自作の小説「見えない羊」です。![]()
映画「箱の中の羊」の設定をお借りして、
ミリしら妄想で好きな話を書いています。
映画から参考にしている設定はこちら↓
息子7才のヒューマノイドを夫婦が引き取る話。
夫=工務店の社長。
妻=建築士。
前話 はこちらです↓
では、どうぞ。
見えない羊(2)
1か月後。
利発そうな男の子が無人タクシーから一人で降りてきた。
玄関の門前で妻は嬉しそうに、「こんにちは」と挨拶した。
オレも倣って「こんにちは」と合わせる。
男の子はほほえんで、「ただいま」と言った。
もう、AIの中ではストーリーは始まっているようだった。
オレはちょっとムッとした。
「なあ。君はここに初めて来たんだから、
ただいま、は変だよ」
「あ、ごめんなさい。
こんにちは、ホリタニさん。初めまして。
・・・僕、どこから始めたらいいかわからなくて」
少し眉をひそめる少年を見て、オレの胸はチクリとした。
「う、すまない。こっちこそ、親になるのは初めてで」
少年は、静かに首を横に振り、微笑んだ。
「いいんです。気にしませんから。何でも言ってください」
妻は、そっと少年の背中を押した。
「さあ、中に入りましょう。お茶を淹れるわ」
妻が台所でお湯を沸かしている間、
オレと少年はダイニングテーブルで向かい合った。
「で?君の初期設定を教えてもらえるかな?」
オレは性別だけを決めて、あとは妻に丸投げしていた。
少年は頷き、よどみなく語り出した。
「はい。工場からもらったデータをお伝えします。
お父さんの名前は、ホリタニ マサオ。52才。
お母さんは、ショウコ。50才。
僕の名前はユウキ。7才です。
小学生ですが、学校に通うオプションはありません。
性格は落ち着いていて、朗らかで、気が利く、という、
優等生タイプとなっています。
それ以外は、順次、付け足していくので、教えてください」
「えー?オレの子が優等生?ちょっと違うんじゃないか?」
「ご不満でしたら、今、変更します」
「お、じゃあさ、野球が好きで、喜怒哀楽がはっきりしてて、
いたずらっこで、スキンシップが好きで・・・」
「やめて」
妻がマグカップを載せたトレイを持って立っている。
「ユウキ。あなたは、優等生タイプでいて」
椅子に座ったままのオレとユウキは、ショウコを見上げた。
「なんで?」
「だって、そのほうが可愛いでしょう?」
「・・・そうか。君のおもちゃだもんな。好きにしなよ」
オレは椅子から立ち上がり、妻の持つトレイから
自分のマグカップを持ち上げると、書斎に入った。
ドアの向こうから、妻の声が聞こえる。
「ユウキは、カフェオレが好きなのよね。
夕飯は、ユウキの大好物のチャーハンにするわ」
「ありがとう、お母さん」
オレは、(今日はチャーハンか)と思った後、頭を振った。
(馬鹿馬鹿しいお人形ごっこだ。付き合っていられない)
パソコンのスイッチをオンにすると、
たまっていた仕事にとりかかった。
ふと耳を澄ませるが、
もう、リビングからは、会話は聞こえなかった。
(続く)