以前、正多面体などについでその情報を集約した配置行列というものをご紹介しました。
正多面体と正タイル貼りの配置行列 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
立方体を例に、画像を見ながら簡単に復習しましょう。
Hexahedron - Platonic solid - Wikipedia
[ 8 3 3 ]
[ 2 12 2 ]
[ 4 4 6 ]
まず対角要素の8, 12, 6 はそれぞれ頂点、稜、面の数を表します。
1行目真ん中の3は、頂点が3価であることを意味します。
頂点の価数とは1個の頂点に接している(から出ている)稜の本数のことです。
1行目右端の3は、1個の頂点に3枚の面が接していることを意味します。
2行目左端の2は、1本の稜の両端が頂点であることを意味します。
2行目右端の2は、1本の稜が2枚の面に挟まれていることを意味します。
3行目左端の4は、1枚の面が4個の頂点と接することを意味します。
3行目真ん中の4は、1枚の面が4枚の稜に囲まれていることを意味します。
一般化すると、次のような定義になります。
定義: 正多面体の配置行列とは、次の3×3行列である。
[ N00 N01 N02 ]
[ N10 N11 N12 ]
[ N20 N21 N22 ]
Nij は、i行j列の要素。
そのうち対角要素は Nii=Ni で Ni はi次元の構成要素数を表す。
(0次元の構成要素が頂点、1次元の構成要素が稜、2次元の構成要素が面)
対角要素以外の要素 Nij は、i次元構成要素1個に接するj次元構成要素の数を表す。
正多面体の場合、次の各式が成り立ちます。
N0-N1+N2=2 オイラーの多面体公式
N01 = N02,N10 = N12 = 2,N20 = N21,
Ni Nij = Nj Nji 関係式(このブログでの名称)
多面体の場合、3本ある関係式の値はすべて一致するので、まとめることができます。
立方体の場合には次のようになります。
8×3 = 2×12 = 4×6 = 24.
さてその後、配置行列を準正多面体(立方8面体と20・12面体)、半正タイル張り、4次元正多胞体、ブロック積みなどの情報も表現できるよう拡張してきました。
立方8面体を例に、やはり画像を見ながら解説します。
Cuboctahedron - Archimedean solid - Wikipedia
[ 12 4 2|2 ]
[ 2 24 1|1 ]
[ 3|4 3|4 8|6 ]
3行目は、正3角形の面が8枚、正方形の面が6枚あることを意味します。
1行目右端の「2|2」は、1つの頂点が正3角形の面2枚と正方形の面2枚に接することを意味します。
2行目右端の「1|1」は、1本の稜が正3角形の面と正方形の面各1枚に挟まれていることを意味します。
ここまでは成功例です。
しかし、準正多面体以外の半正多面体11種類についてはこの方法では複雑になり過ぎてうまく行きませんでした。
私の試行錯誤の一端を示す意味で、切頂立方8面体に関する失敗例を載せておきます。
画像も載せますが、失敗例なので飛ばしてもこの後の理解に支障はありません。
Truncatedcuboctahedron - Archimedean solid - Wikipedia
[ 1 ]
[ 48 1 1|1|1 ]
[ 1 ]
[ 24 1|1|0 ]
[ 2 24 1|0|1 ]
[ 24 0|1|1 ]
[ 2|3|0 ]
[ 4|6|8 2|0|4 12|8|6 ]
[ 0|3|4 ]
この場合、面が正方形、正6角形、正8角形の3種類あり、稜も正方形と正6角形に挟まれるもの、正方形と正8角形に挟まれるもの、正6角形と正8角形に挟まれるものの3種類あります。
このため、N1 と N2 がどちらも3種類ずつとなり、N12 と N21 はそのクロスなので3×3=9の行列として表現して、行列の入れ子にしたわけです。
しかし、ご覧の通り一見してよく分からないというのが正直なところです。
考案者の私がそう思うのですから、他の人はこれを「解読」しようという気にはならないでしょう。
というわけで、行列の入れ子は使えないことが分かりました。
ここからが今回の本題です。
以上の失敗に鑑みて、いくつか改良を加えました。まず
1.数値を区分する記号として「|」だけでなく、「+」も使う
それらの数値を加えた結果が意味をもつ場合は「+」を使い、意味をもたない場合は「|」で区分する。
ただし、通常の加算記号とは異なり「+」の前後を逆にすることはできない。
2.同じ種類の数値を縦に並べることはしない。(行列の入れ子で失敗したので)
これは、1の工夫により可能となる。
これにより、どの配置行列も3行で記述できることになる。
3.配置行列を簡略形と展開形の2種類に分ける。
先の切頂立方8面体の場合、完全な情報を示すために必要な数値の数は減らせないが、こちらを展開形と呼ぶ。
それとは別に、全体を理解しやすくするために簡略形も用意する。
簡略形と展開形の行列どうしの間は次の記号で結ぶものとする。
簡略形 =< 展開形
(簡略形の代わりに縮約形と呼ぶ方が量子論を連想したりしてカッコいいかとも思ったのですが、最終的により分かりやすい用語である簡略形を採用することにしました。)
4.簡略形では、対角要素が分割されていない行の他の要素は、単一の数値とする。
また、稜の情報を示す2行目は、「+」や「|」で分割しない。
これは、両端に2個の頂点をもつことと2枚の面に挟まれていることは、すべての稜に共通しており、面や頂点と比べて区分する重要性がやや低いと判断できるため。
それでは、新しい表記法で切頂立方8面体の配置行列がどうなるかを見ましょう。
[ 48 3 3 ] [ 48 1+1+1 1+1+1 ]
[ 2 72 2 ] =< [ 2 24+24+24 1+1+0|1+0+1|0+1+1 ]
[ 4|6|8 4|6|8 12+8+6 ] [4|6|8 2+2+0|3+0+3|0+4+4 12+8+6 ]
まず簡略形を見ると、一番重要な面については3行目で正方形の面が12枚、正6角形の面が8枚、正8角形の面が6枚あることが分かります。
また、3価の頂点が48個、稜が72本あります。
次に展開形を見ると、稜にも3種類あり、いずれも24本であることが分かります。
N23 =「1+1+0|1+0+1|0+1+1」により、稜を挟んでいるのはそれぞれ a.正方形と正6角形、b.正方形と正8角形、c.正6角形と正8角形であることが分かります。(abcは稜を示す記号としてこの段落のみで使う。)
N32=「2+2+0|3+0+3|0+4+4」により、正方形はa2本、b2本に囲まれ、正6角形はa3本、c3本に囲まれ、正8角形はb4本、c4本に囲まれていることが分かります。
(順序も含めると、それぞれ abab、acacac、bcbcbcbc となるが、配置行列ではこの順序を表示できない点に注意)
頂点を見ると、稜ではabcの3種類1本ずつに接し、面では正方形、正6角形、正8角形1枚ずつに接しています。
展開形は先ほどの失敗例と同数の35個の数値を含むので複雑ではあるのですが、簡略形との対比と数値を区分する記号を分けたことで、だいぶ見やすくなったと思います。
ここからは、準正多面体2種類、それらの双対2種類、残りの半正多面体11種類、合計15種類について、改善した配置行列を掲載します。
多面体の名称の横に、コンウェイ記号と頂点構成も併記します。
・準正多面体2種類
準正多面体は、面は2種類ですが、頂点と稜は1種類です。
1.立方8面体 aC=[3434]
Cuboctahedron - Archimedean solid - Wikipedia
[ 12 4 4 ] [ 12 4 2+2 ]
[ 2 24 2 ] =< [ 2 24 1+1 ]
[ 3|4 3|4 8+6 ] [ 3|4 3|4 8+6 ]
頂点構成 [3434] を見ると、正3角形と正方形が各2枚ずつ頂点を取り囲んでいて、それらが交互に並んでいることが分かります。
一方、展開形を見ると、前半の情報は「2+2」などに含まれていますが、順序は分かりません。
順序の情報が表示できないのは配置行列の一般的な欠点の一つですが、ただでさえ他のいろいろな情報を詰め込み過ぎているので、その点はし方ないでしょう。
2.20・12面体 aD=[3535]
Icosidodecahedron - Archimedean solid - Wikipedia
[ 30 4 4 ] [ 30 4 2+2 ]
[ 2 60 2 ] =< [ 2 60 1+1 ]
[ 3|5 3|5 20+12 ] [ 3|5 3|5 20+12 ]
・準正多面体の双対2種類
半正多面体には含まれませんが、面が1種類の菱形で稜の長さがすべて等しいなど対称性が高いので、ここで紹介しておきます。
多面体の双対は、配置行列を180°回転することにより表されます。
頂点は2種類ですが、稜も面も1種類です。
なお、面が正多角形ではなくなるため、頂点構成の表示はなしです。
3.菱形12面体 daC
Rhombicdodecahedron - Rhombic dodecahedron - Wikipedia
[ 14 3|4 3|4 ] [ 8+6 3|4 3|4 ]
[ 2 24 2 ] =< [ 1+1 24 2 ]
[ 4 4 12 ] [ 2+2 4 12 ]
面は1種類の菱形です。
正多角形ではない点にご注意ください。次も同様です。
4.菱形30面体 daD
Rhombictriacontahedron - Rhombic triacontahedron - Wikipedia
[ 32 3|5 3|5 ] [ 20+12 3|5 3|5 ]
[ 2 60 2 ] =< [ 1+1 60 2 ]
----------------------------- 続 く ----------------------------
★ 今日のロジバン
lo bakni lo srasu cu citka
牛が草を食べる。
bakni : ウシ属動物だ,x1は x2(種類)の。-bak- [生命・動物・特定動物]
srasu : 草/草原/原っぱだ,x1は x2(種類)の。-sas- [生命・植物]
citka : 食べる,x1は x2 を -cti- [生命・生理学・消化]
これも辞書の文例の積み残しです。
主述語は { cu citka } で、そのx1が { lo bakni } 、x2が { lo srasu } です。
ロジバンではx2はx1より後であれば主述語の前に置いてもよいので、このような日本語的語順も可能なのです。
禁止されているのはx1を主述語の後に置くことですが、その場合も転換 se や項番明示 fa を使って可能にできます。