2022/11/27 ローカル線の未来を考えるシンポジウム 各地の取り組み | 金屋代かずおのお部屋

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周防大島町を拠点に鉄道旅行・鉄道もけいの活動を行っています.

(備後西城にも「熊野神社」があるということは?)

 

これまでの旅路

 

 

ズバリ,本日の記事は昨日の続きです.

シンポジウム後半は庄原市・新見市・奥出雲町・広島県観光協会の取り組みを発表する内容となっています.地元自治体は芸備線について,「廃止が前提となっている」とJR西日本との協議を拒否する姿勢を見せるなどと報道されていますが,当たり前ですが地元自治体が何の取り組みも行なっていない訳ではありません.ここでも一部紹介しようと思います.ただし,このシンポジウムは同時配信(記事公開現在視聴不可)がなされていたために筆者では録画などは行っておらず,メモをとって聴講しましたが,筆者の印象に残る内容の要約であり,必ずしも発言された方の意見を正しく表現しているとは限らないためご注意ください.

 

  庄原市

庄原市に限らず,「芸備線対策協議会」相当の組織ができ上がったのは比較的近年の2021年の話です.ソーラーパネルが並ばないほど自然が残っていることを生かして「ローカルダイブトレイン」の取り組みを行っています.ただし天候に左右されることが弱点です.

近年運行されている「庄原ライナー」についても,帝釈峡へ接続するバスを用意する,スタンプラリーなどのイベントを行うなどの施策がなされ,地元としてはかなり危機感をもって動いています.もちろん駅の掃除なども行われていますが,庄原市には大学(県立広島大学)があることも強みになっています.

 

  新見市

新見市では駅カードの配布やフォトコンテストなどを行っていました.また,このイベントと類似のイベントを2021年に実施し,約400名の参加者のうち,約100名がJRを利用したとの話がありました.また,地元の利用を促進するため,住民に地域ポイントを付与したICOCAを配布する,複数名での利用を助成する,市役所職員に鉄道利用通勤を呼びかける,「瑞風」「WE銀河」などに対しておもてなしをする,鉄道の時間帯に合わせて予約制の乗合タクシーを運行するなどの取り組みも行われています.新見市にとっては「姫新線」の利用促進も課題ですが,そちらは「芸備線」より若干先行して成果が出ているようです.

 

  奥出雲町

こちらは沿線の「道の駅奥出雲おろちループ」の関係者が出席されました.1992年に開通した奥出雲おろちループ・道の駅は3段式スイッチバックに沿って道路がループするという全国でもインフラツーリズムに向いた土地であります.列車の見送りのほか,出雲坂根→三井野原を列車利用した後,「奥出雲おろちループ」を歩いて降るアクティビティが人気だそうです.「グルメマラソン」も行われています.また,道の駅には3段式スイッチバックのジオラマがあるとのことです.

 

  広島県観光協会

最近は地方・近場志向が高まった「マイクロツーリズム」が盛んであり,自然環境を生かした持続可能な観光に注目されるとのことでした.また,2020年以降も地方の観光地の客足は割合にするとそれほど落ちていないこと,屋外の観光スポットが人気であること,備後庄原駅の人出が約5倍,備後落合駅では約1.4倍になっていること,福塩線では「ワイン列車」が行われたこと(2022/11/19)も紹介されました.

 

これらの発表に関して,鳥塚社長から,「駅のクリーンアップはどんどん行ってほしい」「フォトコンをするならカレンダーの商品化を」「体験型旅行という新たな取り組み」「現地に行かないと分からないクイズ(クイズの構成は専門家が作成)」「新見については特急,特に寝台特急で東京と直結することが強み」「交流人口の増加」「スイッチバックとループを組み合わせた地域は貴重な資源」「循環ルート,つながっていることであちこちに抜けるルート作りが大事」「フィルムコミッションなどで情報発信」などのアイデアが用意され,「木次線は陰陽交流のために作られた」「鉄道には社会的使命がある」ということで,ディスカッションは締めくくられました.

 

その直後,参加者から「芸備線の風景を『鉄道唱歌』に乗せて,介護施設や小学校で歌っている」との発言もありました.

 

  まとめ

さまざまな活性策が発表されましたが,これらの取り組みは実のところ,山口県地域でもある程度行われているほか,実は筆者も行える範囲で行っている,ということに,当ブログをいつもご覧いただいている方はお気づきではないかと思います.しかし,一部の報道によると,「JR西日本はこれらの取り組みについて『恒常的な利用増につながっていないため効果がない』と判断している」とも報じられています.こればかりは都市部も含めた全国的な課題となっている人口減・超高齢化によるところが大きく,鉄道が活用されるには結局地域力が非常に大事になってくる,ということを,筆者はこの後,この旅の中で実際に鉄道に利用して感じとることになります.

 

おそらく,芸備線の備中神代〜備後庄原(と木次線の備後落合〜出雲横田)は,JR西日本の路線としては比較的早い段階で廃止,あるいは「上下分離」になることが避けられず,あとはそこからレールをどのように使うのか,それともレールを剥がすのかという厳しい選択を,自治体も含めて決断する日が近日中に来ると感じています.これらの地域の人々を結ぶ手段は高規格化された道路に役割を譲っており,仮に鉄道を残すのであれば,自治体が覚悟をもって出費するということが避けられないと思います.筆者としては,今後も芸備線・木次線には注目していこうと思いたいのですが,「奥出雲おろち号」の廃止とともに一気に注目度が下がる結果になるような気がします.

 

  会場内のその他のイベント

会場では「和牛サミット」として,庄原市・新見市・奥出雲町で共通して名産となっている和牛の食べ比べなど,多くの飲食物販ブースが出店し,ステージイベントも開催されていました.シンポジウムの参加者にはこれらの物販の補助がありました.

しかし,シンポジウムが白熱したため,筆者はこれらのブースに30分も滞在できずに,1つのみ利用してすぐに備後西城駅へ向かうことになりました.次がつかえています.

 

なお,内容の都合により,芸備線を利用してこの会場に拠点駅に到着したところから次の「【特集】芸備線・木次線」の記事を書きます.一定の目処がついたところで,芸備線の利用記に戻ろうと思います.

 

続く