悩んだ。
この時は、正直な話、
「畜生ッ、奴(演出)を殺しておれも・・・」
と思った。
劇団の総力を挙げて上演する作品だった。
「お前が出て来た途端に、積み上げた緊張感がパッと消える」
と言われた。
実在の人物で軍事委員会議長とかいう肩書きを持っていた。
およそ2ヶ月に及ぶ稽古で、初日数日前まで、
「緊張感が消える」を言い続けられた。
役の自分が、何処で何をしていて、
ここに来るのにどのような所を、何を見、何を感じながら歩いてきたのか。
それとも車で来たのか、若しかすると馬だったのかもしれない・・・
稽古のたびに試し、イメージを深めていた。(つもりだった)
そのうち、演出は、
「駄目だ」
としか言わなくなった。
鏡を前にしても稽古した。
翌日も、
「駄目だ」
・・・・・・
殺意が芽生えたのはこの頃である。
今日稽古が終わったら殺してやる。
密かにナイフをバッグに入れていた。
ところが、その日は何も言われない。
稽古が終わり、食堂でラーメンをすすり、トイレに行くと演出と出会った。
「来る途中何を見てきた?」
「戦況です」
これに対して、
「部下の兵士たちの眼を見てきたろう。どんな眼をしていたんだ」
「・・・」
数日後、旅先で幕が上がった。
私は継続していた出演作品を終わらせて、数週間後の合流だった。
演出が最後の最後に言ってくれた言葉をかみ締めながら舞台に立った。
旅館に帰り食事をした。が、演出はいなかった。
その数日後である。
「あいつは、何で稽古場でちゃんとやらないのかなァって言ってたよ」
話では、
私が「稽古場をなめている」と考えているというのだ。
「最初から、今日みたいな稽古をしてくれていりゃ言うことないのに」
こう言ってため息をついていたのだという。
冗談じゃない。実は殺してやろうと思ったことがあることを話した。
「へぇ、そうか。今度言っておいてやるよ」
私は慌てて、「冗談だよ」と打ち消したが、さあ、果たしてどうだったのか、
その後、確かめてもいない。
「グッドナイト&グッドラック」での
エドワード・マロウがよかった。
抜群の演技に驚嘆した。
メリル・ストリープの「激流」
「戦場のジャーナリスト」などがある。




