老舗を「ろうほ」と読まないわけ | みんななかよく

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 フリーアナウンサー有働由美子(53)が28日、パーソナリティーを務めるニッポン放送「うどうのらじお」(金曜後3・30)に生出演し、漢字の読み方にまつわる事実に驚きを口にする場面があった。

 

 ここもツッコミどこかもしれないけど、先を急いで。

 以下、一部引用。

 

>スーパーのお茶を販売するコーナーで店員が「おいしい“ろうほ”のお茶ですよ」と、老舗の茶葉を紹介していたとのメールが寄せられた。

 

>有働アナは「“ろうほ”ね…どうしよう。店内販売だもんね。どこかで教えないといけないパターンだね。伝えないとね」とコメント。アシスタントの熊谷実帆アナも「“しにせ”はさすがに大丈夫でしたけど…」と続いた。ともに、「ろうほ」の読みは誤読との認識を示した。

 

>しかしその後、番組に「辞書に“ろうほ”という読み方も出ていますよ」などと指摘のメールが複数来たという。有働アナは「え?マジ?」と驚き、「ろうほのようかんって言ったら、いいわけ?ろうほのお茶、ろうほのようかん…」とポツリ。

 

 そもそも「しにせ」って日本語と、「老舗」って漢語との関係は、漢字に和語を対応させる訓読みとは別なんじゃない?

 

 出典や漢和辞典を確認するのは億劫なので記憶で書きますが、以前、「蘇東坡詩集」って岩波文庫を読んでいたら、「土産」という言葉に註がついていて、「その土地の産物」だったっけな。そういう意味が書いてありました。読み方は当然、「どさん」だったと思う。

 

 いま、たまたま広辞苑が傍にあったので引いたら、どさん【土産】という見出し語があって、①土地の産物 と書いてあり、次に②みやげ。 と、ありました。 ①の用例に平家が引かれていたので、どさん(または とさん)が古くからの日本語なんでしょうね。

 

 ついでに、みやげ【土産】を引くと、(ミアゲ(見上)の転)と注記があって①旅先で求め帰り人に贈る、その土地の産物 という意味、②人の家を訪問するときに持って行く贈物  という意味が載っています。(他に、嫁入り、婿入りの時のお金という意味もあるらしい)

 

 話は「ろうほ」の方に移って、引き続き広辞苑をひくと、

ろう⁻ほ 【老舗・老鋪】 代々続いた商店 しにせ

 とあり、「しにせ」を調べると、

しに⁻せ【老舗】(動詞「仕似せる」から) ①先祖代々の業を守りつぐこと ②先祖代々から続いて繁盛している店。またそれによって得た顧客の信用・愛顧

 とあります。引用では省きましたが①には用例で浄瑠璃の天網島が出ていますから、こちらも近世には使われていた言葉でしょう。

 

  漢字の知識というと、こうした、老舗(しにせ)とか土産(みやげ)とか長押(なげし)とかの読み方が、一つのジャンルになっていますが、漢字そのものの意味や和語の意味をふまえて上でないと、なんかクイズじみた知識と思えます。

 

 前に書いた記事。

   

 

 微睡とか彷徨とか漢字熟語を、「まどろむ」とか「さまよう」という言葉に宛てた言葉を取り上げているのですが、「微睡む」のような言葉は、 元の漢語があるのが前提なんじゃないかなあ。

 

 もっぱら「しにせ」と言われている、字で書くと「老舗」という言葉も、「ろうほ」という読み方があると考えた方が自然。

 日常の話言葉で使っているときは、「しにせ」と発音している言葉は、漢字で「老舗」と書くと知っているからこそ、「ろうほの茶葉」と聞いて、字を思い浮かべたわけでしょう。

 それを、「誤読」と思うより、「日常では普通使わない、あまり適切ではない言葉の使い方」と推測するのが妥当ではないかと思います。