私の教え子に、市役所の生活保護担当の若者がいるので尋ねてみると、「あやしいとは思っても見抜くのは難しい」との返答だった。彼も担当者として、苦悩している。

 


気がかりなのは、子どものことである。単身者はともかく、20代から50代の受給者となれば、子どもを育てている割合は高い。このような事情を抱えた子どもの生活の豊かさをどう補うかという次元ばかりでなく、自尊感情や向学心をどう支えていくか。私たち大人に課せられた課題であろうと思う。所得の低い家庭の子どもが学力も低いとする「学力格差」は、教員としての現場感覚からすれば、事実であろう。まして「貧しいからいじめに遭う」などという事態は、もってのほかである。


「いじめ」という事態は昔からあったが、「貧しいからいじめ」などというできごとは、私の子ども時代にはなかったと言える。「高度経済成長」「1億総中流」の時代より前には、みんなが貧しく、富める者にも心の豊かさがあったからだろう。その意味でも、世の中全体が、(日本人の心の在りようが)変わってしまったのである。




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