38.殿様ことば
33.殿様ことば
韓国語の会話の語尾に、セヨ、という言葉が
あります。
-세요[セヨ]:1.命令を表す。…ください。
…してください。
2.疑問を表す。…なさいますか。
…でいらっしゃいますか。
…ですか。
ここでは命令を表す、セヨ、を取りあげて見るの
ですが、例えばレストランで食事して、「お勘定
してください」と言うのを、게산 해 주세요
[ケサン ヘ チュセヨ]と言います。ケサンを
漢字で書きますと、計算、です。ヘ チュセヨで、
して下さい、という丁寧な命令形になります。
日本語で、せよ、と言えば、行かせよ、歩かせよ、
黙らせよ、など今の日常語に聞くことはありません
が、時代劇の殿様ことばの命令形として耳に慣れた
言葉です。またこのお殿様が家来の報告などを聞いて
たいぎだ、たいぎである、などと返事をしたりする
のですが、この、たいぎだ、は韓国語です。
다헹이다[タヒェンギダ]:幸いだ、幸運だ、幸せだ。
漢字では多幸と書き、発音も簡単に、タイギダ、と
言っています。
つまり時代劇の殿様も、そうか、よしよし、よかった
なと言っているだけで、大儀、などという大層な漢字
を当てはめるほどのことではありません。
韓国の現代劇でも若い女の子が、タイギダ、と言うと
英語字幕には、I’m happy to hear thatなどとあり、
あー、よかった、安心したわ、という程度の言葉です。
それでも、体がたいぎだ、って言うじゃないと言う声
も聞こえますが、これは漢字で書くなら、怠気、で
だるっこしい、の意味です。ドラマの中で殿様が家来
の報告を聞いて、余はだるっこしいのである、とは
言わないでしょう。ちなみにこの、だるい、は英語の
dullからの造語だと思います。
それでこの項でお話したかったのは、殿様ことばに
何故韓国語が入っているのかなのです。
早い話、私たち誰も昔の殿様の会話など直接聞いた
ことなどないのです。しかもまだ標準語など無い時代
ですからどこのお殿様も本当はそこのお国言葉を話して
いたはずです。そこで江戸時代の旅芸人さんの劇では
シナリオを書く人が朝鮮語を用いたというのが私の
推理です。また芸人さん達も朝鮮系の人たちだった
はずです。
ただ、ここでハタと気が付いたことは、もしかして
江戸時代のお殿様が本当に、セヨ、とか、タイギダ、と
言うのを戯曲家が聞いて知ってたのかもしれないという
ことです。そうしますとお殿様も朝鮮からということに
なります。
セヨやタイギダは韓国の現役言葉です。そうしますと
どういうことになるのでしょうか。