「それでセリフ言ってるつもりか?」
稽古初日のことである。
1日10時間の稽古が、最低でも1ヶ月続く初日なのだ。
「返事をしろ。それがセリフか?」
「今日は、稽古初日です。これからどんどん変わって行きます」
「いつまで待てばいい?」
「明日にも変わります」
横に座った友人が小声で、
「口ごたえするな」
とささやいてくる。
「明日まで変わるんだな?」
「はい」
友人は、
「そうだ、それだ」
「じゃ、それを期待して、今日の稽古は終わりだ」
一度、通して読んで終わってしまった。
三々五々稽古場を出て行く連中は全員無口だった。
友人は心配してくれているのだろう、
「お前、大変な約束をしたな」
最初から逆らわなきゃよかったんだよ。
逆らう等という気持ちはまったくなかった。
少なくても、
稽古初日に言われるダメ出しではないという思いが強かったのだ。
翌日の稽古が始まった。
演出は、昨日のことなど忘れているかもしれないとは思うものの、
寝るのも惜しんで稽古をして臨んでいた。
「じゃ、昨日やった最後の場面を読むか」
来た、来たッ! 予想通りとは行かなかった。
読んだ。
「何処が変わったんだ?」
「・・・・」
返事を返す何ものも持ってはいなかった。
「何も変わっちゃいないじゃないか」
「オレを馬鹿にしてるな?」
「それともやる気がないのか?」
ここまで言われて黙っているわけには行かない。
「今日は、稽古2日目です。変わります」
「もういい。セリフは全部カットだ。このセリフの意味を・・・」
全部、笑いにして言えというのだ。
「今朝のパンは食べたか?」
とか、
「ちゃんと睡眠は取れてるのか?言いたいことがあったら、ちゃんと言え」
等々のセリフを笑いでやれという。
相手が返事できなければ言ったことにはならない。
以後、劇団と家との2時間の往復時間を含め、
生活の全部を笑いで生きる覚悟を決めた。(続く」
「白い巨塔」の財前医師だ。
TBSの「白のシリーズ」や「霧のシリーズ」等で、
送りの車で宿泊先までご一緒した。
「なぁ、ちょっと寄っていかないか?」と誘われて
コーヒーを・・・。
「白い・・」はフジTVだった。「何かおかしい」と
本人にいったひと言が気になったようだった。
その後、猟銃自殺のニュースが・・・・