超準解析入門の入門1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12538313977.html
超準解析入門の入門5:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12539815799.html
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5 自由超フィルター
フィルターの定義 : 与えられた集合 I に対して次の性質をもつ集合Fを、 I 上のフィルター(filter)という。
F1.X∈F → X⊂ I . (Fの元は I の部分集合)
F2.I ∈F, ¬φ∈F. ( I はFの元だが、空集合はFの元ではない)
F3.X∈F ∧ X⊂Y⊂ I → Y∈F.(Fの元を含む I の部分集合は、Fの元)
F4.X,Y∈F → X∩Y∈F. (Fの元どうしの共通部分もFの元)
有理数集合Qを完備化して実数集合Rを作るときに、コーシー列ではなくフィルターを使うやり方がありますが、実質的には同じです。
フレシェ・フィルターの定義 : ある集合において、有限部分集合の補集合全体からなる集合はフィルターとなる。このフィルターをフレシェ・フィルター(Frëchet filter)という。
証明:集合 I とその有限部分集合の補集合全体からなる集合Fを考える。Fの元x,yに対して、z⊃x と w=x∩y がいずれもFの元であることを証明すればよい。I∖z は有限集合 I∖x の部分集合なので、I∖z も有限集合。I∖w=I∖(x∩y)=(I∖x)∪(I∖y).I∖x も I∖y も有限集合なので、I∖w も有限集合。//
単項フィルターの定義 : ある集合において特定の元xを含む部分集合の全体は、フィルターとなる。このようなフィルターをxで生成される単項フィルター(principal filter)という。
ここでの話題とは直接関係ありませんが、位相空間論で出てくる近傍系はフィルターの典型的な例です。
・どのような位相であっても、点xの近傍系はxで生成される単項フィルターに包含される。
超フィルターの定義 : 集合 I 上のフィルターUが次の性質をみたすとき、超フィルター(ultrafilter)という。
∀X⊂ I (X∈U ∨ I∖X∈U)
つまり、「 I のすべての部分集合Xについて、XかXの補集合のいずれかはUの元である」
・超フィルターは、集合 I 上のフィルター全体が包含関係で作る順序集合における極大元である。
証明:背理法で証明する。超フィルターUが極大元でないとすると、Uを真に含むフィルターFが存在する。Fに含まれUに含まれない I の部分集合をXとする。UはXを含まないので、I∖Xを含む。 したがって、Fも I∖X を含むが、Xと I∖X の両方を含むならば、空集合 φ=X∩I∖X も含むことになり、フィルターの定義に矛盾する。//
この結果から、超フィルターのことを極大フィルター(maximal filter)ということもあります。
・単項フィルターは超フィルターである。
証明: I の元xから生成される単項フィルターをFとする。 I の部分集合はxを元とするならばFに含まれ、xを元としないならばFに含まれないので、超フィルターの定義をみたす。//
・集合 I 上の任意のフィルターFに対して、Fを包含する超フィルターUが存在する。
この定理の証明には選択公理が必要ということです。
自由超フィルターあるいは非単項超フィルターの定義 : 単項フィルターでない超フィルターを自由超フィルター(free ultrafilter)あるいは非単項超フィルター(nonprincipal ultrafilter)という。
自由超フィルターの“自由”のニュアンスは、単項フィルターのように特定の元に束縛されない、ということかと思います。
『数学基礎論序説』では「非単項超」しか出てこず、「自由超」はwikiによります。
「自由超」の方が積極的な意味をもつこと、また一文字短いことから、ここでは「自由超」を採用することとします。
・任意の無限集合上には、自由超フィルターが存在する。
・超フィルターが、自由超フィルターであることとフレシェ・フィルターを包含することは同値である。
単項フィルターは分かりやすいのですが、自由超フィルターは後でみる重要性にも関わらず具体的なイメージが湧きにくいのが難点です。
ただ、「フレシェ・フィルターを包含する」という点は多少の助けになります。
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