自作の小説「見えない羊」です。![]()
映画「箱の中の羊」の設定をお借りして、
ミリしら妄想で好きな話を書いています。
映画から参考にしている設定はこちら↓
息子7才のヒューマノイドを夫婦が引き取る話。
夫=工務店の社長。
妻=建築士。
前話 はこちらです↓
では、どうぞ。
見えない羊(4)
翌日、オレは、また職場にユウキを連れて行った。
売り場は社員とバイトに任せる。
ユウキは昨日と同じようにフラフラさせる。
オレは事務室でパソコンを打っていた。
すると、社員の一人がやってきて、
「社長。あの・・・息子さんのことですが・・・」
とおずおずと言い出すので、
「ん?何?ユウキがなんか、いたずらした?」
と、ちょっとドキッとしながら応答した。
「いえ、その逆です。
なんていうか、しっかりしすぎてて、
ちょっとみんなが怖がってるんですよ」
「・・・。そうか。
すまん。もう連れてこないよ」
オレは立ち上がって、売り場にいるユウキを呼んだ。
そしてその日はもう事務室から出すのはやめた。
帰宅後。
”宿題”を終えたユウキを、オレは書斎に呼んだ。
「なあ、ユウキ。
もうちょっと、可愛げを増やすことは可能?」
「わかりました。もう少し、甘えを増やします」
ユウキは少し目を閉じて、
ほんの数秒で、脳内のデータを書き換えたようだった。
目を開けるとさっそく、オレにすがりついてきた。
「ねえねえ、お父さん。野球の話をしようよ」
「お、いいねえ。今期のオルカーズは、なかなかだぞ」
「僕も楽しみなんだ。特に投手陣が強いよね?」
「そうなんだよな。でも、やっぱ、打線がなあ」
「だね。僕は、代打を多めに出した方がいいと思うけど」
「おおー、目の付け所が違うな、ユウキ」
「えっへん」
ユウキが鼻の下を指でこする仕草を見て、オレはなんだか、
本当の息子のように思えてきた。
自然に手が伸びて、ユウキの頭をくしゃっと撫でた。
ユウキは嬉しそうに、オレを見上げた。
「ショウコ!ユウキが、すごく可愛くなったぞ」
オレは妻の所にユウキを連れて行った。
リビングでぼんやりスマホをいじっていた妻が顔を上げる。
「ねえねえ、今度、野球場に行こうよ。お母さんもさ~」
ユウキが妻の腕を軽くつかんで、揺らした。
「何するの!離して!」
ショウコはつかまれていた腕を強く引き戻した。
ユウキの両手が宙に浮いたままになった。
ショウコはユウキをにらみつけ、
「急にベタベタしないで。気味悪い」
と両腕で自分を抱きしめている。
オレは、ショウコが本気でおびえていることに、
初めて気がついた。
「・・・お前、
そういう言い方はないだろ。
ホントの子どもだったら、
すごく傷つくぞ」
「・・・」
「お前が母親に向いていないのがよくわかったよ。
良かったよ。実際に生んでなくてさ」
ショウコは、両手で顔を覆ってしまった。
「・・・優等生が良いの、優等生が・・・」
「はあ?なんだよ、それ」
オレは混乱した。ユウキは、
「わかりました。お母さんの前では優等生になります」
と静かに言うので、オレは思わず天井を仰いだ。
「なあ、ショウコ。オレたちの息子が二面性を持っちまった。
どうしてくれるんだよ」
「知らないわよ!」
ショウコはリビングから飛び出し、寝室に入ってしまった。
オレはため息をつき、ユウキに言った。
「明日はオレ、出張だから。
ショウコのこと、頼むな。
3時過ぎにコーヒー持ってくだけでいい。
無理に話しかけなくていいから」
「うん。わかった」
ユウキは、さきほどのやり取りがなかったかのように、
無邪気に微笑んだ。
(続く)