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演劇人生

今日を生きる!

きょう、第1回ワークショップ≪アクターズクラス2008≫を打ち上げた。

・・・といっても、役者として歩く彼等にとっての始まりでもある。


無事(?)終ったことで、ホッ・・・とすると言いたいところだが、

その暇はない。


彼等にとっての始まりであれば、

ぼくにとっても同じことだ。


皆さん・・・前置きの後で申しわけありませんが、

おかげで「結婚申し込み」打ち上げました。

評判は上々(?)でした。


・・・そりゃ、不満は数限りなくあるが、

よくここまで来たという言葉は贈ろうと思う。


「お疲れさん!」


ただ一つ、諸君は大変な世界を創ろうと始めた仕事だということだ。

さあ、覚悟を決めて、

前の一歩へ歩を進めて欲しい。

芥川龍之介作「雛」のラストに引用された句です。

蕪村の作のようです。

この作品を舞台化するに当たって、

ぼくは、

「世の中を 憂しと恥しと思えども

飛び立ちかねつ 鳥にし あらねば」

という歌を付け加えました。

これは本居宣長だったと思います。

「あゝ、羽根があったら飛んで行きたいよ」

とは、様々な場面で言われる言葉だが、

蕪村の句の、

箱を出る雛は、節句を過ぎると、

また箱へ戻される・・・


「雛」では、

よく出来た雛人形が、

少女お鶴の手に渡ったのは、

ごく最近だったのではないだろうか・・・

代々受け継がれてきた由緒のある雛人形だった。


それを売らなければならないほどの窮状を理解できるだけに、

お鶴は親に無理はいえない。


だが、売られる前に、

もう一度だけでも、

雛の一つ一つを目の奥に焼き付けておきたい・・・

少女、お鶴は願うのだった。


しかし、手付けをもらったものは他人様のもの・・・と、

父は頑なだった。


そして、明日は人手に渡るという前の夜・・・

涙をこらえて寝付いた少女のお鶴は、

ふとしたもの音に気付いて目を醒すと・・・


そこには、寝巻き姿の父が暗闇の先に目を据えたまま座っていた。

「・・・?!」

少女、お鶴が見たものは・・・・


このお鶴にとって、

売られていく雛は、

二度と箱に戻ることのない宝物ではないだろうか。


そこに、芥川がこの句を引用した思いが込められていはしないだろうか・・・

九十歳を前にしたお鶴が、

少女の頃の思い出を語るのであるが、

蕪村がイメージしたように、

内裏雛、女雛、三人官女、五人囃子、右近に左近・・・・等々、

一人一人の顔を、その心に宿し続けていたのである。


いい想い出は大切にしたい・・・・

今週末、故郷出身者の集まりがある。


ふるさとの山形からも10数人が上京し、
百五十人位になる予定だ。

今回から司会を引き受けた。
・・というのは、昨年まではお客として参加していたが、
ぼく位の年齢のオヤジが緊張でコチコチになり、
読み間違えたり、シドロモドロになる姿を見て、
申し訳ないと思ったことと、可哀想になったからだった。
こっちは周りと雑談して食べたいものを食べ、
司会者を「あいつ緊張してるよ」などと揶揄る声を耳にしながら

放りっぱなしで済まない思いに駆られたからだ。

その打合わせをした。
その席に、昨年の司会者も同席した。
・・・その彼の様子を見て、
「・・・?」
その表情に寂しそうな影が見えるのである。
「そうか。下手でも彼にやらせておけばよかった」
のかもしれない・・・彼にとっての楽しみを
おれは奪ってしまったのではあるまいか・・・
彼が明るく振舞えば振舞うほど、
何か、心を締め付けられるような思いに襲われた。
彼は不得手な司会だが、
懸命につとめあげ、
何とか会を導いたという
満足感を味わえたのだとしたら、
今回の司会は、ただ上手くやれば
こと済むという仕事ではないのかもしれない。
・・・このような思いをしている。

自分で「よかれ」と思うことでも、
それは自分の感覚からの発想だけではないか。
物事の背景には、様々な思いや、
感情があることを考えるべきなのかもしれない。
さて、当日の心の準備に、
一つの課題が生まれた気がする。

芥川龍之介の作品で、「雛」を読んだ人は少ないようだ。

「羅生門」「薮の中」「河童」「杜子春」「蜘蛛の糸」や、

「蜜柑」「トロッコ」等々沢山ある中で、

読んだが最後、

数日間脳裏に焼きついたまま消えなかった作品の一つが「雛」だった。

短編で簡単に読めるが、

読みすすめる中で、その情景が生々しく映し出される。

そして、登場人物と同じ目線に誘ってくれるのだ。

ぼくは、芥川の最高傑作のひとつだと思う。

まだ出演者の顔ぶれが整っていない。

難しい作品だから、

おいそれと「わたしがやりたい」とは名乗れなかろうと思う。


演出をと名乗り出ているぼくだが、

実は自信があるか・・・と問われて、

「はい」とは言い切れない。


そんな作品である。

いま、その挑戦者を募っている。


箱を出る 顔忘れめや 雛二対

(蕪村)


※写真はj享保雛を模した等身大の男雛と女雛
劇団生活-享保雛