自作の小説「見えない羊」です。羊

 

 

映画「箱の中の羊」の設定をお借りして、

ミリしら妄想で好きな話を書いています。

 

映画から参考にしている設定はこちら↓

息子7才のヒューマノイドを夫婦が引き取る話。

夫=工務店の社長。

妻=建築士。

 

 

前話 はこちらです↓

見えない羊(1)

見えない羊(2)

 

では、どうぞ。

 

見えない羊(3)

 

 

 

後日。

オレは、職場である工務店にユウキを連れて行った。

ユウキが人型AIであることは伝えずに。

 

「社長、お子さんがいらっしゃったんですか?」

目ざとい社員の一人が、すぐ近づいてきた。

 

「まあな。ユウキっていうんだ。今日は見学でな。

 事情があって、学校には行ってないんだ。

 でも、お前らより出来がいいから、気を抜くなよ」

 

「あはは。わかりました。よろしくね、ユウキ君」

「はじめまして。ホリタニ・ユウキです。

 よろしくお願いします」

 

ユウキが頭を下げると、他の社員たちも集まってきた。

 

「ユウキがうろついていても、無視してくれていい。

 ユウキが質問してきたら、答えるくらいでいいから。

 それ以外は、普段通りに仕事してくれ」

 

「そうですか。

 ユウキ君、工務店は危ないものが多いから、

 ケガをしないように注意してね」

「はい。ご親切にありがとうございます」

「わあ、本当に素晴らしい息子さんですね」

「はは。まあな」

 

全員が部署に着いた後、オレはユウキに耳打ちした。

 

「メモを取るふりをして、従業員たちの動向を見てくれ。

 接客がなってないやつとか、サボっているやつとか、

 仕事での問題を見聞きしたら、あとでそっと教えてくれ」

「わかりました、お父さん」

 

ユウキは、子ども用のエプロンのポケットから

形ばかりのメモ帳とペンを取り出し、

店内をふらふらと歩き回り始めた。

 

オレはにやりとした。

(AIの使い方ってのは、こういうものだろ?

 オレって頭いいよな~) 

 

 

帰宅後。

家を仕事場にする建築士の妻は、夕飯を作って待っていた。

 

「おかえり。どうだった?」

「ああ。ユウキがずっと見回ってくれたよ」

「お母さん、ただいま。色々と見学出来たよ」

 

3人で食卓に着く。

ユウキの前にもお皿はあるが、手は付けない。

ただニコニコして、オレたち夫婦の食べるのを見ている。

 

食後、オレはユウキに職場のことを聞いた。

オレが日々見落としていた問題を次々に報告してくれた。

さらには、小さな手でペンを持ち、

書類にそれらの懸案を書き出してまとめてくれた。

 

「助かる~。ありがとうな。また明日も頼むよ」

「わかりました、お父さん。じゃあ僕、宿題をします」

「うん、あとでな」

 

ユウキの言う宿題とは、充電する時間のことだ。

自室とは名ばかりの納戸に入って、

自分でコンセントを差し、目をつぶると直立不動になる。

それを見ると、やっぱりロボットなんだなあとしみじみする。

 

一方、妻のショウコは、重苦しい顔をしている。

 

「マサオ。ホントに上手にユウキを”使ってる”わね」

「うまいだろ?」

 

「子どもとの接し方って、それでいいの?」

「いいじゃないか。ユウキだって、役に立って喜んでる」

「・・・」

 

「そういうショウコはどうなんだ?

 構ってたのは最初だけで、あとは無視してただろ」

「・・・。何を話したらいいか、わからなくて」

 

「うん。わかるよ。

 だからさ、仕事に使ったっていいだろ?

 せっかくうちにある”家電”なんだからさ」

「・・・それじゃあ、子どもにした意味がないじゃない?」

 

「生身の子どもとは違うんだ。

 アニメのドラザエモンみたいなもんだよ」

「・・・もっとにぎやかになるかと思ってた・・・」

 

 

 

(続く)