超準解析入門の入門1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12538313977.html
超準解析入門の入門6:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12541254822.html
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6 超ベキ
2つの集合XとYの直積X×Yは、両者の元の順序対から成る集合 { (x, y)|x∈X,y∈Y} として定義されるのでした。
それを3つ以上の集合の直積に拡張するためには、(X×Y)×Zのように繰り返していけばよいのですが、この方法では有限個の範囲では何とかなっても、無限個の集合の直積は作れません。
任意の個数の集合の直積は、次のように定義します。
直積の定義 : 集合族 Xi (i∈ I ) に対して、元の族の集合 Πi∈I Xi = {(xi) i ∈ I |xi∈Xi,∀i∈ I } をその直積(direct product)という。
さて、ここからフィルターが活躍します。
集合族 Xi (i∈ I )と I 上のフィルターFに対して、直積 Πi∈I Xi 上の2項関係≡を次のように定義します。
a≡b ⇔ {i∈ I |ai=bi }∈F
これは、 a と b とがFの基準で十分多くの i について一致する、つまり両者が十分近いことを意味します。
(“十分近い”というのは位相空間論で近傍により定義される概念でしたが、フィルターは近傍概念の拡張となっています。)
・ 上で定義された直積 Πi∈I Xi 上の2項関係≡は、同値関係である。
証明:反射律と対称律は自明。 {i∈ I |ai=bi }∈F かつ {i∈ I |bi=ci } ∈F とする。フィルターの性質から、{i∈ I |ai=bi }∩{i∈ I |bi=ci }∈F なので、 {i∈ I |ai=bi }∩{ i∈ I |bi=ci } ⊂ {i∈ I |ai=ci }∈F となり、推移律も成り立つ.//
約積の定義 : 集合族 Xi (i∈I) と I 上のフィルターFに対して、直積 Πi∈I Xi を上で定義された同値関係≡で割って得られる商集合を、集合族Xi の約積(reduced product)と呼び、
Πi∈I Xi/F
と書く。
超積の定義 : Uが自由超フィルターであるとき、約積 Πi∈I Xi/Uを超積(ultraproduct)という。
超ベキの定義 : 集合族 Xi (i∈I) が、すべての i について Xi=X であるとき、超積 Πi∈I Xi/U を超ベキ(ultrapower)と呼び、 X I /U で表す。
演算+,・ や関係<が定義された構造Aに対し、その台集合Aの超ベキ上でも演算+,・ や関係<が同様に定義されます。
この点の確認は面倒なので省略します(^^;
第1節後半でフレシェ・フィルターFを使った約積で「有限個の項を除き」という議論を行いましたが、それと同様です。
------------ 続 く -----------
超準解析入門の入門8:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12541524136.html