『地球規模の気象学』1 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
『地球規模の気象学』4 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
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それでは、蛇行の波長がもっと大きければどうなるのでしょうか?
その一つが異常な天候をもたらす原因ともなる「ブロッキング」という現象で、北半球でよく発生します。
ロスビー波は東西波長が長いほど西に進むスピードが速いので、波長が十分長ければ東へ向かう基本流の速いスピードとつり合ってその場に停滞することになるのです。
こうして動きの止まったロスビー波を「(準)定常ロスビー波」といいます。
「準」を付けるのは、厳密には完全に静止しているわけではないからですが、まあその点は当然なので省略してもよさそうです。
定常ロスビー波となったジェット気流の蛇行は、停滞するだけでなく、蛇行の南北への振れ幅がとても大きくなることがあります。
北側に蛇行している部分には基本流に時計回りのロスビー波が重なっており、これは北半球では高気圧の渦です。
北に大きく蛇行した部分には大きな高気圧を抱え込んでおり、これを「ブロッキング高気圧」といいます。
ブロッキング高気圧のブロックとは、偏西風で東に流される移動性高気圧や温帯低気圧の動きを阻むことから名付けられました。
ブロッキング高気圧はヨーロッパや太平洋上の日付変更線付近で発達しやすく、その大きさは 5 000 km にもなる広がりをもちます。
それが1週間以上、ときには1か月以上にもわたって停滞するのです。
春や秋に日本付近を通過する移動性高気圧の大きさは 500 ~ 1 000 km 程度なので、それと比べるとかなり大きいことが分かります。
バレーボールやバスケットボールで体の大きい選手が相手の動きやボールを妨げるイメージですね。
ブロッキング高気圧は、ジェット気流の蛇行に関連するだけではありません。
ときには、ジェット気流がブロッキング高気圧のあたりでその北側を大きく迂回する流れと南側を真っ直ぐ東に進む流れとに分かれることがあります。
冬に、日付変更線付近にこのようなブロッキング高気圧が居座ると、北に回ったジェット気流は南から北極海に暖気を呼び込み、季節外れの高温をもたらします。
逆に、このジェット気流が北から戻ってくる位置にあたるアメリカ中西部では、大雪を伴う低温になることがあります。
2017年1~2月にアラスカ付近で発達したブロッキング高気圧は、ジェット気流から切り離されて巨大な高気圧のまま西に進み、1週間ほどでシベリア上空に達し、やがて周囲に馴染んで消滅しました。
北半球のジェット気流は、北側の喚起と南側の暖気の境目を流れる地衡風です。
したがって、北に膨らんだジェット気流の南にできるブロッキング高気圧の空気は暖かいので、それが北側に切り離されてやがて消滅したということは、熱が南から北へ偏西風帯を横切って運ばれたことになります。
ブロッキングの代表的な形には、
(a) 高気圧だけを抱え込む「Ω型」
と
(b) 高気圧とその南側の低気圧からなるペアを抱え込む「双極子型」
があります。
偏西風帯では、通常、移動性高気圧や温帯低気圧がジェット気流の蛇行とともに西から東へ進み、天気が周期的に変わります。
しかし、ブロッキングが発生すると、周期的変化が止まって同じ天気の状態が長く続いたり同じこと(南岸低気圧の到来)が何度も繰り返されたりして、異常気象と感じられるようになります。
さてこれまでの説明は、ジェット気流の蛇行や特定の波長のロスビー波の存在を前提としたものでした。
なぜジェット気流の蛇行やロスビー波が発生するのか、ロスビー波の波長は何で決まるのか、が触れられていません。
ジェット気流を蛇行させる原因は複数あります。
波の成因は、外部から力が加えられて無理やりできる場合と、流れそのものが不安定なためにちょっとした乱れがきっかけになって波に発展してしまう場合とに大別できます。
先に後者の、移動性高気圧や温帯低気圧の発生に関係する「傾圧不安定」について説明します。
傾圧というのは、地上と上空の流れが同じでないことを指します。
西から東へ向かう基本流が、地上と比べて対流圏の中層でかなり速い(風速差で5m以上)場合、南北にわずかに波打つサインカーブのような規則的蛇行が乱れとして加わると、蛇行は成長します。
このとき、成長しやすい乱れの波長があって、それは 3 000 km~5 000 km とのことです。
こうした流れの不安定で生み出される波動を、「傾圧不安定波」といいます。
この傾圧不安定波は、春や秋に日本列島に交互にやって来る移動性高気圧と温帯低気圧に関係が深いのです。
北半球の高層天気図では、等高度線は極に近い北ほど低く、南ほど高くなっています。
ジェット気流が南に蛇行しているとき、地形のイメージでみると、標高の低い北側の低地がその部分で南の高山部分に食い込んでいることになるため、こうした部分を気圧の「谷」と呼びます。
同様に、北に蛇行している部分を気圧の「尾根」と呼びます。
上空のジェット気流の蛇行と地上の移動性高気圧と温帯低気圧の動きは、密接な関係があります。
たとえば、上空でジェット気流の谷が西から近づいてくると、地上では温帯低気圧がやって来ます。
ジェット気流の気圧の谷の東側では低気圧が発生しやすく、西側では高気圧が発生しやすいのです。
これは、それぞれの部分で低気圧、高気圧が発生しやすい上昇気流、下降気流が発達するためです。
北半球では、傾圧不安定で発生した移動性高気圧や温帯低気圧は熱を南から北へ運ぶ効果をもっています。
高低気圧は、南から暖かい空気を引き込んで北側に運び、北側の冷たい空気を引き込んで南側に運びます。
また、先にみたブロッキング高気圧も南の暖かい空気を北に運びます。
いずれも、ロスビー波が関係しています。
つまり、赤道に近い低緯度での熱輸送はハドレー循環のような「循環」が担い、中緯度では「波」によって極側に熱が運ばれます。
空気の動きや熱を運ぶ仕組みが、根本から違うのです。
中緯度帯では波に伴って空気があちこちで複雑な動きをしているのですが、中緯度の空気の流れについて地球をぐるりと一周する平均をとると、見かけ上の循環が出てきてしまいます。
これがフェレル循環で、ハドレー循環のように実体があるものではなく、平均をとるという人為的な計算上の操作により仮想的な循環が見えてくるだけです。
温帯低気圧は、北半球では反時計回りの渦です。
渦の東側では南から来る暖気が上昇しますが、その上昇域は、渦の西側で北から来る寒気の下降域よりも北側にあります。
温帯低気圧の構造により、高緯度側で暖気が上昇し、低緯度側で寒気が下降するのです。
コンピュータによる計算で温帯低気圧周辺の空気の動きを追跡すると、全体としては、高度2 000 m あたりを流れてきた低緯度からの風が緯度45度くらいで上昇し、高度 6 000 m くらいに達して向きを赤道方向に変え、30度前後の緯度で下降してきます。
遠く離れた場所の天候どうしに何らかの関係が見られるとき、その結びつきを指して使われる気象用語が「テレコネクション」です。
梅雨どきの大雨や夏の酷暑の原因として、「シルクロードテレコネクション」が指摘されることがあります。
ユーラシア大陸の中央部あたりを通った偏西風の蛇行がはるか東の日本列島に影響を与えるのです。
これを説明するのが、地形により生じるロスビー波です。
ユーラシア大陸にある平均標高 4 500 m 超の広大なチベット高原が、ロスビー波を通じて日本列島の気候に影響を与えているのです。
これまで、偏西風帯を東向きに吹く風に対して、ロスビー波の波長が短いと東向きに流され、長いとその場にとどまるという説明がありました。
ただし、これはロスビー波の位置を固定するものがなく、波が自由に動ける場合です。
波の一部がある場所に強制的に固定されている場合には、異なってきます。
偏西風帯のロスビー波の場合、その「ある場所」とは陸の大規模な山岳です。
ユーラシア大陸中央部のチベット高原や北米大陸西部のロッキー山脈などに偏西風が西からぶつかり、その流れが強制的に曲げられてジェット気流の蛇行を生みます。
山岳の位置は不変ですから、蛇行の影響を受けやすい地域も大体決まっています。
偏西風は高度により強弱が異なるとはいえ、対流圏の上から下まで全体で吹いています。
対流圏は地上から高度数十 km までですが、平均標高 4 500 m のチベット高原や最高峰が 4 401 m のロッキー山脈は、高いといっても半分程度です。
偏西風はこれらの山岳を乗り越えることができます。
このとき、何が起こるのでしょうか。
すでに説明した「絶対渦度の保存」では、実は「大気が地上から対流圏の上端まで1本の柱と見なすことができ、それが水平方向に移動する」という暗黙の前提がありました。
ここからは、対流圏界面でふたをされた天井はそのままですが、床は山岳の存在により変動するため、移動する大気の柱は上下に伸び縮みすると考えます。
大気の柱の体積が一定のまま柱が上下に伸びると、柱は細くなります。
フィギュアスケートのスピンで広げていた腕を縮めると、スピンの回転スピードが上がります。
物理学でいう「角運動量保存」です。
この場合、渦度も変化するため、絶対渦度は保存しません。
その代わりに、「絶対渦度/柱の高さ」で定義される「ポテンシャル渦度」という量が保存します。
ポテンシャル渦度の保存則
相対渦度 +惑星渦度 = 絶対渦度 = ポテンシャル渦度 = 一定
柱の高さ 柱の高さ
山岳を上ることにより柱の高さが低くなると、絶対渦度が小さくなり、相対渦度も小さくなって、時計回りの渦成分を獲得することになります。
北半球にある大気の柱について、北に動くことと柱が縮むことは相対渦度に同じ効果を及ぼすことになります。
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★ 昨日、新御茶ノ水で友人に会ったのですが、3年ほど会わなかった間にずいぶんと老け込んでいました。それは多分お互い様だと思うのですが、話を聞くと1分も歩くと腰痛がひどくなり、また7キロも痩せたが原因不明ということです。大病院で調べてもらっているので、私がアドバイスできることもなさそうでしたが、大変心配です。
あと、新御茶ノ水の超長いエスカレーターは、今でも上から見下ろすと真っ逆さまに落ちそうで怖いです(^^;
★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス156
.i va’o da’i na’e bo la’e di’u ju’o cu’i jy na cadzu ve ka’a lo mi se djica
「そうしないと、あたしの行きたいほうに歩いてくれないかも!
va’o : ~を環境/状況として。法制詞BAI類 <- vanbi 環境/周囲
da’i : 非現実 「もし~なら」「仮に」 心態詞(談話系)UI3類
na’e : 段階否定「~以外の/ではなく」。段階詞NAhE類。-nal-
ju’ocu’i : 不確信。定かなところは分からない/確信できない。心態詞(修飾系)UI*5類 <- ju’o 確信, ju’onai 不可能と確信
veka’a : ~を経路/行路/筋道として。法制詞BAI*類 <- klama 行く/来る
djica : 欲する/求める,x1は x2(事)を x3(目的)のために;欲求を満たしたい,x1は x3(目的)のために x2(事)という。-dji-
主述語は { na cadzu } で、そのx1が { lo jamfu } 「足」の代項詞 jy です。
その前に法制節 { va’o da’i na’e bo la’e di’u } がありますが、{ la’e di’u } は直前に言った内容、この場合は「足さんに親切にする」を表します。
後ろの { ve ka’a lo mi se djica } は、「私の望む経路で」です。
出典は、