私の好きな役者(6) | 演劇人生

演劇人生

今日を生きる!

「それでセリフ言ってるつもりか?」

稽古初日のことである。


1日10時間の稽古が、最低でも1ヶ月続く初日なのだ。

「返事をしろ。それがセリフか?」

「今日は、稽古初日です。これからどんどん変わって行きます」

「いつまで待てばいい?」

「明日にも変わります」


横に座った友人が小声で、

「口ごたえするな」

とささやいてくる。


「明日まで変わるんだな?」

「はい」


友人は、

「そうだ、それだ」


「じゃ、それを期待して、今日の稽古は終わりだ」


一度、通して読んで終わってしまった。

三々五々稽古場を出て行く連中は全員無口だった。


友人は心配してくれているのだろう、

「お前、大変な約束をしたな」

最初から逆らわなきゃよかったんだよ。


逆らう等という気持ちはまったくなかった。

少なくても、

稽古初日に言われるダメ出しではないという思いが強かったのだ。


翌日の稽古が始まった。

演出は、昨日のことなど忘れているかもしれないとは思うものの、

寝るのも惜しんで稽古をして臨んでいた。


「じゃ、昨日やった最後の場面を読むか」


来た、来たッ! 予想通りとは行かなかった。

読んだ。


「何処が変わったんだ?」

「・・・・」

返事を返す何ものも持ってはいなかった。


「何も変わっちゃいないじゃないか」

「オレを馬鹿にしてるな?」

「それともやる気がないのか?」

ここまで言われて黙っているわけには行かない。


「今日は、稽古2日目です。変わります」


「もういい。セリフは全部カットだ。このセリフの意味を・・・」

全部、笑いにして言えというのだ。

「今朝のパンは食べたか?」

とか、

「ちゃんと睡眠は取れてるのか?言いたいことがあったら、ちゃんと言え」

等々のセリフを笑いでやれという。

相手が返事できなければ言ったことにはならない。


以後、劇団と家との2時間の往復時間を含め、

生活の全部を笑いで生きる覚悟を決めた。(続く」


12月は O・ヘンリー原作「最後のひと葉」
   私の好きな役者 田宮二郎さん

    「白い巨塔」の財前医師だ。

TBSの「白のシリーズ」や「霧のシリーズ」等で、

送りの車で宿泊先までご一緒した。

「なぁ、ちょっと寄っていかないか?」と誘われて

コーヒーを・・・。

「白い・・」はフジTVだった。「何かおかしい」と

本人にいったひと言が気になったようだった。

その後、猟銃自殺のニュースが・・・・