目次
0 はじめに
1 数列としての超準自然数
2 さまざまな無限大自然数とその大小
3 素朴な超準自然数概念の破綻
4 1階算術の公理系たち
5 自由超フィルター
6 超ベキ
7 自然数の超準モデルとその順序構造
8 実数の超準モデルと無限小
0 はじめに
最近、次の数学書を買って読んでいます。
田中 一之 著 『数学基礎論序説』 裳華房 A5判上製388頁 2019年6月発行 本体価格¥5,400(税込¥5,832)
https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1575-7.htm
副題は「数の体系への論理的アプローチ」、英語名は”Logical Foundations of Mathematics”。
私が読んでいる本の中でも相当難解な方なので、書評を書けるかどうかは分かりませんが、超準解析を解説した部分は興味深いので、今回はそこだけ私なりにかみ砕いてご紹介したいと思います。その際、wikiも参考にしています。
超準(ちょうじゅん)解析とは、“nonstandard analysis”の訳です。
“standard analysis”は標準解析なので、標準的でない解析を超準解析というわけです。
では、「超」がどこから出てきたのかというと、後で説明する「超ベキ」(ultrapower)から来ているようです。
超準解析という訳語は、標準解析と語呂も合っている上に、内容的なものも含んでいるので、非標準解析という否定的な特徴付けでしかない“nonstandard analysis”よりもずっと良い(頭のいい!)名称だと思います。
表題を「入門の入門」としたのは、『数学基礎論序説』の第3章5節が「超準解析入門」となっているので、ど素人の私が同じ題名を名乗るのはおこがましいという思いからです。
なお、定理、命題のうち気の向いたものだけ証明を付けてあります(^^;
1 数列としての超準自然数
普通の(標準的な)解析では、無限大や無限小というのは実在するものではないとされてきました。
その代わりに、悪名高いε-δ論法(エプシロン・デルタろんぽう)などが考案されてきたわけです。
(集合論の基数(濃度)や順序数には無限基数あるいは超限順序数が出てきますが、実数の拡張ではないので、普通の数の系列とは異なります。特に、超限順序数では加法でも交換則が成り立たないので、普通の数とは言いにくいという気がします。)
ところで、無限大や無限小は数列の発散とか収束として現われます。
たとえば、(1, 2, 3, ・・・, n, ・・・)という数列は正の無限大+∞に発散し、(1/1, 1/2, 1/3, ・・・)という数列は0に収束します。
それならば逆に、(1, 2, 3, ・・・, n, ・・・)のような数列をそのまま実在する正の無限大、(1/1, 1/2, 1/3, ・・・)のような数列を実在する無限小として考えることはできないでしょうか。
とりあえず、自然数の拡張としての正の無限大を考えるので、自然数の数列のみを対象とします。
負の無限大は、正の無限大である数列の各項に負号を付ければ作れますし、無限小は、無限大数列の各項の逆数を取れば作れます。
それらは、後で実数の拡張として考えることにします。
正の無限大に発散する数列の代表選手は、
(1, 2, 3, ・・・, n, ・・・) ・・・ (1)
です。
数列(1)は(正の)無限大を表しますが、それでは、普通の自然数(これを標準自然数という)nを表す数列はどのようなものになるのでしょうか。
次のようにすべての項が同じ数nから構成される数列を自然数nとみなせばよいわけです。
n=(n, n, n, ・・・, n, ・・・) ・・・ (2)
左辺のnは数列で、右辺の各項のnは本来の自然数を表しますが、以下いちいち断りません。
ここで、第1項だけ異なる次の数列を考えてみます。
(0, n, n, ・・・, n, ・・・)
項が無限にあるのですから、1つくらい違っても同じものだとみなしてよいでしょう。
そこで、この数列も同じnだと考えることにします。
さらに思い切って、第1項に限らず有限個の項だけ(2)と異なる数列はすべてnだと考えることにします。
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超準解析入門の入門2:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12538320696.html